更年期症状がつらく仕事を辞めたい…退職を考えるあなたへのアドバイス【お悩み相談室】

更年期
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今回は、更年期のホットフラッシュや倦怠感に悩み、仕事を続ける自信が持てないという50代女性からのご相談です。ホルモン補充療法や生活改善も試しているものの効果を感じられず、欠勤が増えて周囲に迷惑をかけていると感じているとのこと。

退職・継続の判断基準や更年期との向き合い方について臨床心理士がお答えします。

30代の頃に転職して今の会社で20年近くフルタイムで経理の仕事をしています。最近、更年期の症状が辛く、急な欠勤でも迷惑がかからないよう会社からのサポートも欲しいと思っていますが、同じ課のメンバーは、男性上司と自分より10歳以上若い人がばかりで、更年期のことを話しづらいです。特にホットフラッシュやのぼせ、倦怠感がひどく、仕事中に集中力が続かずミスも増えています。特に精神面で落ち込んだ日は、休みたくて朝起きられない日が最近は増えてきました。
できれば60歳までは仕事を続けたいのですが、子供は2人とも独立して家を出ているので、経済的には仕事を辞めてもなんとかなりそうなので、思い切って退職するか迷っています
医師に相談してホルモン補充療法を試し始めましたが、すぐには効果が出ず、気持ちも落ち込むばかりです。生活習慣の改善やサプリメントの摂取、軽い運動も取り入れていますが、仕事を続ける自信が持てません。続けるべきか辞めるべきかの判断基準と、続ける場合はどうモチベーションを保っていけばいいかのアドバイスをいただけると嬉しいです。

(50代、女性、ハンドルネーム:迷えるひつじ、職種:事務・オフィスワーク)


最初に

長年にわたりフルタイムでお仕事を続けてこられたこと、本当にお疲れさまでした。子育てをしながら、経理という正確性を求められる職務に真摯に向き合ってこられたご自分を、どうか誇りに思ってください。


さて、更年期症状がつらく、仕事を続けるか辞めるか迷うお気持ち、とても苦しいお気持ちですね。特にホットフラッシュ、倦怠感、集中力低下、気分の落ち込みといった症状は、仕事のパフォーマンスに直結するため、無理を続けることに大きな不安を感じられるのは当然のことです。

仕事を続けるか辞めるかの判断基準とモチベーションの維持方法

1. 続けるか辞めるかの判断基準

更年期による体調の変化が著しい時期には、決断を焦らないことがとても大切です。医師の指導のもとでホルモン補充療法(HRT)を開始されたとのことですが、HRTの効果は個人差はあるものの、数週間から数か月で症状の改善を感じられることが多いとされています(※日本産婦人科医会)。

また、厚生労働省の調査によれば、更年期症状が仕事のパフォーマンスに影響を及ぼしている実態が明らかになっています(※厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果, 2022)。

更に、心理学的に考えると、体調の変化で気分までもが落ち込んでいるさなかに、仕事を続けるか辞めるかの決断を急ぐことはお勧めしません。冷静で客観的に考えることが難しい心理状態で決断しても、後になって「もっとよく吟味すれば良かった」と後悔してしまうかもしれません

したがって、現段階では以下のような視点で考えることをおすすめします。

– まずは治療の効果が出るまで少し様子を見る(2週間〜3カ月程度)

– 体調が落ち着いたときに、改めて仕事をどうするか判断する

– 続ける場合も、フルタイム勤務にこだわらず柔軟な働き方を検討する

「今すぐ白黒つけなくてもいい」というスタンスで、自分に優しくすることが重要です。

2. 続ける場合のモチベーション維持法

もし仕事を続ける選択をされた場合、次のような工夫がモチベーション維持に役立ちます。

(1) 小さな達成感を積み重ねる

体調が優れない日は「ミスを減らせた」「今日も出勤できた」という小さな成功に目を向け、自分をねぎらうことが大切です。

(2) 同僚との適度な距離感を保つ

年齢差や性別の違いから、同じ課のメンバーに更年期の話をしづらいのは当然です。無理に理解を求めず、「あくまで自分の体調管理が最優先」と割り切ることでストレスが減ります

(3) 社内リソースを活用する

産業医や人事部に相談できる場合は、体調配慮のための制度(時短勤務、フレックス、在宅勤務など)を活用できないか検討してみましょう。最近では女性の健康支援を打ち出している企業も増えています。

(4) 仕事以外の楽しみを育てる

趣味やリラクゼーション、ボランティアなど、仕事以外で充実感を得られる場を持つと、「仕事がすべて」という感覚から解放され、気持ちが楽になります。

最後に

更年期は心身ともに大きな変化の時期です。ですが、これは決して「衰え」だけではなく、「これからの人生をどう生きるか」を見直すチャンスでもあります。

今は少し苦しいかもしれませんが、治療を続けながら体調を整え、自分に合った働き方を模索していくなかで、きっと新しい可能性が見えてくるはずです。

無理をしないでください。そして、ご自身の健康と幸せを最優先に考えることを、どうか恐れないでください。

心から応援しています。

<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています

厚生労働省
▶『更年期症状・障害に関する意識調査 基本集計結果』(2022):https://www.mhlw.go.jp/content/000969166.pdf

公益社団法人 日本産婦人科医会
▶ホルモン補充療法はどのくらい続けたらいいですか?:https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/kounenki10/

<本記事の回答者>

戸田さやか

公認心理師/臨床心理士/生殖心理カウンセラー/がん・生殖医療専門心理士/ブリーフセラピストシニア

所属:株式会社ファミワン

「妊活や性の悩み、子育てや働き方のことまで、「誰に相談していいかわからない」テーマも歓迎しています。どんな内容でも大丈夫。安心してご相談ください。臨床心理学の確かな知識と技術を活かし、原因探しや悪者探しではなく、あなたにとってのゴールを発見するお手伝いをさせてください。」


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