HRT療法って実際どう?始める前に知っておきたいこと【お悩み相談室】

閉経後に発汗や不眠、イライラなどの症状が悪化し、サプリメントでの改善を実感できなかったことで、HRT(ホルモン補充療法)に興味を持ち始めたという60代女性の方からのご相談です。
副作用や治療期間など、始める前に知っておきたいポイントについて、看護師がお答えします。
閉経後に発汗や不眠症状がひどくなり、意識し始めてからはさらにイライラの症状も加速していっていると感じるようになりました。
婦人科を受診し、更年期の症状と言う診断を受け、医師からは効果があるといわれているサプリメント(栄養補助食品で有名なエクオール)を進められ1年弱続けましたが、改善されていると大きく感じなかったため、次の治療方法としてHRT療法を考えています。周りの友人でもHRT療法をしている友人はまだ少ないのですが、薬も近年、天然型のものなど選択肢も多いと聞いています。
始めるにあたっての注意点(副作用)や知っておいた方が良いこと、どれ位の期間の服用が目安なのかなど、教えていただきたいです。
(60代、女性、ハンドルネーム:おるろう、職種:営業)
最初に
更年期の症状として、発汗や不眠、そしてイライラといったつらい変化が続いていらっしゃるのですね。しかも、それが閉経後に強くなったとのことで、日常生活の中でご自身の心と身体の変化に振り回されるような思いをされているのではないでしょうか。
「いつまで続くのか」「これが自分らしさなのか」と、不安や戸惑いが募っていることと思います。
「次の一歩を踏み出すとしたら?」と前向きに考えておられること、本当にすばらしいことだと思います。
そして、HRT(ホルモン補充療法)に興味を持ちつつも、「安全性は?」「副作用は?」「どれくらい続けるもの?」といった疑問や不安が出てくるのも当然のことです。身体に直接関わることだからこそ、きちんと納得したうえで進みたい、というお気持ちはとても大切です。
自分に合う”ホルモン補充療法”を見つけるための準備とは
さて、HRTを考えるときには、「症状の軽減」と「生活の質」をどう整えていくか、という視点が大切になってきます。
発汗や不眠といった身体的な症状だけでなく、イライラや気分の浮き沈みといった心の揺れにもアプローチできるのがHRTの特徴です。
ただし、すべての方にとって万能というわけではなく、向き不向きがありますので、「自分に合うかどうか」を見極めながら使うことが肝心です。たとえば、「天然型」と呼ばれるホルモン剤が気になっているとのことですが、実際にはホルモンの種類や投与方法(飲み薬、貼り薬、ジェル、腟剤など)によって効果の出方や副作用の出やすさも異なります。
ですので、「どんな症状が一番つらいのか」「HRTに何を期待したいのか」「体質的にどんなリスクがあるのか」を整理して、婦人科で相談することで、より納得のいく選択ができるのではないでしょうか。
また、HRTは始めたら一生続けるというものではありません。ライフステージや体調の変化に合わせて「いつまで続けるか」も柔軟に考えていくものです。ですから、「合うかどうか」「やってみてどうだったか」「試してみてから考える」といった、ふり返る機会を持つことも大事になってきますね。
HRTの仕組みと副作用、服用期間の目安とは
HRTは、更年期症状の根本にある「女性ホルモンの急激な低下」に対して、少量のホルモンを補うことで症状を和らげる治療です。
閉経前後にエストロゲンの分泌が急に減ることで、自律神経のバランスが乱れ、ホットフラッシュや不眠、気分の変調などが起きやすくなります。HRTはこれらの症状に対して一定の効果があるとされています。
使用されるホルモンには、エストロゲン単独、または黄体ホルモン(プロゲステロン)との併用の2つのパターンがあります。子宮がある場合には、エストロゲンだけだと子宮内膜増殖症やがんのリスクが上がるため、プロゲステロンを併用するのが原則です。
副作用としては、乳房の張り、不正出血、軽度の吐き気、むくみなどが一時的に見られることがあります。ただし、これらは多くの場合、数週間〜数か月で落ち着くことが多いです。ごくまれではありますが、乳がんや血栓症などのリスクが報告されており、特に長期間使用する際には定期的な乳腺検査や血栓リスクのチェックが必要です。
服用の目安期間は一般的には「5年以内」とされることが多いですが、症状や体調によって個別に判断されます。
最近ではより自然に近い「天然型エストロゲン(例:エストラジオール)」や「経皮吸収型(貼り薬やジェル)」を使うことで、肝臓への負担や血栓リスクを軽減できるといった選択肢も増えています。
最後に
「つらい今の状態から抜け出したい」と感じている今、HRTは選択肢の一つとして検討に値します。
ただし、一度試したからといって全てが完璧に整うわけではないことも事実です。試行錯誤しながら、ご自身の身体に耳を傾け、納得できる治療を選んでいけるといいですね。
<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています
公益社団法人 日本産科婦人科学会
▶ホルモン補充療法(HRT)の実際:https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/HRT201603.pdf
一般社団法人 日本女性医学学会
▶HRTガイドブック:https://www.jmwh.jp/n-hrt_book.html
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