同じ注意の繰り返しに疲れた私へ…マイペースな子への育児ヒント【お悩み相談室】

子育て
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今回は、小学4年生の娘さんとの関わりに悩む40代の女性からご相談をいただきました。優しいけれどマイペースな娘に、毎日同じことを注意してばかりで、自分が嫌になるというお悩みです。

怒ってばかりの日々に疲れたとき、子どもとの関係をどう築いていけばいいのでしょうか。臨床心理士がやさしくアドバイスします。

小4の娘の子育てに疲れを感じています。娘はとても優しい子ですが、マイペースで、日常のちょっとしたことを何度も注意しなければならず、毎日声を荒げています。食事の声かけ、返事をしない、あいさつが身につかない、行動が遅い…など、同じことを何度も言う日々に私自身がしんどくなってきました。毎日怒っていても響かないと思い、怒らない日を作ってみたのですが、全く変化なし。周りを気にしすぎない娘の良いところではあるのですが…言いすぎはよくないと思いながらも、最低限のマナーは伝えたいという気持ちがあり、葛藤しています。私がうるさすぎるだけなのでしょうか。マイペースな子どもを持つ方はどのように育児をされてきたのか、アドバイスをいただきたいです。

(40代、女性、ハンドルネーム:shiho、職種:医療・介護・福祉)


最初に

小4の娘さんとの日々、まずは本当におつかれさまです。

毎日、同じことを何度も伝えて、時に声を荒げ、そして「また怒ってしまった」と自分を責める…そんな繰り返しに、心も体もくたくたになってしまいますよね。

「私がうるさすぎるのかな」と自分を疑ってしまうお気持ちも、とてもよく伝わってきました。

でも、あなたが今こうして相談してくださったこと、そこにすでに「もっと良いやり方があるなら試したい」「この子の良いところを大切に育てたい」という深い愛情があるのだと私は感じました。

きっと、娘さんの「マイペース」なところに、あなたも何度も葛藤してこられたのだと思います。

思春期の入り口に差しかかるこの時期、子どもとの関係はぐっと難しさを増してきます。

でも、「優しいけれど、言うことは聞かない」――それは、まさに“自我”が育ってきた証拠でもあります。

それでも、毎日怒るのはしんどいですよね。

怒らない努力をしても変化がないと、「じゃあ私はどうしたらいいの?」と途方にくれてしまいます。

あなたはずっと、娘さんと向き合おうとしてきました。その姿勢がまず、素晴らしいことだと私は思います。

「染み込む時間」を信じて、言い方を変えてみよう

「こんなに何度も言ってるのに、どうして変わらないの?」という怒りとあきらめの混じった感情。

これは、ほとんどの親が一度は抱くものだと思います。

けれど、子どもって、言われたからすぐ変わるわけではなく、何度も何度も言われた言葉が、じわじわと“染み込んで”いって、ある日ふと「あ、こういうことか」となることもあるんです。

もしかすると、今はまだ「染み込み中」の段階なのかもしれません。

そこで提案したいのが、「言い方のバリエーションを変えてみる」ことです。

意する時、つい定型文のように同じ言葉で繰り返してしまうことってありますよね。

「早くしなさい」「何回言ったらわかるの?」など。

たとえば、注意する代わりに一緒に実況中継をしてみる。「あ、今お箸に手が伸びました〜!さあ、お味噌汁を飲むのか?!それともサラダか?!」なんて、ちょっとふざけて言ってみると、笑いながら動いてくれることも。

マナーや常識を伝えることは大切。でも、その伝え方が“戦い”になってしまうと、どちらも疲れてしまいますよね。

だからこそ、「怒らずに伝える」よりも「怒らなくても済む仕組みをつくる」方向に、少し目を向けてみてもいいのかもしれません。


マイペースなわが子への接し方

心理学の視点では、マイペースな子どもは「感覚過敏・鈍麻」「実行機能の発達」「内発的動機づけの弱さ」など、さまざまな脳の特性が関係している可能性があると考えられています。

もちろん病気や障害ということではなく、誰でも持つ「その人の脳の特性」としてとらえることが大切です。

たとえば「声かけしても動かない」場合、情報処理に時間がかかっていたり、「なぜそれをやらなければいけないのか」が腑に落ちていないということも

そんな時には、

指示を短くシンプルに(「靴履いて→車に乗るよ」など)

“行動の理由”をセットで伝える(「挨拶はね、相手を大事にするってサインなんだよ」)

「今すぐ!」ではなく「○時までに」で時間に余裕をもつ

という工夫が効果的です。

また、子どもが“できたこと”を見逃さずに言葉にして伝える「肯定的注目」は、マイペースな子への接し方として非常に有効です。

たとえ10回に1回でも「自分からお皿運んでくれて助かったよ」「さっき、ちゃんとお返事してくれたね」と伝えることで、「こうすれば喜ばれるんだ」と気づいていくことがあります。

最後に

怒ってしまう日があっても、いいんです。親だって人間だもの

でもその中で、「この子なりにゆっくり育っている」「今、ゆっくりでも吸収している」と信じることが、きっと親自身の心を少し楽にしてくれるはずです。

あなたの娘さんは、あなたに守られて、ちゃんと自分らしく育っています。マイペースな子を育てるのは、想像以上にエネルギーが要ること。

でもそのぶん、彼女の世界はとっても奥深い。

どうかその歩みを、少し肩の力を抜いて、これからも見守っていってくださいね。


<本記事の回答者>

戸田さやか

公認心理師/臨床心理士/生殖心理カウンセラー/がん・生殖医療専門心理士/ブリーフセラピストシニア

所属:株式会社ファミワン

「妊活や性の悩み、子育てや働き方のことまで、「誰に相談していいかわからない」テーマも歓迎しています。どんな内容でも大丈夫。安心してご相談ください。臨床心理学の確かな知識と技術を活かし、原因探しや悪者探しではなく、あなたにとってのゴールを発見するお手伝いをさせてください。」


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