子どもたちの「のびしろ」を応援したい。子どもの成長を通じて子育て家族に寄り添う医療を目指して【医師 圓若 かおり】

子育て
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医師 圓若 かおり

圓若 かおり

子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック 院長

小児科専門医・指導医、内分泌代謝科専門医(小児科分野)、臨床遺伝専門医

人の役に立つ仕事を、その思いから医師の道へ

ー圓若先生が小児科医を目指されたきっかけを教えてください

小児科医を目指した最初のきっかけは、高校2年生のころ、海外の子どもたちに医療支援をする団体の活動の様子をテレビで見て、自分も何か人の役に立つことをしたいと強く思ったことですね。

ただ、医学部に入るまでは少し寄り道もしました。高校時代は部活動が忙しく勉強はほとんどできていなくて、現役での医学部合格は叶わず。1年間浪人をしてある大学の理工学部に入ったものの、自分には合わない授業もあり、「もう一度大学受験をしたい」と母に頼みこんで2浪目で念願の医学部へ進学することができました。

2003年に卒業して名古屋市立大学病院の小児科に入局しました。その後、名古屋市立西部医療センター、あいち小児保健医療総合センターを経て、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院ではNICU(新生児集中治療室)で病棟業務を中心に常勤医として11年間勤務しました。

ーお子さんが3人いらっしゃると伺いました。子育てと病院勤務の両立は大変だったのではないでしょうか

そうですね。両立はたしかに大変ですが、「ひとりの力ではなし得ない」という大前提のもと、周りを頼る、周りの力を借りることで乗り切ってきました。

私自身は、大学卒業後5年のタイミング、名古屋市立西部医療センターに勤務している間に第一子を出産しました。その後も病院を移る度に第二子、第三子を出産しています。

幸いなことに、母や夫の全面的な支えがありましたし、職場環境にも恵まれていたと思います。仕事の面では、上司や周囲の先生方の理解と協力を得て、当直と待機を基本的には免除していただくなど両立しやすい環境を整えることができました。

家庭と仕事の両立は、ひとりで無理をするのではなく、「ここまでやったらOK」という良いバランスを見つけて頑張りすぎないこと、そして周囲に相談しながら「できること、できないこと」を明確にすることが大切です。そのためには、お互いの意思をしっかり伝えられる環境や風土、関係性をつくっていくことが大事だと思っています。

家庭の中では、褒め合うことがポイントです。「電子レンジの中をキレイにした」とか「お風呂場の気になる汚れを掃除した」とか、言わないと伝わらないことは、私は母と夫に伝えます。お互いに成果を言い合って、自分を褒めて相手を褒めることで、気持ちよく過ごせています。

「のびしろ」を伸ばす小児医療を目指して、同級生とクリニックを開業

ー先生が「上西のびしろクリニック」を開設された経緯を教えていただけますか

病院で専門医として勤務する中で、「かかりつけ医としてひとりの患者さんを継続して診ていきたい」という想いや、「もっと気軽に受診できる環境をつくりたい」という想いが徐々に強くなってきたことがきっかけです。

子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック ホームページ
「子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック」
https://uenishi-nobishiro.com/index.html

私は小児科の中でも「小児内分泌」が専門です。先ほどお話したように、以前はNICUで勤務していました。NICUに入院するお子さんの中には、先天的な内分泌疾患を持つケースもあり、診療には内分泌や遺伝学の専門的な知識が必要となります。私の専門分野を活かせる場面も多く、11年間やりがいを持って楽しく診療に取り組むことができました。

一方で、NICUで診ていた患者さんが成長するにつれ、病院の専門外来を受診するには平日に学校を休んだり早退しなければならないという問題が見えてきました。受診頻度によっては、お子さんにも親御さんにも大きな負担となります。そこで、クリニックで土曜日に受診できればこの負担を少しでも減らせるのではないかと考えるようになりました。

さらに、クリニックであれば、専門的な診療だけでなく、ちょっとした体調不良や風邪の時にも気軽に受診してもらい、一人ひとりの患者さんに継続的に寄り添う診療が可能になります。そんな場所を作りたいという思いが、クリニック開設の決意へと繋がりました。

