妊活に鍼灸は効果ある?体質改善の可能性を教えて【お悩み相談室】

今回は、妊活を始めて1年が経つものの結果が出ず、人工授精に進むか迷っている30代の女性からご相談をいただきました。鍼灸が妊活に本当に役立つのか、始めどきや注意点を知りたいとのこと。
妊活と鍼灸の関係や取り入れ方のポイントについて、鍼灸師がアドバイスします。
妊活を始めて1年ちょっとたちますが、なかなか授かれず、焦りと不安ばかりが大きくなっています。病院にも通っていますが、検査ではとくに異常はなく、次のステップとして人工授精の選択肢をいただいてますが、なかなか踏み切れずタイミング法を続けています。
最近、知人に「妊活に鍼(はり)がいいらしいよ」と聞いて、鍼灸のことを少し調べ始めました。妊活中に鍼灸を取り入れる人ってどれくらいいるのか、本当に効果があるのか、正直なところ半信半疑です。でも、少しでも体にいいことがあるなら試してみたい気持ちもあります。
鍼灸が妊活にどう作用するのか、始めるタイミングや注意点などがあれば知りたいです。
(30代、女性、ハンドルネーム:小春日和、職種:事務・オフィスワーク)
最初に
小春日和さん、こんにちは。かれこれ1年以上赤ちゃんを待ち続けていらっしゃるとのこと。
病院にも通い、検査では異常がないと言われても、なかなか結果が出ないと「どうしてだろう」と気持ちが揺らいでしまいますよね。
人工授精という選択肢が出てきてもすぐに踏み切れないお気持ち、よくわかります。
未来のことは自分で選びたいからこそ、じっくり考えたいものですよね。
そんな中で耳に入った「妊活に鍼灸がいいらしい」という情報。
正直、効果はどうなのか、どれくらいの人がやっているのか、半信半疑の気持ちを抱くのも無理ありません。
一方で、「少しでも体に良いことがあるなら試してみたい」という前向きな気持ちも、同じくらい確かにある。
このバランスの中で、迷いながらも一歩踏み出そうとしている姿勢、とても素敵だと思います。
鍼灸をかしこく取り入れるために
小春日和さんの場合、「検査ではとくに異常はない」のに妊娠しないということは、検査項目で捉えきれない部分がうまく働いていないということが考えられます。
具体的には、卵子が育ち精子と受精し、受精卵が着床し、子宮内で発育する、という一連のプロセスのどこかに原因があるのかもしれません。
この場合、体質を改善していくことが妊娠への近道の一つと考えるのは正しいと言えるでしょう。
鍼灸に関しては、「鍼灸が妊活にどんな働きをするのかを正しく知ること」と「自分に合った取り入れ方を見つけること」が大切です。
例えば、鍼灸は、自律神経のバランスを改善させることで、体をリラックスに導き、脳と卵巣の連携にポジティブな影響を与えると考えられています。
生理の周期(卵胞期、排卵期、高温期)に合わせて鍼灸を受けることで、卵胞の発育や排卵、着床など、子宮、卵巣にとって大事な局面をあと押ししてくれるでしょう。
また、鍼灸を試すなら「自分に合った鍼灸院を選ぶ」ことも重要です。
一人で悩んでいてもストレスがたまるばかりです。
そんな時に、専門的知識や技術に長けた信頼できる人たちと進めていけると安心です。
鍼灸は自分の体に向き合うツール
鍼灸が妊活にどう作用するのかについて、科学的にはまだ「必ず妊娠率を上げる」と断言できる段階ではありません。
ただし、複数の研究や臨床報告から、次のような効果が期待できるとされています(※)。
鍼灸の効果
- 自律神経の調整:交感神経と副交感神経のバランスを整え、リラックスしやすい状態に導く。
- 代謝の改善:細胞のエネルギー産生をサポートし、卵子や子宮環境の質を保ちやすくする。
- 栄養吸収の改善:胃腸の働きを整えることで、必要な栄養が体に届きやすくなる。
- 血流改善:骨盤内や子宮、卵巣への血流を促進し、着床環境を整える可能性がある。
- ホルモンバランスの調整:視床下部‐下垂体‐卵巣系の働きをサポートし、周期を安定させやすくする。
施術の目安
妊活中の方は、卵胞期・排卵前後に合わせて月2回以上が一般的です。
採卵や移植前後には、短期間集中的に行う場合もあります。
月2回ほどの施術で周期を整える方もいれば、妊活以外の不調(冷え、肩こり、睡眠トラブルなど)が多い場合は、まず不調改善を目的に週1回ペースから始める方もいます。
ただし、体に良いからといって通院自体がストレスになっては、かえって体が緊張して効果も半減してしまいます。
施術の頻度は、経済的な負担も含め、鍼灸師と相談しながら無理のない範囲で取り組みましょう。
良い鍼灸院の選び方
・妊活に関する不安や気持ちに寄り添ってくれるか
・体質改善や自宅でできるケアも教えてくれるか
・高額の回数券や商品の押し売りがないか
・断定的に「絶対妊娠します」と言い切らないか
これらは良い伴走者を見極めるポイントです。
最後に
赤ちゃんが欲しいのにできない。
このことであなたは深く傷つき前が見えないと思っているかもしれません。
鍼灸は“魔法の特効薬”ではありませんが、あなたの体を整え、気持ちを落ち着かせるための心強いパートナーになり得ます。
体を温め、自律神経を調整し、食事や睡眠を整えていけば、体はちゃんと応えてくれるはずです。
小春日和さんが、この先、焦らず、自分に合ったペースで、安心できる環境を選びながら進めていけますよう応援しています。
<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています
NCBI(米国国立生物工学情報センター)
▶体外受精を受ける女性の臨床妊娠率に対する鍼治療の効果:系統的レビューとメタアナリシス:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23814102/
公益社団法人 日本鍼灸師会
▶鍼灸を知る:https://www.harikyu.or.jp
医歯薬出版
▶『不妊治療と鍼灸』 :(著者)中村辰三
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