更年期世代の不調とは?原あいみさんが見つけた、オトナ女性の不調とうまく付き合うためのヒント【体験談インタビュー】
目次
デリケートなテーマも漫画で表現、今のスタイルを確立させた会社員時代
――原さんがイラストや漫画を描き始めるきっかけを教えてください
子どもの頃から絵を描くのが大好きでした。イラストレーターになりたくてデザイン会社に就職し、半分イラストレーター、半分はアートディレクターとして働いていました。アートディレクターとしては、他のイラストレーターやデザイナー、カメラマンと一緒に旗振り役を務め、自分の絵も使いながら、お客さんと直接やり取りする日々でした。
漫画を描き始めたのは、ある企業さんの連載でリラクゼーションスポットを訪れ、体験談を漫画にする仕事がきっかけです。その後、別の企業さんの店頭冊子で漫画を使ったプロモーションが採用され、企業案件が増えていきました。
多くの企業さんからオファーをいただく中で、漫画で難しいことを分かりやすく伝えるというスタイルが確立し、妊活や妊娠といったデリケートなテーマを漫画で表現することが得意になっていきました。
体験談をインタビューしてつくりあげた『私の生理のしまい方』
――様々な更年期世代の方の不調エピソードを描かれている『私の生理のしまい方』を描くことになった経緯を教えてください
SNSで育児絵日記の発信をしていたことがきっかけで、編集部の方が声をかけてくださいました。先ほどもお伝えした通り、デリケートなテーマの漫画を、重くなりすぎずやわらかい表現で描いていたのを見て、「こういう方なら」と思ってくださったみたいです。
当時ちょうど私が40代で、、編集部の方とも同世代であったこともあり、これからの女性の身体のことを描けたらいいなとお話しし、「大人女性の不調」をテーマに取り上げることになりました。
――作品では、さまざまな女性の体験が描かれていますよね。取材はどのように進められたのでしょうか
9人の方にお話を伺い、それぞれの体験を漫画に描かせていただきました。編集担当の方と一緒に、じっくりお話を聞きながら進めていく中で、これまでの広報誌やPR冊子の仕事で培った「人の声を形にする」経験がとても役立ったと感じています。
ただ、当時の私はまだ更年期の入り口に立ったばかりで、聞くことも描くことも、正直すごく難しくて。最初は「つらい」お話が多く、作品のトーンも重くなりがちでした。
そんな中、監修の先生から「つらさは絶対に抜けるし、ハッピーが待ってるから」と明るく励ましていただいたことや、更年期を過ぎた方の声に触れたことで、少しずつ視点が変わっていきました。
このあたりの制作の背景は、書籍の冒頭にも描いていますので、ぜひそちらでじっくり読んでいただけたら嬉しいです。


画像出典:「私の生理のしまい方」(著者:原 あいみ 出版社:KADOKAWA)
――作品の中で原さんが印象に残っているエピソードはありますか
どの方も本当に素敵だったんですが、特に心に残っているのは「全く不調がなかった」という方のお話です。更年期世代のエピソードって、どうしても「つらい体験」が中心になりがちですが、何もなかったという人もいる。それもまた事実なんですよね。
その方の、「録画してあるドラマを見ること」「電車で小説の続きを読むこと」など、日々の何でもないことを大切にされていて、今ある日常を幸せと感じて生きている姿もとても印象的でした。
こういう方の存在が、読む人にとって「私も大丈夫かも」と思える希望になるんじゃないかなって。


