赤ちゃんの泣き声が怖い…育児ストレスで心身ともに限界です【お悩み相談室】

今回は、赤ちゃんの泣き声に強い恐怖を感じ、心身の不調や追い詰められる思いを抱えている30代女性からのご相談です。
赤ちゃんの泣き声に敏感になる理由や、心身の負担を減らす工夫、助けを借りる大切さについて臨床心理士がお答えします。
0歳の赤ちゃんを育てていますが、育児ストレスが限界に近く、心身に不調を感じています。おんぶはとても嫌がるので、日中はほぼ抱っこで過ごしています。家事や離乳食作りは子どもが寝た後、深夜に行っています。深夜の家事中に泣かれるのが怖く、物音にも神経を使っていて、心臓がドキッとしたり、胃が痛くなったりします。最近は日中も体調が悪く、精神的にも追い詰められています。赤ちゃんが泣くのは当然とわかっていても、恐怖感が強く、気持ちがついていきません。もっと気楽に育児ができるようになりたいのですが、どうすればいいのでしょうか。自分の子どもなのに泣くことに恐怖心を抱いている自分にも引いてしまいます。
(30代、女性、ハンドルネーム:キャラメル、職種:事務・オフィスワーク)
目次
最初に
毎日の育児、本当にお疲れさまです。
「おんぶは嫌がるから、日中はずっと抱っこ」「家事は深夜」「物音ひとつに心臓がドキッとする」――その状況を読んだだけで、こちらの肩と胃もキュッとなりました。
これはもう、“24時間体制のレスキュー活動”と言っても過言ではない日々です。
赤ちゃんが泣くとわかっていても、「また泣かれたらどうしよう」「この静寂を壊したくない」という恐怖や緊張感。それは決しておかしなことではありません。
むしろ、それだけあなたが赤ちゃんに真剣に向き合い、全力で応えてこられた証でもあります。
誰かの命を預かるということは、想像を超えるほどの重圧です。
そして今、あなたはそのプレッシャーの中で、寝不足と緊張に耐え、ひとりで嵐のなかを泳いでいるようなものなのです。
恐怖を感じて当然、体に異変が出ても当然。
むしろ、よくここまで壊れずに耐えてきましたね。
あなたのせいではありません。
これは、「あなたが壊れそうになるほど、がんばってきた」ということなのです。
泣かれるのが怖いのは気持ちが弱いからじゃない
もしかしたら、あなたのなかで「泣かせてはいけない」「泣いている=育児がうまくいっていない」と感じていませんか?
でも本当は、赤ちゃんって泣くものなのです。
泣くことでしか伝えられないのだから、泣くのは“赤ちゃんの言語”。
つまり、泣かれることは失敗でも迷惑でもなく、「ちゃんと生きてる証拠」なんです。
とはいえ、頭ではわかっていても、深夜の静寂を破る泣き声に心が悲鳴を上げてしまう。
それは「育て方が悪い」わけでも「気が弱い」わけでもありません。
“慢性的なストレス下でアラームに敏感になっている状態”なのです。
ここから少しずつ「泣いてもだいじょうぶ」「私はもうじゅうぶんやっている」と思えるようになること。
そのための「自分のケア」と「誰かの力を借りること」を、今は最優先にしていけるとよいかもしれません。
泣き声に敏感になる理由と対処法
まず知っておいていただきたいのは、「赤ちゃんの泣き声による母親のストレス反応」は、神経系のごく自然な反応であり、誰にでも起こり得るものだということです。
ある研究では、赤ちゃんからの刺激が親の脳を活性化させることがわかっています(※)。
赤ちゃんを守るために、親は泣き声を鋭敏にキャッチして、戦闘モードになるのでしょうね。
これは「母性」ではなく「本能」と呼べるものなので、泣き声にびくびくするあなたは、むしろ正常です。
ですがその状態が続くと、交感神経が優位になり、自律神経のバランスが崩れて、胃痛や動悸、不眠といった症状が出ることもあります。
以下のようなアプローチを、少しずつ取り入れてみませんか?
“抱っこしているだけで100点”の日を作る
家事は「できたらラッキー」、離乳食は「とりあえず何か口に入ればOK」とハードルを下げてください。
スーパーで買えるベビーフードは、あなたの味方です。
“無音”をやめて、環境音を味方につける
赤ちゃんの泣き声が響きすぎてつらい方には、ホワイトノイズや環境音(波の音など)を流してみてください。
ホワイトノイズとはノイズ(雑音)の一種で、様々な周波数の音を同じ強さでミックスして再生したノイズです。
換気扇やテレビの砂嵐のような「サーッ」「シーッ」「ゴーッ」のような雑音を指します。
ホワイトノイズには集中力向上、リラックス効果、安眠効果があるとされているので(※)、あなたの脳にも「落ち着け」の信号を送ってくれるかもしれません。
“緊急避難場所”をつくる
短時間でも赤ちゃんを見てくれる人(夫、親、シッター、ファミサポなど)にお願いして、家を出て15分だけでも「1人になる時間」を意識的に確保すること。
とにかく1人になる時間が、リセットの鍵です。
“話せる人”とつながる
同じ悩みを持つママ同士のSNSグループ、自治体の育児相談窓口、産後ケア施設などに頼るのは、甘えではありません。
「自分を壊さないために助けを求める」ことは、立派な育児スキルです。
最後に
あなたは、弱いどころか、誰よりも強くがんばってきた人です。
だけど人は、強くがんばり続けたときほど、誰かに「ちょっと休んでいいよ」と言ってもらいたいのです。
その言葉を、まず私が贈ります。
<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています
NCBI(米国国立生物工学情報センター)
▶Brain basis of early parent-infant interactions: psychology, physiology, and in vivo functional neuroimaging studies:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17355399/
audio-technica
▶ひそかに話題!ホワイトノイズとはどんな音?:https://www.audio-technica.co.jp/always-listening/articles/white-noise/?srsltid=AfmBOor-d6iM1UNHr6xA6Vhv2h4yqUCn7Qg5LLmfangYfbyV5Th0r3Ri
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