更年期の不調やつらさ しっかり話を聞きながら身体と心の両面からサポート【医師 池田 陽子】

更年期
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家庭や仕事 その人の人生をひっくるめて更年期を支えたい

池田 陽子

医療法人社団 福江産婦人科医院 院長

産婦人科医

1995年宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)卒業。
長崎大学産婦人科に入局後、長崎医療センター、健康保険諫早総合病院、佐世保市立総合病院、田川市立病院、五島中央病院で勤務。
2005年より現病院副院長、2009年より院長を継承。

五島の産婦人科医として女性に寄り添う医療を

ー先生が産婦人科医を目指したきっかけを教えてください

父がもともと五島で産婦人科を開業していて、祖父も叔父も叔母も産科医でしたので、小さな頃からなんとなく医者になろうという気持ちを持っていました。

産科医になれ、と誰かに言われたわけでもなく親の背中を見て育ち、大学進学の時には産科医になろうと決めていました。

実際に勉強や実習をしていた時も、産婦人科が一番おもしろかったですね。同じ女性という立場で、身体のことや気持ちなど分かることも多いですし、お産など自身の経験を活かせる場面もあります。あとは産科の先生はみなさんよくおっしゃると思いますが、命の誕生に立ち会えるというのは喜ばしいことですよね。

医療法人社団 福江産婦人科医院 外観

ーお父様が開業された現在の病院を継いだのはどのような経緯でしょうか

大学卒業後は勤務医としていろいろな病院で働いていましたが、出産を機に父の病院を手伝うようになりました。

小さな子どもを抱えながら仕事を続けるためには家族や周囲の支援が必要でしたし、父も体調を崩してしまい病院を続けられるかどうかという状態だったので、それならば私が帰ってきて継ごうと決意しました。

お産は夜の呼び出しも頻繁にありますが、両親や夫の協力があったからこそ続けられたと感じています。

ただ残念なことに、2024年の12月で分娩を休止することになりました。辞めたくて辞めたわけではなく少子化やスタッフ不足など様々な事情でやむなく休止せざるを得ませんでした。本当は続けたかったんですけどね。

福江産婦人科医院 ビタミンカラーを基調とした温かみのあるロビー

ー先生は3人のお子さんがいらっしゃるそうですね。産科医として働きながら育児と両立されたなんてすごいです

息子が3人います。両親や夫の協力があったことと、子どもたちも大きな病気もせず元気でいてくれたからこそ、なんとか乗り越えられました。子どもたちが小さかった頃のことはもう記憶にありません。とにかくごはんを食べさせていただけですね。

でも充実はしていたと思います。息子たちも親の背中を見て育ってくれたのか、3人のうち2人は医師を目指していて、今ではそれぞれの進路を進んでいて頼もしいかぎりです。

更年期には心と体、両方のサポートが必要

ー更年期で受診される方はどのようなお悩みをお持ちですか

いわゆる典型的な更年期の症状で、ホットフラッシュや眠れない、イライラするなどで受診される方が多いですね。

更年期は、狭い意味ではいわゆるホルモンバランスが崩れて身体や心のトラブルが出てくることですが、広い意味でいうと、ご自身の置かれている状況や環境とのバランスがうまくとれなくなって、それが原因で心身の調子を崩してしまうことだと思います。

40代後半から50代の方は、家庭では多感な年頃のお子さんとの関わり方で悩んだり、パートナーとの関係性が難しくなってきたり、親の介護をしなきゃいけない状況などが重なってきます。その上、お仕事をされている方だと責任のある仕事を任されたり、管理職として部下を指導したりなど…家でも職場でも抱えるものが多くなり体調を崩してしまうんですよね。

最初は典型的な更年期の症状で受診されていても、話をよくよく聞いていくとご家族のことやお仕事のことなど、これまで誰にも相談できなかったことをお話しされる方もいらっしゃいます。

ー更年期の症状はどのような診療や治療が行われるのでしょうか

まずは話を聞くことを心がけています。なにより傾聴が大事だと思っています。

私自身、話を聞くのは好きなので時間が許す限りはお伺いしていますね。

お話しされると「すっきりした」と言っていただける方が多いですね。次に受診された時に「良くなった気がします」とおっしゃる方は、薬が効いているのか話を聞いてもらって良かったのかどちらの効果があったのかはわかりませんが、調子を取り戻されている姿を見るとうれしいですね。

更年期は、その方の人生をひっくるめて心と身体の両方のサポートが大事だと思います。

同じ女性として共感できる、患者さんも話しやすいという点でも、女医でよかったなと思っています。

もちろん、症状の軽減には漢方やホルモン治療などの診断を出すこともあります。お話を聞いたり、症状を診ながらその方にあった治療法を決めています。

ー更年期の症状かなと思ってもこのくらいで受診していいのかな、と迷ってしまうこともあると思うのですが受診の目安はありますか

些細なことでも気になる症状があれば、まずは専門家に気軽に相談に行ってほしいですね。

更年期の動悸だと思って検査をしたら甲状腺の病気が見つかるとか、頭痛の原因が高血圧だったとか、ちょっとした症状に病気が隠れていることもあります。悩んだらまずは受診してみてください。

何科に行けばいいのか迷ったら、まずは婦人科に行ってみるのがいいと思います。子宮がん検診のついでに相談してみるとか別の機会から相談のきっかけをつくっても良いと思いますよ。

婦人科の受診

ー婦人科に行くことに抵抗のある方、恥ずかしさを感じてしまう方もいらっしゃると思いますが、どの年代の方でも行ってもいいのでしょうか

婦人科は敷居が高いですよね。「出産の時以来です」とおっしゃる方も多いですよ。

特に高齢の方ほど婦人科の敷居は高い気がします。勇気を出してきましたとか、病院の入り口を3回素通りしましたとかおっしゃる方もいます。時代の流れなのか、若い子は恥ずかしがらないんです。

風邪をひいたら内科を受診するように、婦人科といっても恥ずかしがらずに気軽に受診してほしいと思っています。

患者さんからのうれしい言葉が私のパワーに

ー先生のやりがいを教えてください

なによりうれしいのは患者さんの元気な顔を見る時ですね。

お産でいえば無事にお産が終わったときや元気な産声を聞いた時です。婦人科の患者さんでいうと初回の受診では症状も重く表情も暗かった方が、2回目、3回目の受診でだんだん表情が明るくなり、「良くなりました」と言っていただいた時ですね。

これは私に限らないとは思いますが、医者は治すことが仕事なので、患者さんに「ありがとう」とか「良くなった」と言ってもらうことがやりがいになっています。

そのうれしい言葉で、私自身も患者さんから元気をもらっています。

ー読者の皆さんにメッセージをお願いします

「婦人科に行こう!」ですね。不調があったり、気になる症状があったりすれば気軽に婦人科に相談してほしいです。

婦人科は少し敷居が高いなと感じられるかと思いますが、恥ずかしがらずに来ていただけたらと思います。行けば何か繋がることがありますよ。

おいしいパンとコーヒーを楽しむ週1回のプチ贅沢

ー先生のリフレッシュ方法を教えてください

「朝活」と呼んでいますが、週に1回、海の見える公園に行って波の音を聞きながら1時間読書をします。自宅から15分くらいで行ける、五島の海と景色がきれいな場所です。

公園の近くにおいしいパン屋さんがあって、パンとコーヒーを買って読書をするんです。週に1回の私の楽しみ、プチ贅沢です。

(取材:2025年1月)


本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。

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