不妊治療への不安を抱える夫の背中を押すには【お悩み相談室】

今回は、不妊治療のための受診に踏み切れない夫への寄り添い方について、30代の女性からご相談をいただきました。夫が自分の意思で受診を決断できるようサポートしたいとお考えのようです。
妊活への前向きな関わり方や、夫の気持ちに寄り添いながら受診を促す方法について、生殖心理カウンセラーがお答えします。
夫婦ともに子供は欲しいのですが、夫が病院嫌いで、ずっと不妊治療の病院に行くことを避けてきました。「35歳を過ぎると母子ともに出産のリスクが上がるし、そもそも余計に妊娠しにくくなるから」と夫に伝えたところ、ようやく「一緒にいく」と言ってくれましたが、昨日になって「妊娠できないのは何とかしたいけど、病院に行くのは犯人探しみたいで嫌だ」と言い出しました。正念場だなと思い、夫とじっくり話してみるとどうやら「自分が原因で妊娠できない」と思っているようです。私は「できる限りのことをしてそれでも子供ができない時はふたりで楽しく過ごしたいよ」と伝えましたが夫は落ち込んだままです。夫なりに調べてサプリを飲んだり、運動習慣をつけたりと努力している姿も見ているので、無理やりではなく夫が自分の意志で病院にいくことを決めて欲しいと思っています。どうすれば夫の気持ちに寄り添いながら夫が前向きになれるサポートができるかを教えていただきたいです。よろしくお願いします。
(30代、女性、ハンドルネーム:キャラメルナッツ、職種:営業)
目次
妊活は夫婦一緒に取り組むもの。その過程で生まれる気持ちのズレや葛藤は自然なこと。
こんにちは。お悩みを共有してくださりありがとうございます。今の状況に、あなたがどれだけ悩み、どうすればいいのか模索していることが伝わってきました。
まずお伝えしたいのは、あなたがパートナーさんの気持ちを尊重しながらも、一緒に向き合いたいと考えていること、それ自体がとても素晴らしいことです。妊活は夫婦一緒に取り組んでいくものですが、その過程で生まれる気持ちのズレや葛藤もまた、ごく自然なことです。
今回は、パートナーさんの気持ちに寄り添いながら、病院に行くことに前向きになれるサポートについて、一緒に考えていきましょう。
パートナーさんが「病院に行くのは犯人探しみたいで嫌だ」と感じているのは、「自分が原因だったらどうしよう」「責められるのではないか」といった不安や怖さがあるからかもしれないのですね。多くの男性が不妊治療を前にしたときに、同様の悩みを抱えます。
不妊治療の病院は「原因を突き止める場」ではなく、「夫婦でできることを提案してもらえる場」です。そのことを伝えてみるのはいかがでしょうか。
例えば、「今の努力にプラスして、病院で専門的なアドバイスをもらうことで、今何をすべきかがわかるかもしれないよ」と話すことで、病院の意義を前向きに捉えやすくなります。
また、「あなたが原因か私が原因かを探すためじゃなくて、一緒にできることを増やしていきたい」と伝えることで、病院に行くことが「責められる場」ではなく、「前向きな選択肢の一つ」と感じられるかもしれません。
サプリを飲んだり、運動をしたりと、自分なりに妊活の努力をしてくれるパートナーさんの姿を見ると、とても頼もしく感じますよね。良かったら、その気持ちをパートナーさんに伝えてみましょう。
「いつも頑張ってくれてるよね。一緒に妊活できてるって感じがして、すごく嬉しいよ」と伝えることで、パートナーさんは自分の努力があなたに伝わっているとわかり、安心できるのではないでしょうか。
選択肢を示す。医師に相談する前にカウンセリングやセミナーを受けてみるのも一つの手。
パートナーさんの不安がある以上、「すぐに病院へ行こう!」と急かすよりも、選択肢を示しながら、パートナーさん自身が前向きに決断できるような状況を作ることが大切です。
病院に行ったら必ず検査や治療を受けねばならないわけではありません。「まずは専門家の話を聞いてみる」というステップを提案してみるのも一つの方法です。
「話を聞いて、納得できなかったら無理に進めなくてもいいよね。相談してから、一緒にどうするか考えてみたいな」と伝えることで、パートナーさんの受診への心理的なハードルを下げることができると思います。
いきなり医師に相談するのではなく、妊活の進め方や不妊治療についてご夫婦でカウンセリングやセミナーを受けるのも一つの手です。
妊活の知識や、他のカップルはどうしているのかなどの情報も得られます。知識があると、ご夫婦で納得できる選択肢を選ぶことができますよ。
妊活は「夫婦で人生設計を考える」チャンス、あなたは何を大切にしたいですか?
あなたの「できる限りのことをして、それでも子どもができない時は二人で楽しく過ごしたいよ」という言葉は、パートナーさんにとってとても大きな安心になったのではないでしょうか。
あなたは、夫婦で妊活に取り組むうえで大切なことを、よくわかっていらっしゃると感じました。でも、パートナーさんはまだその位置に立っていないのでしょう。
妊活は、ご夫婦がこれからの人生で何を大切にしたいか考え、話し合い、絆を深める機会でもあります。パートナーさんが「自分の身体について調べてみよう」という勇気を出せるまで、味方になりながら待って差し上げてください。
妊娠には女性の年齢が関わりますから、あなただってヤキモキすると思います。何もせずパートナーさんの心境の変化を待つ、ということではありません。あなたはあなたにできる事をしていただきたいです。
不妊治療を始めると、生理が来るたびに落ち込んだり、受診時間確保のために仕事に影響が出たりします。今のうちに、自分の心のセルフケア方法を探したり、仕事の無駄を省いておくのは、大切な妊活のひとつです。
あなたがパートナーさんの気持ちを尊重しながら、一緒に向き合いたいと願っていること。その思いは、きっと彼にも伝わっていると思います。どうか焦らず、パートナーさんの心のペースを尊重しながら、一歩ずつ前に進んでいけることを心から願っています。
回答者:生殖心理カウンセラー
都内不妊治療専門クリニックに勤務。性や不妊治療、カップル関係が専門で、カップル・家族の心理支援を行っています。カウンセリングではユーモラスな会話と、「話してみて良かった」と少しでも感じてもらえることがモットー。未来のために一緒に作戦会議をしましょう!
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