妊娠を考えたそのとき、最初の一歩は相談から。「行ってみようかな」という気持ちにお応えします【医師 臼井 健人】

妊活・不妊
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患者さんの希望に寄り添いチームみんなでサポート納得のいく不妊治療を
綾瀬駅前 臼井クリニック 院長 臼井 健人

臼井 健人

綾瀬駅前 臼井クリニック 院長

産婦人科専門医、生殖医療専門医、臨床遺伝専門医、不育症認定医、超音波専門医

2015年に東邦大学医学部を卒業後、同大学産婦人科に入局。大学関連施設や沖縄県立八重山病院東京労災病院などで研鑽を積み、リプロダクションクリニック東京では不妊・不育症・遺伝診療に従事。2024年より「綾瀬駅前 臼井クリニック」院長に就任。

臼井医院(亀有本院)と連携し、赤ちゃんを待つすべての方を、全力でサポートさせていただきます。

不妊治療でお悩みの患者さんのお役に立ちたい

ー産婦人科医、そして不妊治療に携わることを選ばれたきっかけや背景を教えてください

産婦人科を目指したきっかけは、やはり父の影響が大きかったと思います。ただ、研修医として病棟を回っていた頃は、産婦人科に限らず「自分に合った診療科があればそこに進もう」と考えていました。

実際に産婦人科を経験してみると、お産があり、外科的な処置もあり、更年期や生理不順など内科的な診療も含まれていて、「何でもできる科だな」と感じました。また、お産の場面では医師や助産師、看護師が一斉に集まり、チームでお母さんと赤ちゃんを支える一体感のある診療がとても楽しく、魅力的に思えました。そうした経験から、自然と父と同じ産婦人科に進むことを決めました。

不妊治療に関しては、父の影響ももちろんありますが、治療でつらい思いをされている患者さんをサポートしたい、お役に立ちたいという想いから関わるようになりました。

また、不妊治療の分野は、我々の努力次第で少子化の改善にもつながる可能性があり、技術的にも新しい挑戦が次々と生まれる領域です。そういった点にも興味を持ち、この道に進むことを決めました。

生殖、不育症、遺伝診療の3本柱で安心・信頼できる治療を提供

ー先生は「不育症認定医」や「臨床遺伝専門医」の資格をお持ちだそうですね

不妊治療の現場では、どうしても一定の割合で流産を経験される方がいらっしゃいます。流産は患者さんにとって非常につらい経験ですので、今後の見通しやできることを専門的な知識をもとにしっかりお伝えしたいと考え、「不育症認定医※1」の資格を取得しました。

また、流産の原因について「年齢のせいでしょう」とだけ説明されて納得できず、当院を受診される方もいらっしゃいます。そうした方にも納得していただける説明ができるよう、知識を深めてきました。

流産を経験された方にとって、次の妊娠には大きな不安が伴うことと思います。そうした気持ちに寄り添いながら、医学的に正しい情報をお伝えすることで、少しでも不安を和らげ、心のケアにつなげていきたいと考えています。

さらに、現代の不妊治療では遺伝診療との関わりも深く、染色体や遺伝子に関する正しい知識が治療結果に大きく影響します。患者さんに正しい情報を提供し、より良いサポートを行うため、「臨床遺伝専門医※2」の資格も取得しました。

不妊・不育・遺伝の分野は密接に関係しており、専門的な視点を活かして安心できる医療を提供していきたいと考えています。

綾瀬駅前 臼井クリニック 臼井 健人 院長

ー親子でクリニック運営をされる上での連携の工夫についてお聞かせください

その後、臼井医院で診療を始めた際、大手クリニックでの治療法や設備と比べて「まだ臼井医院で、できることはたくさんあるな」と率直に感じたことを覚えています。そこで、少しずつ新しい治療法や設備を医院にも取り入れてきました。

幸いにも、父は「患者さんのためになる事なら、何でもやっていこう」と柔軟に対応してくれたため、現在では自分のスタイルで診療を行うことができています。

綾瀬駅前 臼井クリニック / 臼井医院(亀有本院)
(左)綾瀬駅前 臼井クリニック 受付ロビー / (右)臼井医院(亀有本院)外観

2院の連携で通いやすく、チーム医療で患者さんをサポート

ー「臼井医院(亀有/本院)」「綾瀬駅前 臼井クリニック」の両院で診療されていると伺いました。それぞれの特徴や、違いについて教えてください

亀有の本院は祖父の代から続くクリニックで、もともとは内科や小児科を中心に診療していましたが、父の代から不妊治療に特化したクリニックとして再スタートしました。

本院には、基本的な検査や治療だけでなく、培養室や手術室も備えており、採卵や胚移植など体外受精に関わる治療、子宮卵管造影検査・子宮鏡検査、卵管鏡下卵管形成術など、幅広い診療に対応しています。

