少子化を食い止めたい!生殖医療と女性の健康に寄り添うケアでサポートします【医師 桜井 明弘】

妊活・不妊
記事をシェア

桜井 明弘

産婦人科クリニックさくら 理事長・院長

産婦人科専門医

1994年に順天堂大学を卒業し、順天堂大学産婦人科教室に入局。順天堂大学大学院へ進学、順天堂大学医学部附属順天堂医院、同浦安病院、越谷市立病院などでの勤務を経て、2001年に賛育会病院に勤務する。

研究面では精子由来の卵活性化因子を研究し、日本受精着床学会から「世界体外受精会議記念賞」を受賞する。2006年に東京女子医科大学第二生理学教室主催の国際シンポジウムで講演を行う。2007年4月に横浜市青葉区に産婦人科クリニックさくらを開業。

「生殖医療」と「ウィメンズヘルスケア」の2本柱で女性の健康をサポート

ー桜井先生のご経歴を教えてください

順天堂大学を卒業後、そのまま大学の産婦人科にて産婦人科医として働き始めました。産婦人科の中でも、不妊と腹腔鏡手術を専門とするグループに所属したことが、不妊治療に携わるきっかけでしたね。

その後、順天堂の大学院に進み、東京女子医科大学の生理学の研究室で受精現象に関する研究を行いました。勤務医として大学病院や市立病院、民間病院などの産婦人科に出向し、不妊診療のみならず、周産期医療、婦人科悪性腫瘍など研鑽を積み、腹腔鏡下手術は数多く手がけました。

2007年に現在のクリニックを開業し、ウィメンズヘルスケアと、一般生殖医療、生殖補助医療を提供しています。開業からもう17年になりましたね。

当初は不妊治療が中心でしたが、不妊の患者さんを診ていく中で、今で言うプレコンセプションケアの重要性を実感するようになりました。将来の妊娠を見据えたヘルスケアの必要性から、中高生や大学生などの若い年代にも産婦人科医が早期から関わるべきだと考えるようになったのです。

ウィメンズヘルスケアの観点からは、思春期から更年期・その後の老年期までの女性を対象に、出産・分娩を除くあらゆる健康問題に対応するスタンスで診療を進めています。

産婦人科クリニックさくら

ー最近特に注力されている取り組みはありますか?

SNSでの情報発信をより強固に始めました。

世の中には、科学的ではない情報や、感情的なところに訴える内容など、医療や科学とはかけ離れた視点からの情報が多いですよね。患者さんにとって、どの情報が正しいかを見分けるのは非常に難しいと感じています。

医療機関が発信する情報は信頼性が高いという認識をいただいているので、しっかりとエビデンスに基づいた情報を発信していきたいと思っています。

ー先生が普段、不妊治療の患者さんと接する中で、心がけていることやコミュニケーションで気をつけている事はありますか

不妊治療のきっかけや状況が個々の患者さんにより全く異なるので、それぞれへの接し方には大変気をつかいます。お互いにそうだとは思いますが、特に初診の患者さんに接する際はこちらもとても緊張しますよ。

例えば、「来月入籍するので、ブライダルチェックに来ました」と、比較的カジュアルに受診される方がいらっしゃいます。

気軽に受診いただけたことは大変うれしいのですが、自分たちの思いとは異なる予期せぬ現実を知ったときのギャップが激しいんです。カップルそれぞれの価値観や思いにばらつきがあると、このギャップがより顕著に表れます。早く知らせて対策を取ることが大切ですが、同時に伝え方や接し方には細心の注意を払います。

他には、長期にわたる不妊治療歴があり、複数の医療機関を訪れ、体外受精も何十回も経験されたような方が、当院に藁をもすがる思いで来院されることもあります。

特に40歳を超えて10年間以上治療を続けておられる場合、言葉かけ一つで過度な期待を抱かせてもいけませんし、かといって失望させてもいけないので、コミュニケーションの取り方は本当に難しいなと思います。

