「温度」と「睡眠」を計測・分析し、女性の不調を原因からサポート 体調ナビゲーションサービス『RizMo』【パナソニック株式会社 井上 貴美子 / 加藤 未帆 】

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自分のリズムを知って体と心に左右されない毎日を
パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 井上 貴美子

井上 貴美子

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社

ビューティ・パーソナルケア事業部

ビューティブランドマネジメント部 主幹

新卒で松下電器(現パナソニック)に入社。国内外のヘアケア商品の商品企画やマーケティング戦略の立案に10年間従事。2021年より、新規事業開発部門にて、「RizMo」のサービスやアプリケーションの企画を主導。2024年からは、国内マーケティングリーダーとして「RizMo」のマーケティング・プロモーションを推進。

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 加藤 未帆

加藤 未帆

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社

ビューティ・パーソナルケア事業部

ビジネスデザイン部 事業開発課 主務

新卒で松下電工(現パナソニック)に入社。2012年よりビューティ部門にて国内外のヘアケア商品の商品企画に従事。2021年より、新規事業開発部にて、『RizMo』事業検証分析を主導。現在、『RizMo』のサービス企画リーダーとして、サービス企画・運用を推進。

仮説を立ててひたすら検証、二人三脚で生み出した新サービス『RizMo(リズモ)』

――『RizMo(リズモ)』に携わる上での、お二人のそれぞれの役割を教えてください

井上さん:私は現在、『RizMo』のマーケティングを担当しています。プロジェクトには立ち上げ当初から関わっています。

事業化が正式に決定するまでの間は、サービスやアプリケーションの企画を担当し、「新しいサービスをどんな形にしていけばよいか?」といった方向性の検討や、アプリの設計など、ゼロからサービスを形にしていくプロセスに携わってきました。

事業化が決まった今、生み出したサービスを世の中に発信していく、広めていく役割を担っています。

加藤さん:私は現在、『RizMo』のアプリ企画を担当しています。『RizMo』をより良いサービスとするための調査・顧客分析と、アプリの企画・設計、中長期的なサービス開発プランニングなどを行っています。

私も、井上さんとほぼ同じタイミングでプロジェクトに加わり、立ち上げの初期から携わってきました。もともとは2人ともヘアケア領域の担当として、私自身は10年ほどその分野で企画をおこなっていました。

そうした中で、髪や肌など部位ごとのケアにとどまらず、女性の体全体や心のケアを含めた、より総合的な女性のヘルスケアが本質的に大切だと感じるようになり、その価値に取り組みたいと思ったことが、このプロジェクトに関わるきっかけでした。

ちょうどその頃、会社としても既存の美容機器による部位別の“アウターケア”から、生活習慣にアプローチして体の土台から整える“インナーケア”へと領域を広げるべく、新規事業部門が立ち上がったタイミングでした。その流れの中で、私自身も手を挙げて参画することになりました。

事業化に至るまでは、「お客さまにどのような価値を提供できるか」という視点から、直接ユーザーとなる顧客に話を聞いてニーズを深堀りし、仮説を立てて提供価値の検証・構想をするとともに、マネタイズを含めた事業性の検証をするという役割を担ってきました。

ユーザーの声やデータから見えてきた要素をもとに、井上さんがアプリ機能の企画や画面設計などを具体化していくという流れで、まさに二人三脚で進めてきたプロジェクトです。

――サービス化における「つくる→検証する→改善する」というサイクルを、このお二人でまわしてこられたのですね

加藤さん:そうですね。井上さんがつくる、そして検証データを私が集めて分析して井上さんに戻すという繰り返しを、本当に二人でパスをし合うように進めてきました。

「お客さまにはこういう思いがあるから、こういう機能や画面の見え方のほうがいいのでは」「こういう機能が求められているのでは」といった仮説を立てて、試作品をつくり、実証実験で検証する。そして、お客さまや生活者の方々からのフィードバックを受けて、「じゃあ、次はこうしてみよう」と一つひとつ反映していく。そのような価値探求と、それを実現するためのサービスの最適化を図る活動を、3年半かけて試行錯誤と改善を積み重ねながら行ってきました。

井上さん:加藤さんと私で、まさに「人」という字のようにお互いを支え合い、意見を出し合いながら、進めていきました。

もちろん私たち二人だけでなく、サービスシステムのリーダーやウェアラブルデバイスの企画担当など、チームのメンバーそれぞれが自分の強みや特性を活かしながら取り組んできました。みんなで力を合わせて育て上げた“我が子”のような、大切なサービスです。