画像出典:「私の生理のしまい方」(著者:原 あいみ 出版社:KADOKAWA)
――作品全体を通して、すごく多様な生き方が描かれていると感じました
そうですね。結婚して子どもがいる方もいれば、子どもがいない方、結婚していない方などさまざまいる。中高年で性経験のない方のお話も描かせていただきました。いろんな人生があるし、どれも尊い。だからこそ、どの方の物語も「やさしく、丁寧に描きたい」と思っていました。
不調を感じる前から始められること
――原さんご自身が年齢を重ねていく上で、体調の変化や気づきはありましたか
そうですね…ありがたいことに、まだそんなに大きな不調はなくて。
『私の生理のしまい方』を作っている時に監修の先生から「かかりつけの婦人科を見つけておくといいよ」って言われました。それがすごく心に残っていたので「本の制作が終わったら絶対見つけるぞ」って決めて、幸いなことに近所で相性のいい先生に出会うことができました。
そのとき、血液検査をしてもらったのですが、結果も特に問題なく、「更年期はまだ先かもね」って言われました。
その後も、ちょっとした不調や心身の変化、不安なことがあったら、かかりつけの婦人科を受診するようにしています。すぐに相談できる婦人科があって、数値で確認できて、話を聞いてくれる人がいるっていうだけで、すごく安心できています。それがまずひとつの体験ですね。
あとは、生理は今3〜4ヶ月ほど来ていません。「ああ、とうとう来なくなったんだな」と思っていて、「ないなら、なくていいやん」と感じています。めんどくさいこともないし、ちょっと快適かもって(笑)。
妊活していた頃は、卵子の残りに一喜一憂して、生理がすごく大きな存在でした。今は「もうそういう年齢なんだな」って、自然と心の準備ができている感じです。
『私の生理のしまい方』を描いたことで、私自身の気持ちの整理につながったと思っています。描いているうちに「怖い」「悲しい」「寂しい」という気持ちがなくなってきて、むしろ「もう男女の性別を超えて、美しい人間を目指そう」っていう気持ちになってきています。
この生命体はおもしろい!で始めた育児絵日記の発信
――先ほど少しお話にありましたが、そもそもSNSで育児絵日記の発信を始められたのはなぜでしょう
不妊治療を経て授かった娘との生活があまりにおもしろくて、写真では残せない日々のささいなことを記録したくなったからです。「育児=大変」という情報があふれている中、私はこの“生命体(娘)”の言葉や行動のすべてがめちゃくちゃおもしろく感じたんです。
それと、育休中は絵をずっと描いていなかったので、手がすごく鈍っているなと思い、復職するためのリハビリとして、Instagramに毎日投稿するようになりました。
――原さんの作品は読むと温かい気持ちになります。特に反響があった作品はありますか
いくつかあるのですが、コロナ禍のオンライン卒園式を描いた作品は反響がありました。
先生方は機械操作に慣れておらず緊張もされていて、式が始まったもののミュートのまま進行してしまいました。メッセージを送っても気づかれず、最終的に近くの保護者が保育園まで走って伝え、仕切り直しになったというエピソードです。
これを絵日記にしたところ、保育園の関係者とも盛り上がり、時代性のある内容としてネット記事にも取り上げられ話題になりました。


原あいみさんのInstagram(@aimihara)より引用
不調に向けて今からできる「かかりつけ」と「家族とのコミュニケーション」
――これから更年期を迎える方に向けて、原さんから伝えたいことがあれば、ぜひお願いします
そうですね…さっきも少し話しましたけど、「かかりつけ医を見つけておく」のは、本当におすすめです。しんどくないと、つい後回しにしちゃうんですけど、いざ不調が来た時に検索して予約するのって、もうそれがしんどいんですよ。
あと、「こういう時期にこういうことが起こるかも」って、家族に知ってもらうだけでも、すごく助けになると思います。
男性にも不調の時期ってあるじゃないですか。だから「お互い様だよね」っていう気持ちを持つのがすごく大事だと思っています。私も昔は夫にイライラしてたんですけど、「残った家事に対しても、まあ、明日やればいいか」って思えるようになりました。
娘にも「今日ママしんどいから、〇〇お願いできる?」って、具体的に頼むようにしています。「察してよ」じゃなくて、ちゃんと言葉にする。そうすると、家族も動きやすいし、気持ちも楽になります。
「ありがとう」って感謝の言葉を伝えることもすごく大切だと思います。
心身の変化や感情の揺らぎにもとことん浸ってリフレッシュに!
――日々の中で、気持ちを整えたり、リフレッシュするためにしていることはありますか
私、最近すごく目が疲れていて……老眼も進んで、スマホ見るのが本当にしんどいんです。娘の予防接種の予約とかも、もう「スマホで予約取るのめんどくさい症候群」って名前つけたいくらい(笑)。
だから、自然のものを見るようにしています。最近は「ビーチコーミング」にハマってて、砂浜で貝や石を拾うんですけど、白い貝でも全部違う白で、すごく美しいんですよ。落ち葉の赤とか、グラデーションとか、そういう色に目を向けるだけで、すごくリフレッシュになります。目も疲れないし、心が整う感じがします。
もうひとつは、「泣くこと」ですね。恋愛リアリティショーを観て、せつない気持ちを満喫して、過去の恋愛とか亡き母のこととか思い出して、泣く。今日は「泣いていい日」って決めて、泣く曲を聴いて、思いっきり浸るんです。
実際、泣くことってなかなかないから、意識して「せつないを味わう」っていうのも、すごくすっきりします。感情の揺らぎにもちゃんと向き合って、楽しんでみるのもいいと思います。
(取材日:2025年11月)
原あいみさん 著書の紹介

私の生理のしまい方
著者:原 あいみ 監修:関口 由紀
出版社 : KADOKAWA (2023/10/26)
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