子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック エントランス

ークリニック名に「のびしろ」という言葉が入っているのが特徴的だなと思いました。この言葉に込めた想いをお聞かせください

未来への「のびしろ」という意味と、身体的な「のびしろ」などいろいろな意味を込めてこの言葉をクリニック名に入れています。

実はこのクリニックは、高校の同級生である内科医、医療コンサルタント、そして小児科医の私の3人で立ち上げ、クリニック名も3人で相談して決めました。子どもたちの「のびしろ」を大人になるまでの間に目一杯広げていく小児医療を目指したい、そんな想いが込められています。

クリニック名には私の名前は入っておらず、友人の名前を使っているので、どんな関係か聞かれることもあります。私たちは同級生であり、大切な仲間です。

私は小児科を担当し、少し離れた場所でもう一人の医師が内科を担当しています。将来的には、小児科で診ていたお子さんが成長した後も同じ法人内で内科にスムーズに引き継ぎ、経過を共有できることが大きな財産になると考えています。

子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック 診察室

ークリニックにはどのような患者さんがいらっしゃいますか

クリニックでは、一般的な小児科の診療と専門科目として低身長症や小児の糖尿病、肥満症、染色体疾患や遺伝性疾患など発達や成長に関する診療を扱っています。

小児糖尿病は希少疾患のため患者数が多いわけではありませんが、「子どもの糖尿病が疑われる時にどこを受診すれば良いのか分からない」という方たちが、クリニックのホームページを見て近隣の地域から来院される方もいます。

小児糖尿病は、生活習慣とは関係のない「1型糖尿病」であることが多く、ウイルス感染などをきっかけにインスリン分泌ができなくなって発症します。急な体重減少、疲れやすさ、多尿、口渇などの症状が見られます。当院では血糖値を測定し、発症が確認された場合は総合病院をご紹介しています。

そのほか、低身長や思春期早発症など発育に関するご相談や診療についても、近隣の県など遠方から来院される方もいらっしゃいます。

 ー先生がこのお仕事をされていてやりがいを感じるときはどんなときですか

患者さんから温かいメッセージをいただくことがやりがいに繋がっています。

クリニックを開設して以来、院内改善のために患者さんからスタッフへのコメント(改善してほしい点、要望、良かった点など)を一部のスタッフにのみに伝わる形でいただくようにしています。

「話しやすかった」「些細なことでも快く相談に乗ってもらえた」といったコメントをいただけると、とても嬉しく励みになります。

子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック 受付
子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック キッズスペース

小児科医として子育てに関わる家族の絆をサポートしたい

ー読者のみなさんにメッセージをお願いします

「どんなことでも気軽に相談してほしい」とお伝えしたいです。

私は小児科医として、何気ないことでも質問していただけるのが本当に嬉しいです。その想いはクリニックを開設したきっかけにもなっています。些細な相談であっても、お応えできた時に小児科医としてのやりがいや充実感を感じます。

医師への質問や相談は緊張することも理解していますし、こちらからの言葉がうまく伝わっていないかもというもどかしさを感じることもあります。このすれ違いをゼロにするのは難しいかもしれませんが、少しでも「話してよかった」と思っていただけるように努めています。

そして、このメッセージは、お母さんだけでなく、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん…子育てに関わる全ての方々へお伝えしたいと思っています。

「ワンオペ育児」という言葉もありますが、子育てはどこかで誰かに支えられています。その支えてくれる人との繋がりや家族の絆をサポートできれば、小児科医としてこれほど嬉しいことはありません。

子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック 院長 圓若 かおりさん

身体をうごかしてリフレッシュ

ー最後に先生のリフレッシュ方法を教えてください。

やっぱり身体を動かすことです!もともと陸上部だったので走ることが好きですね。今は夫と一緒に走っています。

開業してからは忙しくて中々時間が取れていないのですが、ホットヨガやエアリアルヨガにもかつては通っていました。今はYouTubeなどの動画配信サイトを見ながら自宅でヨガをすることもあります。

(取材:2025年2月)


本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。

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