妊活のための月3万円の漢方、続けるかやめるか決められない【お悩み相談室】

妊活の一環として漢方を続けているものの、妊娠への意欲は低く、夫婦の気持ちの温度差や金銭的負担に悩む女性からのご相談です。これまでの努力や夫の気持ちを思うあまり、自分の本音が見えなくなっているご様子です。
心と体のバランスを大切にしながら、漢方を続けるかの選択肢について薬剤師がアドバイスします。
妊活中で漢方を服用して4ヶ月になりますが、続けるべきか迷っています。私は妊娠に消極的ですが、夫が子どもがほしいという気持ちが強く、妊活を継続中です。以前は病院に通い、問題はないと言われたものの、タイミング法や人工授精を試しましたが成果は出ず、今は病院に行きたくないという夫の希望もあり漢方に切り替えました。生理関係の体調は多少良くなった気もしますが、妊娠には至らず月3万円の負担もありストレスが溜まってきました。やめ時もわからず、今後どうするべきか悩んでいます。アドバイスをいただけたらと思います。
(30代、女性、ハンドルネーム:タカミ、職種:事務・オフィスワーク)
最初に
ご相談ありがとうございます。
妊活中は、心も体も多くの負担を抱えやすい時期ですよね。
そんな中でタカミさんは、「実は自分は妊娠にそれほど前向きではない」と感じながらも、ご主人の想いを大切にして、漢方を続けていらっしゃる。今回のご相談から、その丁寧な思いやりと誠実な努力がひしひしと伝わってきました。
これまでには病院での診察やタイミング法、人工授精にも取り組まれたとのこと。
今はご主人の希望で通院を控えておられ、その代わりに漢方を取り入れているのですね。
ご夫婦の関係を大切にしながら、できる限りの選択をしてきたタカミさんの姿勢は、本当に尊いものだと思います。
その一方で、「月3万円の出費」「妊娠には至らない現状」「体調の変化は少しあるものの、成果が見えないもどかしさ」など、さまざまな思いが積み重なって、今とてもおつらい状況なのではないかと感じました。
だからこそ、今このタイミングで、一度立ち止まって自分自身に問いかけてみることは、とても大切なステップだと思います。
──「私は今、本当にどうしたいのか?」
この問いは、妊活をやめる・続けるという結論を急ぐためのものではありません。これまでご主人に向けていた思いやりを、少しご自身にも向けてあげるための問いです。
妊活の目的と選択を、自分の心に問いかける
妊活における選択は、本当に人それぞれです。
「これが正解」という決まった道があるわけではありません。
けれど、迷いやストレスが強くなっているときこそ、一度立ち止まって、「なぜこの方法を選んでいるのか?」「それは、今の自分に合っているのか?」と見つめ直すことが大切です。
今タカミさんが感じておられるように、「体調は少し良くなったけれど、妊娠には至っていない」という状況が続くと、「このまま続けて意味があるのか?」「やめてもいいのか分からない」といった迷いが強まって当然だと思います。
そして「ご主人の気持ち」や「これまでの努力」が大きなウェイトを占めすぎると、自分の本音が見えにくくなってしまうこともあります。
だからこそ、まずはこう問いかけてみてください。
「私は、何のために漢方を続けているんだろう?」
「この方法で、今後も頑張りたいと思えているだろうか?」
そしてもうひとつ大事なことは、「続けるか、やめるか」だけではなく、「形を変える」という選択肢もあるということです。
医療機関の漢方も選択肢に、心身への負担を減らすには
たとえば今の漢方薬が自己判断で選ばれているものであれば、まずは漢方薬局や漢方に詳しい医師に相談し、体質診断を受けてみるのも一つの方法です。
漢方薬は体質に合っていれば、冷えやホルモンバランスの乱れ・生理周期の改善などを通じて、妊娠しやすい状態を整える助けになることがあります。
ただし、「漢方薬それ自体が妊娠率を直接上げる」という確かなエビデンスはないため、合っていない漢方を続けても思うような効果が得られないこともあります。
また、継続することが基本とされる漢方ですが、もし経済的な負担やストレスが大きい場合は、それがかえってホルモンバランスや自律神経に悪影響を及ぼす可能性もあります。
妊活において「こころと身体のバランス」を整えることは、決して軽視できない要素です。
さらに費用面についてですが、市販の漢方薬は高額になりがちです。
一方で、医療機関で処方される「医療用漢方薬」であれば保険が適用されるため、自己負担を大きく減らすことができる場合があります。たとえば、ツムラのエキス剤などは、保険診療の中で処方されれば、月1万円以下で済むことも少なくありません。
ご主人が通院に消極的でも、タカミさんご自身の体調管理として婦人科や漢方外来を検討することは、前向きな一歩になるかもしれません。
最後に
妊活は、一見ひとつのゴールに向かう単純な道のようで、実はとても繊細で複雑なプロセスです。「がんばる」だけでなく、「やめてみる勇気」や「少し変えてみる柔軟さ」も、すべてが等しく価値のある選択肢です。
今回のご相談からは、タカミさんがご自身の気持ちにしっかりと向き合おうとしている姿勢が伝わってきました。
このタイミングで立ち止まって、今後の選択肢を見つめ直すことは、きっとこれからの妊活や人生全体にとって良い影響をもたらすのではないかと思います。
この回答が、少しでもご自身の心を整理するきっかけになれば嬉しいです。
<参考文献・出典>
Kampo view
▶不妊症:https://www.tsumura.co.jp/kampo-view/trouble/joseifunin.html
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