2024年5月には、サテライト院として「綾瀬駅前 臼井クリニック(綾瀬分院)」を開院し、僕が院長を務めています。サテライト院では診療を中心に行い、患者さんのご都合に応じて本院と分院のどちらにも通っていただけるようにしています。僕自身は、週に2〜3回ほどは本院で診療や手術の対応、それ以外の曜日や夜間はサテライト院で診療にあたっています。

サテライト院を開設した理由は、不妊治療と仕事を両立されている患者さんの負担をできる限り軽くしたいと考えたからです。治療中は、通院のために半休を取ったり、職場で気を遣ったりする精神的なご負担もあると思います。平日の遅い時間帯や日曜診療にも対応することで、無理なく通える体制を整えました。

臼井医院ホームページ
臼井医院ホームページ(https://usui-clinic.com/

ー不妊治療におけるチーム医療の体制や、患者さんに対するケアやサポートについてお聞かせください

不妊治療には医師だけでなく、看護師、胚培養士、検査技師、メディカルアシスタントなど、さまざまな職種が関わっています。

通院の回数が多く、検査や処置に痛みが伴うこともあるため、患者さんの身体的・精神的な負担は大きくなりがちです。そこで我々は、「通院中の時間だけでもその負担を軽くできるようにしよう」とスタッフ間で日頃から意識を共有し、言葉がけひとつにも気を配りながら、寄り添った対応を心がけています。

また、通院のしづらさを解消するために、夜間や日曜日の診療も行っています。仕事でなかなか時間が取れない方にも、無理せず通っていただけるよう体制を整えました。

治療だけでなく、患者さんの生活や気持ちにも寄り添った医療をチーム全体で提供できるよう努めています。

臼井医院のスタッフたち
医師、看護師、胚培養士、検査技師、メディカルアシスタントなど、チーム医療でサポート

ー診療の際に心がけていることはありますか

不妊治療はどうしても専門的な内容が多くなることや、医師主導で「この日に来てください」といった進め方になりがちです。だからこそ、できる限り丁寧に説明を行い、患者さんが納得したうえで治療に臨めるよう心がけています。説明の最後には必ず「何かご質問はありますか?」とお聞きするようにしています。

とはいえ、診察室では緊張や医師への遠慮から「特にありません」とお答えになる方もいらっしゃいます。そうした場合には、診察後に看護師からあらためて「ご不明な点や気になることはありませんか?」とお声がけすることで、患者さんの不安をできるだけ取り除けるよう努めています。

また、診療方針についてはスタッフ間でしっかりと共有し、患者さんに不信感を与えないよう注意しています。治療方針に関わる内容は些細なことでもカルテに記録し、他の医師やスタッフも確認できるようにして、対応に一貫性を持たせています。

当院では、手術以外の診療に関しては、本院とサテライト院を自由に行き来していただける体制を整えています。そのため、どちらの院でも安心して診療を受けていただけるよう、情報共有を密に行い、スタッフ全体で連携しています。

人生設計から一緒に考えるオーダーメイドの治療を提供

ー患者さんからよく聞く悩みや、クリニックでの治療方針や進め方を教えてください

「できるだけ最短で妊娠に至ること」を大前提としながらも、患者さんの負担が少ない方法から治療を始めていきます。ただし、一律の方針ではなく、お一人おひとりと相談しながら、その方にとって納得のいく形で治療を進めるようにしています。

たとえば、「妊娠率が高い方法でも、身体や気持ちへの負担が大きいと少し不安」という方もいれば、「できるだけ早く妊娠したいので、多少の負担は気にしない」という方もいらっしゃいます。そうした気持ちを丁寧に伺いながら、最適な方法を一緒に考えていくことが大切だと考えています。

初診では、「将来、何人くらいお子さんが欲しいと考えているか」といったライフプランについてもお聞きすることがあります。そこから逆算して治療の進め方を一緒に考えることで、ご夫婦の間でもスピード感を共有しやすくなりますし、「子どもと過ごす未来の生活」を具体的に思い描くことで、前向きな気持ちで治療に臨んでいただけるように感じます。

