ボトックス後に妊娠が発覚!赤ちゃんへのリスクと今後の対応を知りたい【お悩み相談室】
今回は「妊娠が分かる前にボトックス注射を受けてしまい、不安でたまらない」という20代女性からのご相談です。胎児への影響はあるのか、今後どう過ごせばいいのか、不安で仕方ないとのこと。
妊娠初期にボトックスを受けた場合の考え方と、受診時のポイントについて薬剤師が解説します。
エラ張りが気になっていて、ここ数年は数か月おきにボトックス注射を受けています。先週もいつも通り注射したのですが、数日後からなんだか食欲がなく、念のため妊娠検査薬でセルフチェックしてみたら…まさかの妊娠。
正直、子どもが欲しいという意識のもとの性行為ではなかったので、妊活中の意識はありませんでした。
妊活・妊娠中はボトックスNGということは説明を聞いて知っていたので今すごく不安です。
夫とは授かった命なので育てようと話していますが、ボトックス注射の影響が赤ちゃんに表れないか気が気じゃありません。
ボトックス注射を受けて妊娠した方でも無事に元気な赤ちゃんを産めますか?これから気を付けることはありますか?
あと、産婦人科を受診しようと思いますが、ボトックスを受けたことをちゃんと説明した方がいいですよね?
(20代、女性、ハンドルネーム:えらこ、職種:事務・オフィスワーク)
目次
最初に
エラ張りが気になっていて、ここ数年は数か月おきにボトックス注射を受けてこられたのですね。
先週もいつも通り施術を受けた後、体調の変化から妊娠検査薬を試してみたら、思いがけず妊娠が分かったとのこと。
妊娠や妊活中はボトックスが推奨されないと耳にしていたため、赤ちゃんへの影響を心配されているお気持ちがよく伝わってきました。
今回の妊娠は「子どもが欲しい」と強く意識しての性行為ではなかったけれど、ご夫婦で「授かった命だから育てていこう」と話し合われたのですね。
その温かい気持ちの一方で、「あの時ボトックスをしてしまったけれど大丈夫だろうか」と自分を責めたり、不安でいっぱいになってしまうのも無理はありません。
まずは、不安な中で相談してくださったこと自体が、とても大切な一歩だと思います。
情報に振り回されないために。正確に知る第一歩
いまのように心配が膨らむと、ついインターネットでたくさん調べすぎてかえって混乱してしまうこともあるかと思います。
こういう時は「ここまでは分かっている」「ここから先はまだ分からない」と情報を整理してみると、気持ちを落ち着ける助けになるかもしれません。
例えば、
同じように妊娠前後にボトックスを受けた方の経過を知ることや、薬剤がどう作用して胎児へ届きにくいとされているのかを理解できると、安心につながると思います。
また「これからどう過ごすか」を具体的に決めていけると良いですね。
産婦人科を受診するときは必ず「妊娠に気づかずボトックスを受けた」と正直に伝えること。
そして施術を受けたクリニックに問い合わせて、注射部位や薬剤名、投与量などを記録としてもらい、主治医に共有できるようにしておくと安心です。
これからは妊娠中の追加施術は控えて、健診を大切にしていきましょう。
ボトックスの作用と赤ちゃんへの影響
医学的に整理すると、ボトックス(ボツリヌス毒素A型)は局所の筋肉に働きかけ、神経からの刺激をブロックすることで作用します。
分子量が非常に大きいため、血流に広がったり胎盤を通過して赤ちゃんに届いたりする可能性は低いと考えられています。
そのため「注射したから必ず胎児に影響がある」というものではありません。
実際に海外を含めたこれまでの報告でも、ボトックス注射を妊娠前後に受けた女性から生まれた赤ちゃんに先天的な異常が増えたというデータはなく、健康に生まれているケースが多いとされています。
ただし研究数自体はまだ限られているため、安全性が完全に証明されているわけではありません。
そのため、妊娠が分かった時点で追加施術を控えることが望ましいとされています。
妊娠成立後のボトックスの影響が残る可能性は低い
妊娠初期の赤ちゃんへの薬の影響は「All or None(全か無か)の法則」と呼ばれており、受精後からおよそ妊娠3週までの時期に薬剤の影響を受けると受精卵は着床できず流産になるか、逆に修復されて影響が残らないかのいずれかになるとされています。
今回のように妊娠が成立している状況では、ボトックスの影響がそのまま奇形や発育不良として残る可能性は低いと理解されています。
メーカー側は予防的な立場から、施術後しばらく妊娠を控えるよう案内していますが、
これは「危険だから妊娠できない」という意味ではなく「まだ十分なデータが揃っていないため慎重に」という姿勢です。
すでに妊娠が成立している場合に、特別にリスクが高いとされているわけではありません。
医師へ正確に伝えることが最大の安心材料
今後できることとしては、まずは産婦人科の主治医に正確に経緯を伝え、定期的に健診を受けながら妊娠経過を見守ることが大切です。
不安が強いときには追加でエコーをお願いすることもできます。
必要であればボトックスの施術を受けたクリニックへ連絡をして、どの部位にどういった薬剤を使用したかという情報も得ておくとより安心ですね。
最後に
何より、今回授かった命を大切に育てていこうというお二人のお気持ちがとても尊く、母子の健康に良い影響をもたらしてくれます。
罪悪感や過度な心配はストレスになりやすいため、どうか一人で抱え込まず、周囲のサポートを得ながら過ごしていただければと思います。
<参考文献・出典>
グラクソ・スミスクライン株式会社
▶ボトックス注用(添付文書):https://gskpro.com/content/dam/global/hcpportal/ja_JP/products-info/botox/botox.pdf
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