男性更年期による不眠・イライラに加えて薄毛の進行も気になる【お悩み相談室】

更年期
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今回は、イライラや入眠困難などの更年期症状と薄毛に悩む50代男性からのご相談です。男性ホルモン投与での治療は薄毛を進行させるのか気になっているようです。

男性更年期に対する正しい知識、そして薄毛を進行させないための方法について保健師がお答えします。

30代から薄毛が気になってましたが、最近はさらに薄毛が進行してきて悩んでます。
更年期症状なのかイライラするし、なかなか寝付けなくてストレスが溜まってます。
そんな中、薄毛の進行でさらにストレスがかかっている感じです。
若い女性社員からの目も気になるし、同僚から薄毛をネタにされるのも、以前はおどけてかわせていたのに最近ではキレてしまいそうになるのを必死に抑えてます
仕事に支障が出るので更年期症状の治療を考えているんですが、ネットで調べると男性ホルモンを打つと…より禿げないか心配なんですが…。更年期症状も薄毛も何とかすることはできますか?

(50代、男性、ハンドルネーム:鳴鹿、職種:IT・エンジニア)


最初に

鳴鹿さん、ご相談ありがとうございます。

30代からの薄毛が最近さらに進行してきて、更年期症状のようなイライラや寝付きにくさでストレスがかかっていると感じておられるのですね。そのため、今まではかわせていた同僚の言葉も耐えられなくなりそうで、キレそうになるのを必死に抑えながらも、仕事への影響も考え、更年期症状の治療を考えておられるのですね。

今回は男性の更年期症状の治療についてお伝えし、鳴鹿さんの治療に対する不安が和らげばと思います。

テストステロンの働きとは?

男性の更年期障害は、男性ホルモンであるテストステロンの分泌が減少することによって起こり、心身に大きな影響を与えます。
このテストステロンは、骨・筋肉の発達を促し、髭や胸毛などの毛を濃くする働きがあります。
また身体的な男性らしさだけでなく、やる気を左右する脳内物質のドーパミンを産生する特徴があるため、意欲にも影響します
そのため、このテストステロンの分泌が減少すると、疲労感・不眠などの体調不良の他、抑うつ気分や焦燥感などの精神症状が出てくる場合があります。


テストステロンは体毛を濃くする働きがある、と言いましたが、前頭部や頭頂部など男性ホルモン感受性毛包には逆に軟毛化現象を引き起こし、一般的に男性型脱毛症は、鳴鹿さんが男性ホルモンの注射を不安に思われているように、このテストステロンの働きによって進行すると言われています。

そのため、男性更年期によってテストステロンの分泌が減少すれば、薄毛は改善するのではないか、と考えられそうですが、実際には男性更年期障害によるテストステロンの減少はゆるやかなため、改善することは期待できないようです。

薄毛の要因は遺伝やストレスの影響かも

男性型脱毛症については、テストステロンの影響だけでなく、遺伝的素因もあることがわかってきました。そのため、家系の中で薄毛の方がいれば、同様の症状をもつ可能性が比較的高くなるということです。

また、毛髪は栄養バランスやストレスも影響しますので、規則正しい生活やバランスの良い食生活かどうかも見直していく必要があります。

このように同じ男性型脱毛症といっても様々な原因が考えられ、原因によって治療を進めていく必要があります。

更年期症状と薄毛治療は両立できる

日本皮膚科学会が男性型脱毛症診療ガイドラインを作成しており、治療法の推奨度などを提示しています。
このガイドラインの中で男性型脱毛症に対する治療として「強く推奨」のAと位置付けられた内服薬のフィナステリドは、テストステロンをより強力なジヒドロテストステロンに変換する還元酵素に対する阻害剤です。
テストステロンが直接毛髪に影響を与えるわけではなく、体内の酵素によってジヒドロテストステロンに変換されなければ毛髪に影響を与えることはありません。

また、テストステロン自体に働きかけるわけではないため、更年期症状に対して男性ホルモンの補充を行ったとしても、フィナステリドの内服によって毛髪へ影響するという心配はなく、更年期症状に対する治療と、薄毛に対する治療の両立は現在では可能となりました。

無理せず泌尿器科を受診してみましょう

もちろん、男性更年期症状に対する治療は、男性ホルモンの補充以外にも漢方薬や症状に応じたお薬による治療がありますので、ご自身の悩まれている症状と治療について気になっていることを伝えて、鳴鹿さんのお悩みや状況に応じた治療を検討してもらえると思います。

泌尿器科を受診することで、更年期症状と頭髪について、今よりもストレスが軽減され、体調が整うことを願っています。

<参考文献・出典>

公益社団法人 日本皮膚科学会
▶男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版:https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

一般社団法人 日本内分泌学会
▶男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群):https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=71

<本記事の回答者>

谷村弥生

助産師/保健師/公認心理師

所属:株式会社ファミワン

産婦人科での様々な年齢層の方と関わっている勤務経験から、月経やホルモンバランスの乱れにより起こる症状や、病院受診を迷う症状、人に相談しにくいお悩みについて、あなたと一緒に考えていきます。もちろん心理的なお悩みも遠慮なくご相談ください。皆さんのフェムケアを応援したいと思っています。


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