患者さんのお話をじっくりと伺いながら、その方に最適な方法や進め方を一緒に決めていくよう心がけています。

少子化を止めたい!という思いでクリニックを開業

ーお取り組みやお仕事の中でやりがいを感じる部分はどんな事でしょうか

私が不妊治療クリニックを開業した理由は、少子化を止めたいという想いからでした。

そう思いながら10年以上やっていますが、出生率の低下はどんどん加速して、全然食い止められない。力不足を感じる部分ではありますが、それでもなんとか少子化に歯止めをかけたいと思っています。

不妊治療での妊娠は、この治療がなければその子は生まれなかったかもしれないということを意味します。授かった子どもさんとご夫婦が家族を形成するのをお手伝いしていることに喜びを感じながら、日本国民を一人でも多く増やしているという自負をもって取り組んでいます。

最近、当院で体外受精をして3人ご出産された方が、前回採卵したときの卵子の凍結更新にいらっしゃいました。4人目にチャレンジしたいとのことで、すごくうれしいなと思っていますし、ぜひ力添えできたらと思っています。

もちろん、産まない選択や希望が叶わなかった方を否定する意図は全くありません。産みたいと望む方が産んでくれるというのは、すごくありがたいことだなと思っていて、日々の仕事のモチベーションになっています。

妊活を通じて食習慣・生活習慣の見直しを!

ーこれから妊活や不妊治療を考えている方、今まさに不妊治療をされている方にメッセージをお願いします

妊活や不妊治療を、ご自身やパートナーの生活習慣を見直すきっかけにしていただきたいと思います。

なかなか若いうちには気づきにくいんですが、口から入ったものが自分の体をつくっています。なるべく国産を選ぶとか無農薬を選ぶとか、食材には気をつかってほしいと思います。値段は高いですけど、ご自身やパートナーの健康、未来に生まれる赤ちゃんのために、日々口にする食材は少し奮発しても損はないと思います。

1人目が授かるまで体外受精を何度も行っても、なかなか妊娠しなかった人が、2人目はあっという間に自然妊娠する方がいるんですよ。話を聞くと、以前はゼリーのような栄養補助食品だけをごはんがわりにしてたけど、お子さんが生まれて家で自炊した食事をとるようになったとか、お子さんと一緒にしっかり寝るようになったっておっしゃるんですよね。

もちろん食事だけが不妊の原因ではありませんが、食事で身体は変えることができるので、普段の食事を見直すことをおすすめしたいですね。

家庭菜園で収穫した野菜

家庭菜園での野菜づくりがリフレッシュの時間

ー最後に、桜井先生のリフレッシュ方法や気持ちのリセット方法をお聞かせください

私はあまりストレスを感じにくい体質で、くよくよすることもなく淡々と仕事をして家に帰るだけなんですが、リフレッシュ方法を強いてあげるなら「家庭菜園」だと思います。

3年ほど前から農園を借りて、本格的な家庭菜園で野菜などを育てています。炎天下の暑い中、汗だくになって草むしりをしたり、土いじりをすることも気分転換になっています。菜園に行けなかった日はちょっと鬱々としてしまったりするので、きっと大事な時間なんだと思います(笑)

自分で作った野菜を食べる楽しみもありますね。有機無農薬で育てた獲れたての野菜は、本当に美味しいんです。

またおもしろいのは、野菜が実るって、生殖医療と似てるんですよ。だってメシベとオシベがくっついて実になるわけじゃないですか。どうやったらうまく育つのか、どうやったらうまく受粉するのかを考えながら楽しんでいます。

(取材:2024年9月)


本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。

記事をシェア
あなたのお悩みを募集中。

あわせて読みたい

トップ > 新着記事一覧 > 少子化を食い止めたい!生殖医療と女性の健康に寄り添うケアでサポートします【医師 桜井 明弘】