最近ではプレコンセプションケア※3の考え方が広まり、「今すぐの妊娠は考えていないけれど、将来的に妊娠できるか知りたい」といったご相談も増えています。ブライダルチェックのような形で検査を希望される方もいらっしゃいます。

不妊治療に対する心理的ハードルも、以前に比べて下がってきていると感じます。早い方だと、結婚後2〜3か月ほどでご相談にいらっしゃることもありますし、「不妊治療は特別なもの」というより、身近な選択肢のひとつとして受け止められるようになってきている印象です。

綾瀬駅前 臼井クリニック カウンセリング室
綾瀬駅前 臼井クリニック 診察室

ー不妊治療に携わる中で、やりがいを感じる瞬間があれば教えてください

患者さんと一緒にあれこれ試行錯誤を重ね、最終的に妊娠・出産に至ったというご連絡をいただくと、やはり嬉しくなりますね。

不妊治療の現場では、「採卵したけれど卵が取れなかった」「うまく凍結できなかった」「妊娠していなかった」「流産してしまった」といった、つらい結果をお伝えしなければならない場面も多くあります。そういったときは、本当に難しさを感じます。

だからこそ、うまくいったときには患者さんと一緒に心から喜べることが、この仕事の大きなやりがいだと感じます。

また、「祖父の小児科に通っていました」とおっしゃる患者さんや、父が出産を担当したお子さんが大人になって来院されることもあり、長くこの地域で医療に関わってきたことを実感する瞬間もあります。こうしたつながりの中で診療できるのは、地域に根ざしたクリニックならではのやりがいですね。

ーこれまでの診療の中で、特に印象に残っている患者さんとのエピソードを教えてください

お2人で前向きに取り組んでおられるご夫婦は特に印象に残ります。

あるご夫婦は、治療がなかなか思うように進まない時も、ほぼ毎回ご夫婦一緒に診療に来てくださっていました。そして無事にご卒業される際、「これから2人で力を合わせて育児に取り組んでいきます」といったお手紙をいただき、本当に嬉しかったですね。

スムーズに妊娠される方のご卒業も、もちろん嬉しいのですが、時間をかけて二人三脚で歩んできたご夫婦の姿を見ると、「寄り添って診療してきて良かったな」と心から感じます。

もうひとつ印象的だったのは、胚移植の処置を僕に担当してほしいと希望してくださった患者さんのエピソードです。ちょうどその時期、海外の学会に参加していて、帰国時の飛行機の乗り継ぎに失敗してしまいました…。便の遅れもあり、かなりギリギリの帰国となりましたが、なんとか予定通り移植の手術を行い、妊娠・出産することができました。トラブルも含め、今でも忘れられないエピソードの一つです。

妊娠を考えたらまずは気軽にご相談を

ーこれから妊活を始めようと考えている方や、不妊治療に不安を抱えている方々に向けてメッセージをお願いします

妊娠について少しでも考え始めたタイミングで、ぜひ一度ご相談に来てください。

「どのタイミングで受診すればいいのか分からない」と感じている方は意外と多いのではないかと思います。必ずしも“不妊”という枠に当てはまる必要はなく、ブライダルチェックやプレコンセプションケアの一環としてでも、気軽にご相談いただけたらと思います。

人生設計も含めて、今後の治療方針を一緒に考えていくことが大切ですし、そのためには、早めの一歩がとても重要です。

当院では、初診のご予約が何か月も先になってしまうことはありません。「行ってみようかな」と思ったときが、患者さんにとって一番前向きに動けるタイミングだと思っていますので、すぐにご来院いただけるよう体制を整えています。

どんなに些細なことでも構いませんので、まずは一度お話を聞かせていただけたらと思っています。

妊娠について少しでも考え始めたタイミングで、ぜひ一度ご相談ください

ーリフレッシュ方法を教えてください

特別なストレス解消法があるわけではないのですが、やはり日々のリフレッシュになっているのは、家族と過ごす時間です。

不妊治療の現場では、朝早くから夜遅くまで診療が続く日も多く、家にいる時間は限られてしまいます。そのぶん、家にいるときはできるだけ家族との時間を大切にしています。

たとえ短い時間でも一緒に過ごすことで気持ちが切り替わりますし、忙しい毎日のなかでも自然とリフレッシュできているように感じます。家族の支えには本当に感謝しています。

(取材:2025年4月)


本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。

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