「睡眠」と「月経周期」の両面からアプローチ。心や体の“癖”に気づくと“なんとなく不調”の理由が見えてくる

――あらためて、『RizMo』はどのようなサービスなのでしょうか

井上さん:『RizMo』は、月経リズムと連動する衣服内温度変化や日々の睡眠状態を手軽に把握できるウェアラブルデバイス「リズムモニター」と、独自のデータ分析アルゴリズムを採用したアプリケーションによる体調ナビゲーションサービスです。計測データに基づくスコアやアドバイスにより、自身の体調・不調の原因に気付きやすくなり、健康的な生活習慣をサポートします。

体調ナビゲーションサービス RizMo
体調ナビゲーションサービス「RizMo」

ウェアラブルデバイスを装着して就寝することで温度変化と睡眠状態を計測し、専用アプリケーション(※2025年8月時点ではiPhone専用)では、計測データの確認や、独自のデータ分析アルゴリズムによるその日や先々の体調予測と自身に合った体調サポートアドバイス等を確認することができます。

温度変化と睡眠状態のデータを元に体調予測や体調サポートアドバイスを提供

女性には、「月経周期によって変化するリズム」「年齢とともに変化するリズム」そして「毎日の生活に影響する睡眠のリズム」など、日々変化するさまざまなリズムがあります。それらのリズムの背後にあるのがホルモンバランスと睡眠です。

たとえば、高温期になると寝つきが悪くなり、睡眠不足で1日調子が出ず、調子がでなかった自分を責めて落ち込んでしまうといったように、「ホルモンバランス」と「睡眠」は複雑に絡み合い、実際の「体調」に影響しています。明確な原因はわからないけど、はっきりしない不調に悩まされているという女性は、意外と多くいらっしゃいます。

予期せぬ不調が日常生活へ影響、自分に合った対処法を求める多数の声
予期せぬ不調が日常生活へ影響、自分に合った対処法を求める多数の声

そこで、計測・記録・分析・アドバイスまでを一貫して行える「体調ナビゲーションサービス」として開発したのが、この『RizMo』です。

『RizMo』では、まずは「自分の状態を知る」ことを、科学的な根拠に基づいてサポートしたいと考えています。計測したデータをもとに、「今日の体調に一番影響しそうな要素は何か?」を抽出し、“体調の予報”としてお知らせします。

天気予報を見てその日の服装や予定を決めるように、自分の体調に合わせた過ごし方を選べるようになる、そんなサポートを目指しています。

――「体調の予報」ですか、なるほど。たしかにその日の調子が予測できれば、時間の使い方、働き方なども調整しやすくなりそうです

井上さん:まさにその通りです。今日の自分の体調に影響しているのは「睡眠」なのか「周期」なのかを朝一番でお知らせすることで、「今日は無理をしない日にしよう」など、その日の過ごし方のヒントにできます。

さらに、今後1ヶ月間の体調のリズム(体調変化)を確認することもできます。たとえば「この時期は胸の張りが出やすい」「気分が落ち込みやすい」など、傾向が分かれば、予定を詰め込みすぎないようにしたり、リラックスできる工夫を取り入れたりといった具体的な対処ができますよね。

不調に振り回される前に備えることで、生活の質も大きく変わってきます。

毎日の体調へのアドバイス
毎日の体調へのアドバイスと、不調の予測機能で日々の生活をサポート

――『RizMo』の特徴や強みを教えてください

加藤さん:私たちのサービスの最大の特徴は、「温度」と「睡眠」のデータを組み合わせているところです。温度と睡眠を同時に計測する家電は、国内初となります(2025年6月2日時点)。

私たちが特に注目したのは、「睡眠」と「月経周期」の関係です。高温期には寝つきが悪くなったり、月経中は経血の漏れなどが気になって不安や心配でよく眠れなかったりと、睡眠の質や量と月経周期は、実は非常に関連があります。

日本人女性の睡眠時間は、男性よりも短く、世界的に見ても短い傾向にあります。睡眠に悩む女性は多いのですが、それが月経周期と連動しているとは気づいていない方がほとんどです。

だからこそ、「睡眠」と「周期(ホルモンバランスの変動)」の両方を一緒に見ながらサポートすることで、体調全体を整えやすくなるというのが、大きな特徴だと思っています。

