更年期の退職理由を考える…辞めるべきか続けるべきか【お悩み相談室】

更年期の影響で退職を考えている女性からのご相談です。のぼせや倦怠感、集中力の低下で仕事のミスが増え、部下にフォローされることも多くなり、自分に自信が持てなくなっているそう。続けたい気持ちと、セカンドライフを楽しみたい気持ちの間で揺れ動いているとのことです。
退職をどう考えるべきか、また無理せず働き続ける方法について心理士が一緒に考えていきます。
更年期の影響で仕事を続けるか悩んでいます。今まで子ども二人の育児も、私と夫の両親の介護も、もちろん仕事も頑張ってきました。積極的に外部の講習会やセミナーにも参加し知識をつけてきたお陰か、今の会社で初の女性管理職にも就かせていただきました。私としてはもう少し社会に貢献したい気持ちと、更年期症状がひどい中であくせく働くよりもセカンドライフを楽しもうという気持ちで揺れ動いています。
40代後半から、のぼせや倦怠感、集中力の低下がひどくなり、今までは絶対しなかったミスも増えました。職場の部下にフォローしてもらうことも多くなり、ありがたいと思う反面、自分の仕事の抜けを不甲斐なく感じてしまいます。
更年期を理由に辞めるのもがんばってきたプライドが邪魔をしますし、辞めないにしても体調がすぐれない中で醜態を見せてしまわないか心配です。辞めると判断したとしても「今後もうがんばることができないのではないか…」という不安も浮かんでしまいます。
同年代で仕事を頑張っている友人は、更年期症状はあまりないらしく、バリバリ仕事をしていてうらやましいです。私のように更年期症状で退職を考えるのは甘えなのでしょうか。
更年期による退職をどう考えるべきか、また、仕事を続けながら無理をしない働き方のヒントもあれば教えてください。
(50代、女性、ハンドルネーム:ひなた、職種:事務・オフィスワーク)
目次
最初に
育児も介護も仕事も、長年にわたって全力で取り組んでこられたとのこと、本当にお疲れさまでした。ご自身の努力で初の女性管理職という役職にも就かれたこと、その歩みと積み重ねは並大抵のことではなかったと思います。
今、「このまま仕事を続けるか、それともセカンドライフを大切にするか」と揺れているお気持ち、とてもよく伝わってきました。更年期症状のつらさと、それに伴う不安や戸惑い。それでも、「社会にもう少し貢献したい」という思いが心のどこかに残っている——その葛藤は、あなたが誠実に生きてこられた証でもあります。
更年期は個人差がある。仕事との両立の難しさは自然なこと。
1. 更年期と仕事の両立が難しく感じられるのは自然なことです
40代後半から50代にかけて、女性の体は大きく変化します。エストロゲンという女性ホルモンの減少により、のぼせ・倦怠感・睡眠障害・集中力の低下など、さまざまな心身の不調が現れます。これはいわゆる更年期症状と呼ばれるもので、日本産科婦人科学会の調査によれば、50代女性の約8割が何らかの症状を自覚していると報告されています。
こうした症状の中で、以前と同じように働き続けることが難しくなるのは当然のこと。決して「甘え」ではありません。むしろ、長年がんばり続けてきた体と心が、「少し休ませてほしい」とサインを送っているとも受け取れます。
実際、更年期症状が原因でいずれかの雇用劣化(非正規化、降格・昇進辞退、労働時間・業務量減、仕事をやめた)が起きたと感じている方の割合は、40~50代女性の15.3%でした。この数字は、更年期による影響が決して例外的な悩みではないことを示しています。(※NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」)
2. 「辞める」か「続ける」かではなく、「どのように働き続けるか」を考える選択肢も
あなたが抱えている葛藤には、「辞めるならもう社会に戻れないかも」「続けるならつらい体調の中で働き続けなければならない」という“両極端な選択”になってしまっている苦しさがあるように思います。
でも、本当に必要なのは、「働く」か「辞める」かという二択ではなく、「今の私にとって無理のない形で働ける道はあるか」を考えることかもしれません。
例えば、以下のような選択肢はどうでしょうか。
– 勤務時間や勤務日数を見直す(時短勤務や週4勤務など)
– 管理職という責任ある立場から、一時的に業務の範囲を調整する
– フルタイムを続けながら、体調が悪い時は在宅勤務や有給を柔軟に活用する
企業の中でも更年期への理解が少しずつ広がってきており、制度を活用して働き続けている方も増えてきています。
3. 自分のための選択は、「社会に貢献しないこと」にはなりません
「もう少し社会に貢献したい」「でも、体調がつらい」——この2つの思いの間で揺れるのは、それだけ真剣に自分の人生と向き合っているからこそです。
ただ一つ、忘れないでいただきたいのは、「自分の心と体を大切にすることも、社会への貢献の一部」だということです。
たとえば、これまでの経験を生かして、今後は若手のサポートやメンター的な立場で関わる方法もありますし、講師やアドバイザーなど、働き方を変えて関わり続ける道もあります。
何より、ご自身の健康を第一に考えたうえで「続けたい」という思いがあるのなら、それはとても大切なモチベーションです。
4. 同じ年齢でも「症状の重さ」には大きな個人差があります
周囲の同年代の方と比べて「自分だけがつらい」と感じてしまうこと、ありますよね。
でも、更年期症状の現れ方には個人差があります。遺伝や体質、ストレスの状況、生活習慣など、さまざまな要因が絡んでいます。「バリバリ働いている友人は、たまたま症状が軽いタイプだっただけ」と考えていただければと思います。
ご自身のつらさを「誰かと比べて小さく見積もらない」ことがとても大切です。
最後に
これまで積み重ねてこられた努力や経験、そして今、揺れているお気持ち——どちらも大切にしていただきたいと思います。
「これからどう働くか」「どう生きていきたいか」は、誰かと比べるのではなく、「今の自分にとって心地よい形」を基準に選んでよいのです。
もし今すぐに結論が出ないなら、「もう少し考えてみる」という選択も立派な行動です。無理せず、あなたのペースで。
心と体が整うことで、きっとまた自分らしい働き方が見えてくるはずです。
心から応援しています。
<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています
厚生労働省
▶更年期とは:https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/menopause.html
公益社団法人 日本産婦人科学会
▶更年期障害について:https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/
▶NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」結果概要―仕事、家計への影響と支援についてー:https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/collab/nhk-jilpt/docs/20211103-nhk-jilpt.pdf
回答者:株式会社ファミワンに所属する【臨床心理士、がん・生殖医療専門心理士】
生理・PMS・更年期・妊娠・出産・女性特有のがんなど、女性の健康課題やライフイベントに関するご相談を専門にしています。セックスレスや性交痛、パートナーとのコミュニケーションなど、性のお悩みについてもカウンセリングを担当しています。女性特有の心と身体の問題、なかなか人には話せないプライベートなお困りがあれば、是非お気軽にご質問ください。
専門家がこたえます!お悩み募集中です
「知ってハレばれ お悩み相談室」にお悩みをお寄せください。
毎月ピックアップさせていただいたお悩みとその回答を、「知ってハレばれ お悩み相談室」の記事で公開いたします。下記のフォームからお悩みをお寄せください(匿名でお寄せいただけます)。