「保健室」のように気軽に相談できる婦人科でありたい【医師 佐藤 いずみ】

患者さん一人ひとりに向き合う診療を志して、東京でクリニックを開業
ー先生が医師、そして産婦人科を選ばれたきっかけは何でしょうか?
医師を志したのは、疾患やそれに伴う症状で悩んでる方のお手伝いをしたい、人の役に立ちたいという思いと、自立した仕事に就きたいという気持ちからです。
医学部に進学し初期研修で様々な科を経験する中で、家族に関わる科に携わりたいという思いがありました。最終的に小児科と産婦人科で迷ったのですが、お産というおめでたい場面に立ち会えることと、手術が好きだったこともあり産婦人科を選びました。
ー昨年(2024年)4月に東京でクリニックを開設されましたが、東北の各地で長くご勤務された後、東京で開業に至った経緯をお聞かせください
大学卒業後は東北地方を中心に関連の大学病院の産婦人科で勤務してきました。大学病院勤務では、様々な患者さまと接する機会があり、また他の先生の診療や治療法を教えてもらい学ぶことも多くありました。
その一方で、医局の方針や病院の体制もあり、ひとりの患者さんと継続的に向き合うことが難しいというもどかしさもありました。
自分の納得いく形で患者さんと向き合いたいと思い、全く新しい環境での開業を決意しました。東京を選んだのは、人口が多く、様々な患者さんとの出会いの中で新しい挑戦ができると思ったからです。
産婦人科医として、患者さん一人ひとりの声に耳を傾け、不調の改善に寄り添えることにやりがいを感じています。

https://mone.or.jp/
ークリニック名(moneレディースクリニック江戸川)の「mone(モネ)」の由来を教えてください
実は「m」と「one」に分かれています。
「m」は“myself”、“muse(ミューズ:ギリシャ神話に登場する女神)”の頭文字をイメージしています。「one」は、“ひとつ”という意味と“モノやヒトの全体を見る”という意味が込められています。
一人ひとり(one)の患者さんの全体を診ていきたいという想いを込めて、クリニックのスタッフと一緒に考えました。
月経や更年期など女性特有のお悩みに寄り添う診療を
ー診療時に心がけていることはありますか
「保健室の先生に相談するように」受診できるクリニックを目指し、気軽に相談に来てもらえる雰囲気づくりを心がけています。
産科を併設しない婦人科専門のクリニックなので、多くの患者さんは、月経痛やPMS、更年期症状、性感染症のご相談などでいらっしゃいます。患者さんの多くが、散々我慢した後で婦人科をやっと受診されるといったように、まだ婦人科を受診することの敷居は高いと感じています。
生理や更年期など、どんな些細なことでも相談してもらえたらと思っています。患者さんのお話に耳を傾け、少しでも気持ちが楽になってもらえるように努めています。
患者さんとのお話を通じて、「もっと早く来ればよかった」という言葉をいただくとクリニックを開設してよかったと感じます。周囲で辛い思いをしている人にも「気軽に行ってみたら」とすすめてほしいなと思っています。

ー更年期症状で受診される患者さんは、どのようなお悩みをお持ちですか
受診のきっかけは、体の不調であったり気分の落ち込み、イライラするといったメンタル面の不調でご相談にいらっしゃいます。心療内科への受診と迷っていたけれど、当院を受診される方もいらっしゃいます。
ー更年期の症状なのか別の要因があるのかの判断はどのようにされるのでしょうか
ホルモン値を測定することもありますが、まずは患者さんの症状や生理の周期について詳しくお話を伺います。生理の周期に乱れやバラつきがないか、生理周期と症状に関連がないかなどを診ていきます。
更年期の診断は難しく、ホルモン値だけで判断できるわけではありません。患者さんのお話を通して、甲状腺の病気や貧血など、他の病気が隠れていないかどうかも注意しながら診療にあたっています。更年期の治療に反応するかどうかも診ながら、ホルモン補充療法や漢方薬などを用いて治療を進めていきます。
更年期の世代は、子育て、ご主人との生活、お子さんの受験、ご家族の介護、責任ある仕事など、様々なことを抱えている方が多くいらっしゃいます。「自分がやらなきゃ」と頑張りすぎてしまう年代でもあります。そのため、疲れなのか更年期症状なのか、精神的なものなのか、ご自身でも分からなくなってしまう方が多いです。私自身もその年代なので、その気持ちがよく分かります。
誰かに話を聞いてもらい、「ああ、こうしたらいいんじゃない」とか「そんなに抱え込まなくていいですよ」と言ってもらえるだけでも、気持ちが楽になり、抱え込んでいたものが解放されるように感じます。患者さんが抱えているものを少しでも一緒に持てるような役割を担えればと思っています。
新天地で地域に根ざしたクリニックを目指して
ー今後の展望についてお聞かせください
地域との繋がりを大切にし、顔の見えるクリニックを目指したいと思っています。小さなクリニックなので設備も整っているわけではなく、全ての悩みをすぐに解決できるわけではありません。それでも「保健室」に来るような気軽さで、まずはお話しに来ていただければと思っています。
私自身も無理なく働き続けられるよう、これから様々なサポート体制を整えていきたいと考えています。

ーこの記事を読んでいる読者の方へメッセージをお願いします
生理の周期やホルモンバランスの乱れなど、何が原因で不調が起こるのか特定できないことがあります。女性の体というのは、心と身体、ホルモン、そして周りの環境など、様々な要因が複雑に絡み合って変化しています。
そのため、不調の原因がはっきりと分からなくても、一人で悩まずに気軽に相談に来ていただけたらと思います。辛い症状が少しでも楽になり、楽しく生活できるようお手伝いさせていただきたいと思っています。

ー最後に佐藤先生の気分転換やリフレッシュ方法を教えてください
お風呂に入ることと、ついいろいろと考え事をしてしまう性格なので、あえて「何もしない時間」を作るようにしています。
あとは片付けや断捨離ですね。「今日はこの引き出しを整理しようかな」というくらいのちょっとした範囲や時間で片付けるだけでも気持ちがスッキリしますよ。
(取材:2025年2月)
本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。