井上さん:私たちの調査では、月経に伴う症状に悩む女性の約9割が睡眠にも悩みを抱えているという結果が出ています。みなさん、そこがつながっているって意外と気づかれていないので、「一緒に見ていくと、もっと楽になりますよ」というメッセージを込めています。

さらに、データをただ“見える化”するだけではなく、自分の状態を理解し、そのうえで「どう対処すべきか」まで導いてくれるトータルパッケージである点が大きな強みです。

計測・分析/予測・アドバイス・サポートまでをトータルに提供
計測・分析/予測・アドバイス・サポート(※)までをトータルに提供
(※専門家への相談ができるサポートは2025年10月より搭載予定)

日々忙しくしていると、自分の体調を振り返る機会はなかなか持てませんが、『RizMo』を通して自分の心や体の“癖”を理解できるようになっていく。そうすることで、次の周期に向けた備えもできるようになります。

つまり、「よく分からなかった自分の体のことが、少しずつ見えるようになる」「自分自身への解像度が上がっていく」、そんな気づきと安心感を、客観的なデータとともに提供するサービスになっています。

前例のない挑戦。苦労の連続だった開発の裏側

――サービスをゼロから作り上げる中で、特に大変だったことや苦労したことがあればお聞かせください

井上さん:それまでに取り組んできたヘアケア・フェイスケア・ボディケアといった、いわゆる“アウターケア”領域での美容事業とは異なり、『RizMo』は“インナーケア”領域における新たな取り組みです。「女性特有」「即効性のある効果が目に見えにくい」という点で、社内の理解を得るのが一番大変でした。

『RizMo』は、女性特有の心身に関わる繊細なテーマを扱うサービスです。立ち上げ当初は、「これは一体何をするものなのか?」「どんな意味があるのか?」といった反応を受けることもあり、特に男性にとってはイメージしにくいテーマだったのだと感じています。

これまで携わってきた美容商品とは異なる難しさや、越えなければならない壁を多く感じる場面がありました。

加藤さん:そうですね。一番難しかったのは、私たちにも社内にも、明確な「判断軸」がなかったことです。

美容家電の場合は、お客さまの悩みが数値化されていて、それに対してどんな技術を使えば、どれだけ改善できるか、効果がどの程度上がるかといったことが、数値的にも技術的にも説明ができます。客観的なデータがある分、商品としての説得力も高かったんです。

『RizMo』の場合は、たとえばこのサービスを利用したからといって、生理やPMSが“治る”わけではありません。あくまでも、女性特有の周期の揺らぎとどう向き合い、自分らしく、穏やかに、快適に過ごせるかという「付き合い方」に寄り添うサービスです。

その価値がとても感覚的で、ふわっとしている分、価値の伝え方やその貢献度を判断してもらうことが難しいんですよね。

――たしかに数字で出せるものではなく、利用者一人ひとりの捉え方や感じ方も違いますよね。どのように乗り越えられたのでしょうか

加藤さん:明確な数字では表しにくいとしても、実際にモニターの方に使っていただくと、多くの方がその価値をしっかりと実感してくださいました。すぐに何かが劇的に変わるわけではないけれど、「自分のことがわかることで安心できた」「予測できるようになって、気持ちがとても楽になった」「心の支えになった」「ずっとずっと使っていきたい」といった声をたくさんいただきました。

そこで、そういった利用者の声を動画にまとめて、生の声を社内に届けていきました。マネジメント層を含め、実際の生活者の声を愚直に、丁寧に伝えること。それが、このプロジェクトを前に進めるために欠かせなかった大切なプロセスだったと思います。

利用者の声
利用者の声、生活者の声から提供価値やニーズの高さを届ける
(RizMo公式サイト「実感の声」より引用)

――計測したデータを、どのように見せるかにも苦労されたとか

加藤さん:はい、そうなんです。「データをどう見せるか」「どう活用してもらうか」という点はかなり試行錯誤しました。

『RizMo』では、温度や睡眠のほかにも、他のアプリデータと連携させることで生理周期や体重、活動量など様々なデータを記録できます。数値の変化やグラフから、データの活用に慣れている方はご自身で気づきを得て、「じゃあ次こうしてみよう」と行動に移すことができます。

