涙が止まらないのは更年期うつのせい?情緒不安定を乗り越えたい【お悩み相談室】

今回は、更年期に差しかかり、突然涙があふれるようになったとお悩みの50代女性からのご相談です。一人暮らしの娘さまの心配と仕事のプレッシャーとで、夜も眠れないことがあるそうです。
薬には頼らず感情を落ち着かせる方法を探しているとのこと。同じような経験をされた方の体験談も交えながら、気持ちを整える対処法を臨床心理士がお答えします。
最近、ちょっとしたことで涙が出てしまい、自分でも驚いています。以前はこんなに感情が揺れることはなかったのに、更年期うつというものなのでしょうか?出産が遅かったので、子供もようやく巣立って子育てが落ち着いてきたと思った矢先、仕事では責任ある立場になり、プレッシャーも増えました。プライベートでは就職で都会に出た一人暮らしの娘のことが心配で、職場では部下をまとめることに必死です。そんな中、ふとした瞬間に涙があふれてしまい、感情がコントロールできない自分に戸惑っています。特に夜、夫が出張で一人だったりすると理由もなく悲しくなり、眠れなくなることもあります。ひどい時では、夫が寝ている横でおえつを出して泣いてしまいそうになります。現場の仕事で朝が早い夫を起こさないように、キッチンでハーブティーを飲んだりして何とか落ち着かせようとしていますが、冷静になろうとすればするほど涙がとまらなくなります。できるだけ薬には頼らず、気持ちを落ち着ける方法があれば知りたいです。同じような経験をされて乗り越えられた方がいらっしゃればお伺いできる範囲での体験談も聞いてみたいです。
(50代、女性、ハンドルネーム:モモ、職種:事務・オフィスワーク)
目次
最初に…更年期に涙もろくなるのは当然のこと
ちょっとしたことで涙が出てしまう。以前はそんなことなかったのに、気づけば感情が揺れ動き、自分でも驚くほど涙があふれる——。
この変化に戸惑いながらも、「冷静になろう」と頑張っていらっしゃること、本当に素晴らしいです。お仕事では責任ある立場になり、娘さんのことも心配しながら、家族のことも気にかけている。そんな日々を過ごしながら、ふとした瞬間に涙がこぼれるのは、決して不思議なことではありません。
まずは、なぜこのような変化が起きるのか、そして気持ちを落ち着ける方法について、一緒に考えていきましょう。
更年期うつとは?
「更年期うつ」とは、更年期のホルモンバランスの変化によって引き起こされる抑うつ症状のことです。
<更年期うつの症状例>
•気分の落ち込みや涙もろさ
•理由のない不安や孤独感
•イライラや焦燥感
•眠れない、寝つきが悪い
ただし、更年期のすべての人がうつ状態になるわけではなく、「今までよりも感情の波が大きくなる」「気持ちの切り替えが難しくなる」といった変化を感じることが多いのが特徴です。
また、通常のうつ病は気分の症状が中心なのに対して、更年期のうつ状態では身体の更年期症状も伴います。
あなたが感じている「ふとした瞬間に涙があふれる」「夜になると悲しくなる」といった症状も、更年期のホルモンの変化と関係しているかもしれません。
日常の習慣をほんの少しだけ変えてみましょう
「できるだけ薬に頼らずに落ち着きたい」とのこと、とても前向きで素晴らしいですね。
ここでは、日常の中で取り入れやすい方法をいくつかご紹介します。
① 深呼吸&ストレッチ
感情があふれそうになったとき、呼吸が浅くなりがちです。
•4秒かけて息を吸い、8秒かけてゆっくり吐く
•肩や首をゆっくり回して緊張をほぐす
呼吸を整えることで、リラックスする神経(副交感神経)が優位になり、落ち着きを取り戻しやすくなります。
② 朝の日光を浴びる
セロトニンの分泌を促すためには、朝に太陽の光を浴びることが有効です。
•朝の10〜15分、窓際でお茶を飲む
•朝の軽い散歩を取り入れる
これだけでも、気分が安定しやすくなります。
③ 「書き出す」習慣をつける
•日記やメモに、その日の感情を書き出す
•「私は今、こう感じている」と自分の気持ちを整理する
紙に書き出すことで、頭の中のモヤモヤが少しスッキリしやすくなります。
④ 「楽しいこと」を意識的に増やす
更年期の時期は、「何かを我慢する」「責任を果たす」ことが多くなりがちです。でも、意識的に「楽しいこと」を増やすことも大切です。
•好きな音楽を聴く
•好きな香りを楽しむ(アロマテラピー)
•趣味の時間を増やす
「気分を上げよう!」と無理に思うのではなく、「心地よい時間を少し増やしてみる」くらいの気持ちで大丈夫です。
同じ経験をした方の乗り越え方
更年期の涙もろさや不安感を経験した方の中には、次のようにして乗り越えた人もいます。
•「自分を責めるのをやめたら、気持ちが軽くなった」
-だるいくらいで仕事や家事をこれまでのようにこなせない自分を責めていたが、「更年期だからしょうがない」と受け止めることで、気持ちが軽くなった。
-子どもたちや夫に「もうみんな、身の回りのことが自分でできるよね。お母さんもみんなを頼ることにする!」と宣言したら、気が楽になった。
•「話すことで気持ちが楽になった」
-夫に「最近涙もろくて」と話してみたら、「そういう時はそっとしておいた方がいいのか?」と聞いてくれた。気遣おうとしてくれているのが伝わって、嬉しかった。
-友人に「更年期かな、ずっとだるくて(笑)」と笑い話にするつもりで話してみたら、「私も更年期の症状を感じることがある。しんどいよね。無理して笑って話そうとしなくていいよ」と言ってくれた。「私、無理してたんだな」と気付けたし、安心した。
•「リズムを整えたら落ち着いてきた」
-朝の日光を浴びる・軽い運動を続けたら、気分の浮き沈みが減った。
-毎日20分は必ず「ジブン時間」を作ることにした。今までの私は少し無理しながらがんばってきたんだな、と気付くことができた。
このように、「できる範囲でできること」を取り入れることで、少しずつ心が落ち着いていくこともあります。
最後に
「涙が止まらない」と感じると、自分でもコントロールできないことに焦りを感じてしまうかもしれません。でも、それはあなたが弱くなったからではなく、体の変化に適応しようとしている証です。
どうか、ご自身を責めず、「今はこういう時期なんだな」と優しく受け止めてあげてくださいね。
そして、気持ちが落ち着く方法を少しずつ試しながら、あなた自身を大切にする時間を増やしていけますように。
<参考文献・出典>厚生労働省
▶更年期とは:https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/menopause.html
▶女性のうつ:https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/depression.html
回答者:株式会社ファミワンに所属する【臨床心理士、がん・生殖医療専門心理士】
生理・PMS・更年期・妊娠・出産・女性特有のがんなど、女性の健康課題やライフイベントに関するご相談を専門にしています。セックスレスや性交痛、パートナーとのコミュニケーションなど、性のお悩みについてもカウンセリングを担当しています。女性特有の心と身体の問題、なかなか人には話せないプライベートなお困りがあれば、是非お気軽にご質問ください。
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