更年期は怖くない!がんばっている自分を振り返るきっかけに【医師 二宮典子】
女性泌尿器科医として、女性の秘めた悩みに寄り添い続けたい
―まずは、先生が医師を目指されたきっかけ、そして女性泌尿器科という診療科を選ばれた経緯を教えてください。
今、クリニックの診療内容としては婦人科、女性泌尿器科、女性性機能、美容医療などを取り扱っていますが、私自身は泌尿器科の専門医です。大学卒業後、研修医を経て選んだ専門科が泌尿器科でした。
当時は、泌尿器科医自体が男性ばかりである上に、女性を診療する環境も整っていませんでした。女性特有の悩みを解決できるような治療法や検査方法を教えてくれる先輩もいませんでしたし、そうした情報もほとんどありませんでしたね。
患者さんから直接悩みを相談されるようになり、もっと深く女性の泌尿器科医療について学びたいと考えるようになり、開業を意識したのが医師になって10年目のタイミングでした。
開業を決意したものの、当時はまだ知識も経験も十分ではありませんでした。そこで、横浜で女性泌尿器科クリニックを開業されていた関口先生( https://www.luna-clinic.jp/ )のもとに見学に行き、その後、縁あって関口先生の下で大阪に開院することになったんです。
女性の泌尿器科として経験の浅い中、右も左もわからない状態からのスタートでしたが、「絶対に患者さんを治してやる!」という強い気持ちを持って診療に臨んでいましたね。関口先生には、日本の医療の現状や、海外で行われている先進的な治療法など、多くのことを教えていただきました。
そして、更年期に関しても、ホットフラッシュなどの症状だけに注目するのではなく、泌尿器科や性機能の面にも目を向けることの重要性を学びました。
その後独立し、現在は3つのクリニックで、泌尿器科医2名、婦人科医2名という体制で診療にあたっています。それぞれの専門性を生かしながらクリニック間でも情報交換を頻繁に行い、チーム全体で医療の質を高めるよう努めています。
―クリニックを開業されてみて、改めて女性泌尿器科の必要性を感じていらっしゃいますか
困っている方、悩んでいる方はいっぱいいらっしゃいます。本当に多くの患者さんが、悩みを抱えていることを実感しています。
講演会などで、治りにくい症状についてお話しすると、複数の医療機関を受診しても改善しなかった患者さんが、藁にもすがる思いで来院されるケースも多いですね。
患者さんを笑顔にする診療を
―先生のクリニックのホームページには「行くのが楽しみ」「いつも笑顔になれる」「困ったときは思い出す」ようなクリニックを、という言葉が書かれています。診療の中で、どのようなことを大切にされていますか
一言で言うと「患者さんを笑わせて帰す」ということですね(笑)。
婦人科や泌尿器科を受診する患者さんは、みなさん不安や緊張を抱えてガッチガチです。まずはその緊張を解きほぐし、少しでもリラックスした気持ちで診察を受けてもらえるように心がけています。
問診の際には、深刻になりすぎて患者さんがネガティブな気持ちにならないよう「大丈夫!よく考えてみて大したことないから」と、肩の力を抜くような言葉をかけることもあります。
内診台で足を開くときって力が入ってしまいますよね。私はいつも「この梅干しみたいなお尻の穴をふわーっと開くようにしてください」とか、「大きいウンコを気持ちよく出す感じです!」なんて言うんです(笑)。そうすると、大抵の人は笑ってしまって自然と力が抜けるんですよ。
患者さんを安心させ、信頼関係を築くためには、言葉によるコミュニケーションだけでなく、実際に身体に触れるときの接し方や、視線、表情、声のトーンなど、あらゆることに気を配ることが大切です。
この人に任せてもいいと思ってもらってこそ、治るイメージが伝わって治療もスムーズに進みます。
もちろん、ふざけてばかりいるわけではありませんよ(笑)。 患者さんの訴えに真剣に耳を傾け、丁寧に診察することは当然のこと。その上で、少しでもリラックスして診察を受けてもらえるよう、あの手この手で工夫を凝らしているんです。言葉遣いはフランクに、身体に触れる時は極めて丁寧に、このテクニックがすごく大事です。
更年期はがんばっている自分を振り返るきっかけに
―更年期に悩む女性のよくあるお悩みを教えてください
更年期の患者さんによくある訴えとして、「なんだか自分が自分じゃないみたい」という言葉があります。
40代後半から50代になると、20〜30代の頃のように体力も気力も続かなくなり、今まで通りのペースで仕事や家事をこなすのが難しくなってきます。一言でいうと「疲れやすい。でも、その原因がよくわからない。」という状態です。そうした変化に戸惑い、心身に不調を感じ始める方が多いんですね。
更年期障害の症状は人それぞれですが、治療としては、まずは女性ホルモン補充療法を行うケースが多いです。
ただ、治療と並行して、患者さん自身にもライフスタイルを見直していただくことが大切だと伝えています。更年期は、これまでがんばり続けてきた自分自身を労り、これからの人生をどう過ごしたいのか、どんな自分でありたいのかを考える良い機会です。
―更年期に対してネガティブなイメージを持つ方がまだまだ多いように感じます
日本では生理が終わることを「女性としての役割が終わった」と捉え、マイナスに考えてしまう方も少なくありません。
一方で、海外では、更年期は「人生の第二章の始まり」「Change of Life」といったポジティブな捉え方が一般的です。生理に伴う不快感や悩みから解放され、より自由に、自分らしく生きていけるチャンスと捉えているんですね。
文化圏の違いも大きいのかなとは思いますが、更年期でしんどい思いをしているのであれば、今ではホルモン療法などで症状を軽減する方法もあるので、もっとポジティブなイメージに変わっていくといいですね。
―最後に、更年期で悩んでいる女性にメッセージをお願いします!
更年期は、女性なら誰しもが経験する自然な体の変化です。
しんどさを隠したり、我慢したり自分を責めてしまっている方も多いと思います。つらい症状がある場合は我慢せず、まずは婦人科に相談してみてください。治療法はさまざまなので、医師と相談しながら自分に合った方法を見つけていきましょう。
そして、更年期は自分自身をいたわり、これからの人生をより豊かにするための準備期間だと捉えましょう。
しんどい思いをしているのは、がんばりすぎてるのが原因です。サボれるものはうまくサボって、自分の体と心をしっかりリフレッシュさせてほしいと思います。
今まで頑張ってきた自分を褒めてあげ、ゆっくりと休養を取りながら、新しいことに挑戦したり、趣味を楽しんだりする時間を大切にしてくださいね。
情報のインプットで思考を回してリフレッシュ
―二宮先生のモヤモヤした時のリフレッシュ方法を教えてください!
モヤモヤすること自体少ないのですが…(笑)
私のリフレッシュ方法は色々あって、毎日必ずやっているのは、湯船に汗だくになるまで浸かることです。スマホを持ち込んで英語や歴史、ビジネス系の勉強をしています。医療系の勉強じゃないものを聞くのがポイントです。汗をかきながら「世の中には賢い人がいっぱいいるんだな、ありがとう」と感謝しています。
知らなかったこと、専門分野外のことをインプットして、普段と違うことを考えることがリフレッシュになっています。悩んでいる時って思考が止まっている時なので、全然違うところに自分を持っていって思考を回すイメージです。
あとは、体をほぐすのは「ミーサマット」というトゲトゲのマットがおすすめです。海外出張などで体がガチガチの時も、これで寝るとすごく体がほぐれるんです。
リフレッシュ方法をたくさん持っていること、それ自体リフレッシュになっているのかもしれませんね。