将来の妊娠に不安…子宮内膜症との向き合い方【お悩み相談室】

妊活・不妊
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子宮内膜症と診断され、急に妊活や不妊治療をすすめられ困惑しているという女性からご相談をいただきました。将来の妊娠に不安を抱えつつも、今すぐの妊娠は現実的でない状況の中で、どのように治療と向き合えばよいのか悩んでいるようです。

子宮内膜症や治療、妊活について看護師がお答えします。

20代半ばで子宮内膜症と診断されました。交際していた人もおり、病院の医師から内膜症の人は不妊になりやすいから妊娠を希望するなら早めに妊活を始める事などを勧められました。調べたら確かに不妊の原因にもなりやすい事は分かりました。
パートナーも最初から子供を希望していたため妊活の話もでてはいたのですが、その後その方とはお別れしたため実際チェックや妊活などをすることもなく不妊治療の話の事も忘れていました。
最近不正出血があるため産婦人科に再度行った際に今後妊娠を希望するかと聞かれたので、機会があるのであればと答えたところ、早めに妊活や不妊治療やチェックをする事を勧められました。
周りにはシングルの人も多く、中には独身中から不妊症なのかチェックしてる人も居たり、交際相手が出来ると直ぐに妊活や不妊治療を始めてた人も居ました。年齢が上がれば自然妊娠の率も下がることはわかっているのですが、もしもこの先妊娠を希望するのであれば、今パートナーがいなくても、不妊治療や妊活は早め早めに始めるべきなのでしょうか?
年齢が上がるほどに婦人科の医師に早めに治療を始める事を勧められたことが気になりだしました。

(30代、女性、ハンドルネーム:りん、職種:医療・介護・福祉)


最初に

りんさん、ご相談ありがとうございます。

子宮内膜症と診断されたのですね。急に妊活や不妊治療の話があり、びっくりされたかと思います。

今すぐの妊娠が現実的でない場合は、将来の妊娠・出産のために子宮内膜症の治療を進める

まず、子宮内膜症(※)とは月経で剥がれ落ちるはずの子宮内膜が、何らかの原因で卵巣や腹腔内で発育してしまう病気です。お腹の中で癒着や炎症を起こしてしまうので、月経痛や性交痛、排便痛など様々な痛みを引き起こします。

卵胞ホルモンの影響を受けるので、月経を重ねるごとに悪化していく病気です。子宮内膜症の中でとくに有名な初見は、子宮内膜が卵巣の中に入り込んで腫れてしまう卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)です。ひどい月経痛があり、婦人科にかかったところチョコレート嚢胞が見つかり、子宮内膜症であることが分かったという方も多くいらっしゃいます

子宮内膜症がある方全員が妊娠できない、という訳ではないのですが子宮内膜症の患者さんの約半数は不妊症を合併し、不妊症患者の約25~50%に子宮内膜症が診断されると言われています。

また、女性は加齢とともに妊娠率が下がり、流産率が上がります。チョコレートのう腫がある場合には、卵子の老化が年齢より進むこともあると言われています(※)。

医師からご説明があったように、妊娠や出産に向けて状況やお気持ちが整い次第早めに不妊治療を始めていくと良いと思います。

しかし、不妊治療や妊活は当然のことながら、パートナーの存在や協力が必要不可欠です。現時点でパートナーがいない、今すぐの妊娠が現実的ではない状況であれば、将来の妊娠・出産のために子宮内膜症の治療をすすめていくこともおすすめです

子宮内膜症の治療とは

子宮内膜症は個人の症状や状態に合わせて、痛みがある時に鎮痛剤を使用する対症療法だけでなく女性ホルモンのお薬を使用したホルモン療法(内分泌療法)を行ったり、場合によってはチョコレート嚢胞等の手術が提案されることもあります。

ホルモン療法では、少量の女性ホルモンが配合された薬を使用することで排卵を抑えるので、月経痛が軽くなるだけでなく、チョコレート嚢胞の縮小も期待できる治療法です。

排卵を抑えてしまうので、今すぐの妊娠を考えている場合には使用できないのですが、子宮内膜症の進行の予防にもなります(※)。


どのような治療がすすめられるかは、りんさんのお体の状態や医師のお考えにもよるのですが、将来的な妊娠に向けて今できることはありますので、かかりつけの産婦人科に相談してみてくださいね。

また、興味があれば、結婚前に妊娠や出産に影響を与えるような感染症や病気がないかどうかを確認するブライダルチェックや、卵子凍結も将来の妊娠に向けて現時点でできることとして挙げられます。どちらも保険適応外の検査・手術になりますので、興味がありましたら、経済的な面も含め検討してみてくださいね。

最後に

医師からご自身のお体や将来の妊娠についてのアドバイスを「まぁ大丈夫でしょ」と聞き流すのではなく、こうしてご相談いただいたことも素晴らしい一歩だと思いました。

結婚や妊娠、出産はしなくてはならないものではなく、様々な考えがある世の中です。

人との出会いや状況で気持ちも変わるものですが、「あの時こうしておいて良かったな」と思えるようご自身の健康や生活習慣、ライフプランを今一度見直してみるのも大切です

前向きな選択ができるように、応援しております。

<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています

公益社団法人 日本産科婦人科学会
▶子宮内膜症:https://www.jsog.or.jp/citizen/5712/
▶HUMAN+ 若い女性のトラブル②子宮内膜症:https://www.jsog.or.jp/public/human_plus_dictionary/pdf/2_4.pdf

日本生殖医学会
▶生殖医療Q&A Q5.どんな人が不妊症になりやすいのですか?:http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa05.html

公益社団法人 日本産婦人科医会
▶研修ノート No.102子宮内膜症・子宮腺筋症(4)子宮内膜症への対応:https://www.jaog.or.jp/note/%ef%bc%884%ef%bc%89%e5%ad%90%e5%ae%ae%e5%86%85%e8%86%9c%e7%97%87%e3%81%b8%e3%81%ae%e5%af%be%e5%bf%9c/
▶研修ノート No.102子宮内膜症・子宮腺筋症(5)薬物療法:https://www.jaog.or.jp/note/%ef%bc%885%ef%bc%89%e8%96%ac%e7%89%a9%e7%99%82%e6%b3%95/

<本記事の回答者>

小澤彩加

看護師/不妊カウンセラー

所属:株式会社ファミワン

神奈川県の不妊治療専門クリニックに勤務。妊活や不妊治療、女性特有の身体のお悩みなど、分かりやすく伝えることを大切にしています。現在不妊治療に励んでいる人だけでなく、子供を持たない選択をした人も迷っている人も、これから向き合っていく人も応援していきたいと思っています。ぜひお気軽にご相談くださいね。


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