ただし大半の方は、数値を見るだけでは「ふーん」で終わってしまうんですよね。 だからこそ、スコアやメッセージでわかりやすく伝えること、そしてそこから自然に行動につなげてもらえるように、なるべく取り組みやすいアドバイスを届けることを大切にしています。

スコアやメッセージのイメージ
「だる重い」「泥のように寝てた」などスコアやメッセージをわかりやすく表現

私たちもこうしたサービスを作るのは初めてで、UIやデザインの面でも試行錯誤の連続でした。生活の中で無理なく取り入れてもらい、飽きずに使い続けてもらえるアプリにするために、ユーザーの声を取り入れながら、今も改善を続けているところです。

すべての女性が、当たり前に自分の体と向き合える世界へ

――これから『RizMo』に出会う方へ、どのように活用してもらいたいと考えていますか

加藤さん:この『RizMo』を多くの女性に届け、自分の体調を整えるためのツールとして、長期的に寄り添えるものになればと思っています。

データを継続的に蓄積していくことには非常に大きな意味があると考えています。変化に気づくには「変わる前」のデータが必要です。たとえば、病院を受診する際も、日頃の記録があることで、より正確で適切な対応が可能になるはずです。

ただし、データに振り回されることのないよう、正しい知識とリテラシーを持って、自分のために役立てていくことが大切です。『RizMo』を通じて、そうした「知る力」と「整える力」の両方を、自然と身につけていただけたらうれしいです。

温度や睡眠、活動量などがストレスなく自動で記録されるこの仕組みが、日々をより生きやすくしてくれると信じています。そのデータは自分を守る「宝物」になるはずです。

さらに、ゆくゆくは、特に若い世代の方向けに特化したサービスも開発し、やはり若い世代特有の課題や悩みに対して初潮を迎えたころから寄り添えるようなサービスにしていきたいできすね。若いころから自分の体のことを知り、上手な付き合い方を身につけることで、人生の選択肢は大きく広がるはずです。

私自身も娘を持つ母として、これからの若い世代が後悔のない人生を歩めるよう、少しでも力になりたいという想いがあります。将来的には、女性が当たり前にこのデバイスをつけて、自分の体のリズムを理解して生活する。そんな世界になったらいいなと思っています。

井上さん:「自分の状態を知ることで、こんなに生活が楽になるんだ」という価値を、もっと多くの女性に知ってもらいたいと考えています。

これまでは、温度や周期といったデータは「記録・管理するもの」で、どちらかというと、後から振り返るために使われることが多かったように思います。

『RizMo』を使えば、体調や感情の変化を“事前に知る”ことができるので、「なんとなく調子が出ない…」という曖昧な状態に振り回されることなく、前もって備えたり、早めに対処したりすることができます。 「自分のリズムに寄り添って毎日を過ごすことで、日常が本当に楽になる」ということを、もっと多くの女性に知っていただきたいです。これからも、その魅力を伝える活動を続けていきたいと思っています。

企画、開発担当者の写真
「Panasonic Beauty OMOTESANDO(渋谷区神宮前)」のRizMoブースにて
(写真 左:井上さん、右:加藤さん)

「体を動かすこと」「子育て」「旅行」それぞれのリフレッシュ方法

――最後にお二人のリフレッシュ方法を教えてください

加藤さん:私のリフレッシュ方法は2つあります。

ひとつは、幼い頃から続けている「クラシックバレエ」です。妊娠・産後はしばらくお休みしていましたが、再開してからは今も変わらず続けています。体を動かすことでリフレッシュできて、私にとって欠かせない時間です。

もうひとつは「子育て」です。子どもと過ごす時間は、自分の心身のバランスが取れていて、一番自然体でいられる時間でもあります。忙しい日々の中でも、子どもの存在が私にとって一番の癒しになっています。

井上さん:私も2つあります。

ひとつは、日々の習慣として続けている「パーソナルトレーニング」です。ウエイトトレーニングを中心にがっつり体を動かしていて、それが一番のリフレッシュになっています。

もうひとつは「旅行」です。これまで行ったことのない場所に出かけるのが大好きで、特に長期の休みには、国内外問わず、海でも山でも、自然や文化に触れる旅を楽しんでいます。非日常の空間で新しい体験をすることが、私にとって最高のリフレッシュになっています。

(取材:2025年8月)


本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。

体調ナビゲーションサービスRizMo(リズモ)

女性の不調を原因からサポート

温度と睡眠を計測・分析し
体と心に左右されない毎日を

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