知的障害のある弟について、小学3年生の兄にどう説明したらいいでしょうか【お悩み相談室】

今回は、小学3年生の長男に、重度知的障害のある弟について「いつ」「どのように」伝えるべきか悩んでいる30代の女性からのご相談です。長男は友達に自分なりに説明しているものの、親として正式に伝えたことはないとのこと。早すぎるのでは…と迷いながらも、一度きちんと話すべきではと感じているそうです。
知的障害という難しい内容の伝え方について臨床心理士と一緒に考えてみましょう。
小学1年生の次男が重度知的障害です。小学3年生の長男に、次男の障害について「いつ」「どのように」説明していくか悩んでいます。次男は特別支援学校に通っているため、小学校に通う長男の友人は弟がいることを知りません。なので、自宅に友達が遊びに来た時に次男がいると、友達に不思議そうな顔をされることがあります。そんな時に長男は「この子俺の弟。1年生だけど喋れないから別の学校に行ってるんだ」と自ら友達に説明しています。実は私自身、長男に次男の障害について説明したことがありません。まだ理解が難しいから早いかな?と思えたり、なんと説明して良いか私自身悩んでいるからでもあります。ですが、長男が自分のわかる範囲で友達に説明する姿を見て、一度親として話をするべきなのでは?と思いました。説明すべきだと思いますか?もし説明するとしたら、「いつ」「どのように」次男の障害について長男に説明するのが良いでしょうか?
(30代、女性、ハンドルネーム:まる子。、職種:主婦)
目次
最初に
小学3年生のお兄ちゃんと、小学1年生で重度知的障害の弟さんがいらっしゃる中で、どのように弟さんのことを兄に伝えるか悩まれているのですね。
まず、これまでご家族として日々丁寧に過ごしてこられたこと、そしてお兄ちゃんが自分の言葉でお友達に弟さんのことを説明している姿に、心から敬意を表したいと思います。それだけ、お母さんやご家族が自然に兄弟として関わってこられた証です。
では、「いつ」「どのように」弟さんの障害についてお兄ちゃんに伝えていけばよいのか、一緒に考えていきましょう。
1. 伝える時期は「今」がちょうど良いかもしれません
お兄ちゃんは今、小学3年生。発達心理学的にも「相手の立場を少しずつ考えられるようになる時期」であり、家族の中で起きていることにも敏感になります。
また、自分の友達に対して「弟は喋れない」「別の学校に通っている」と説明していることからも、お兄ちゃん自身が弟さんの特徴を理解しようとしていることが伝わってきます。これは、まさに「タイミングが来ている」サインだと考えられます。
ですので、今こそ「親からの言葉で、分かる範囲の説明をすること」が大切だと感じます。
2. 説明するときのポイント
障害について伝えるときに大切なのは、「年齢に合った言葉で、安心できる雰囲気の中で話すこと」です。決して難しい専門用語や診断名にこだわる必要はありません。
以下のようなステップを意識してみてください。
①事実から伝える
「◯◯くん(弟)は、言葉でお話しするのが苦手なんだよね」「他の子よりもできるようになるのに時間がかかるんだ」など、弟さんの様子を素直に言葉にして伝えてあげてください。
②なぜ違いがあるのかを簡単に説明する
「脳の働きが少し違っていて、できることや得意なこと、苦手なことが人によって違うんだよ」というように、「みんな違ってあたりまえ」という価値観を育てるきっかけにもなります。
③不安があれば受け止める
「なんで?」「かわいそうなの?」といった反応があるかもしれません。その時は否定せず、「そう思ったんだね」「そう感じるよね」と共感しながら、ゆっくり話を続けてください。
④兄としてどうしてほしい、は押しつけずに
「お兄ちゃんだから◯◯してね」と言うのではなく、「一緒にいてくれるだけで弟は安心してるよ」「お兄ちゃんがいてくれると嬉しいな」など、存在を喜ぶ形で伝えると、無理のない関係が築きやすくなります。
3. 障害のあるきょうだいとの関係で大切なこと
きょうだい児(障害のある子を持つ兄弟姉妹)は、幼いながらも「家族の状況」や「親の大変さ」を敏感に感じ取っています。お兄ちゃんも、お母さんの表情や忙しさから多くのことを感じてきたかもしれません。
だからこそ、「お兄ちゃんにはお兄ちゃんの気持ちがあること」「弟のことだけでなく、あなたのことも大事に思っているよ」と伝える時間も大切です。
一緒に過ごす時間の中で、たとえば
「最近、弟が元気にしてるの見てどう思う?」
「学校で友達に聞かれたとき、不安になったことあった?」
など、少しずつ気持ちを聞いてみると、お兄ちゃん自身も安心して気持ちを話せるようになります。
最後に
お兄ちゃんが自分の言葉で弟さんのことを伝えている姿は、すでに家族としてのつながりと愛情をしっかり育んできた証拠です。
そして、お母さんが「いつ・どうやって話せばいいのか」と悩みながら、丁寧に向き合おうとしていることそのものが、何よりの支えになります。
焦らず、自然な会話の流れの中で少しずつ伝えていけば大丈夫です。
一度にすべてを伝えきる必要はありません。大切なのは、「何度でも話していい」「分からなくてもいい」という安心感を、お兄ちゃんに持ってもらうことです。
あなたの家族にとって、きっと心あたたまる対話になりますように。心から応援しています。
回答者:株式会社ファミワンに所属する【公認心理士・臨床心理士】
自治体の子育て相談窓口でお仕事をさせていただいています。キンダーカウンセラーやスクールカウンセラーとしての経験も長いです。子育て中は悩みが尽きないですよね。年齢や個性に応じた親子のコミュニケーションでお困りなら、ご相談ください。不登校、ひきこもり、家庭内暴力や虐待などのカウンセリングも得意としております。
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