妊活への焦りと自己嫌悪、周りと比べてしまい落ち込みます【お悩み相談室】

妊活・不妊
記事をシェア

「どうして自分だけ…」妊活がうまくいかない中、周囲の妊娠や何気ない言葉に傷つき、自分を責めてしまう――そんなお悩みを抱える30代女性からのご相談です。

妊活中の心の保ち方、比べてしまう気持ちとの向き合い方、ストレスとのつきあい方について、臨床心理士がお答えします。

30代前半、結婚して1年。子どもが欲しくて妊活をしていますが、なかなか結果が出ず、毎月生理が来るたびに落ち込んでしまいます。周囲の「次はあなたね」などの何気ない言葉にも敏感に反応してしまい、自分の心の狭さに自己嫌悪を感じることもあります。友人たちは2人目の話をしているのに、私はまだ1人目すら…赤ちゃん連れの女性や家族を見ると溜息をついてしまうこともあります…どうしても比べてしまい、妬みや悲しみで苦しくなります。どんどん自分が醜く見えて仕方ありません。妊活中の心の保ち方や、少しでもストレスを和らげる方法があれば教えていただきたいです。

(30代、女性、ハンドルネーム:まっくろくろすけ、職種:営業)


最初に

妊活という旅の中で、あなたは毎月「希望→期待→落胆→自己嫌悪」のフルコースを味わい続けているのですね。
もう、「心が鍛えられる」なんて前向きな言葉じゃ片づけられないほど、繊細で過酷な日々をよくここまで歩いてこられましたね


周囲の無邪気な一言――「次はあなたね!」って、なぜあんなに刺さるんでしょうね。
言った方は1秒で忘れても、言われた方はずっと引きずる
しかも「そんなに気にするなんて、私、心が狭いのかな」と自分を責めてしまうところがまたつらいですよね。

そして、街中で見かける幸せそうな家族連れ。横目で見て、ため息が出て、「私、こんなに妬んでる…?」と驚く。そんな自分に引いてしまう。
だけど、それって「それだけ大切に思ってる証」なんですよね。誰かを傷つけたいわけじゃない。ただ、心がすり減ってるだけ


だから、どうかその涙や苛立ちに「私はダメだ」なんて烙印を押さないでください
それはあなたが何かに真剣に向き合っている証しであり、あなたという人のやさしさの裏返しなのだと思います

他人と比べてしまうあなたへ

妊活中、どうしても「他人との比較」が自分を追い詰めます
たとえば、「友達はもう2人目」「私はまだゼロ」…こういう構図の中に置かれると、まるで自分が“人生の遅刻者”みたいに感じてしまいます。
でも、本当はそんなタイムテーブル、誰も決めていないのです。人生のペースは人それぞれ。
レースじゃないと、わかってはいても、心がついていかないことってありますよね

そういうときは、「今日だけは比べない」と、期間を区切ってみるのも一つの方法です。
永遠に比べない、じゃなくていい。「今週だけ」「今周期だけ」、自分に優しく約束してみましょう。

また、気分が沈みがちなときは、「妊活以外の自分の幸せ」も意識的に見つけてみてください。
例えば、美味しいコーヒーを飲むとか、1日1つだけ好きな香りの入浴剤を選ぶとか。
「妊活している自分=全部」にならないように、“妊活中の私”という1ページの外にも、あなたの人生の物語があることを忘れないでいてください。

妊活中に心を守るための対処法

妊活は、心にも身体にもストレスがかかる長期戦です。実は、妊活中のストレスや不安、気分の落ち込みは非常によくある反応です。
国立成育医療研究センターの研究によれば、不妊治療初期の段階にもかかわらず、軽度以上の抑うつ症状ありの方の割合が54%と、半数を超えていました(※)。

つまり、あなたが感じている心のしんどさは“異常”でも“弱さ”でもなく、むしろとても「自然」なものです。


対処法としては、以下のような方法が役立ちます。

感情の波を書き出してみる(ジャーナリング)
・信頼できる人に「気持ちの整理のために」話してみる
妊活SNSやフォーラムを“見る専門”で活用する
・必要なら、心理カウンセリングを利用する
・毎月、「妊活以外の予定」を1つ入れておく


そして、もし妊活の過程に通院や医療的介入がある場合は、パートナーとの気持ちの共有もとても大切です。「2人で取り組んでいる」という実感が、孤独感を少しやわらげてくれます。

最後に

大丈夫。今、あなたが悩んでいるということは、「あなたは、ちゃんと真剣に人生を生きている」ということ。
妬んだり落ち込んだりしていいんです
そのままのあなたで、大丈夫です

<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています

Springer Nature
▶Depressive symptoms, anxiety, and quality of life of Japanese women at initiation of ART treatment:https://www.nature.com/articles/s41598-021-87057-6

<本記事の回答者>

戸田さやか

公認心理師/臨床心理士/生殖心理カウンセラー/がん・生殖医療専門心理士/ブリーフセラピストシニア

所属:株式会社ファミワン

「妊活や性の悩み、子育てや働き方のことまで、「誰に相談していいかわからない」テーマも歓迎しています。どんな内容でも大丈夫。安心してご相談ください。臨床心理学の確かな知識と技術を活かし、原因探しや悪者探しではなく、あなたにとってのゴールを発見するお手伝いをさせてください。」


専門家がこたえます!お悩み募集中です

「知ってハレばれ お悩み相談室」にお悩みをお寄せください。

毎月ピックアップさせていただいたお悩みとその回答を、「知ってハレばれ お悩み相談室」の記事で公開いたします。下記のフォームからお悩みをお寄せください(匿名でお寄せいただけます)。

記事をシェア
あなたのお悩みを募集中。

あわせて読みたい

トップ > 妊活・不妊 > 妊活への焦りと自己嫌悪、周りと比べてしまい落ち込みます【お悩み相談室】