そのイライラや落ち込みは「更年期」のせいかも 漢方で身体のバランスを整えるサポートを【医師 芹澤 敬子】

更年期
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東洋医学の視点を取り入れあなたの不調にしっかり耳を傾けます
すみれが丘そよかぜクリニック 院長 芹澤 敬子

芹澤 敬子

すみれが丘そよかぜクリニック 院長

漢方外来・内科 担当

富山医科薬科大学(現・富山大学)医学部医学科卒業。その後、国立病院機構静岡医療センター内科、東邦大学医療センター大森病院東洋医学科、神奈川県立がんセンター東洋医学科などで経験を積む。2019年11月、神奈川県横浜市に位置する「すみれが丘そよかぜクリニック」の院長就任。患者一人ひとりの気持ちに寄り添い、希望に沿った診療を提供。

開業医だった父の背中を見て医師の道へ、自身の体調不良をきっかけに漢方の知識を深める 

医師を目指したきっかけを教えてください

医師を目指したきっかけは、病院を開業していた父の影響が大きかったと思います。

幼いころから医療が日常の一部にあり、入院患者さんがいる病院という環境の中で育ちました。夜中に患者さんの病状が急変すると、父がすぐに対応にあたる姿を何度も目にし、その背中を見ながら「自分もこんな医師になりたい」と自然に思うようになりました。当時の父の姿は、今でも理想の医師像として大切に残っています。

漢方との出会いも、父の影響によるところが大きいです。もともと父が日常的に診療で漢方を取り入れていたこともあり、私にとって漢方は比較的身近な存在でした。体調を崩したときには、一般的な薬と併用して葛根湯を飲むこともあり、漢方には親しみを感じていました。

ただ、はじめから漢方を専門的に学ぼうと思っていたわけではなく、本格的に関心を持つようになったのは、大学に入ってからのことです。

漢方や東洋医学に携わるようになったのはどのようなきっかけや経緯がありますか

本格的に漢方を学び始めたきっかけは、自分自身の体調不良でした。眠れない、強い疲労感からすぐに横になりたくなるような状態が続いていたにも関わらず、検査をしても明確な病名はつかず、「これは何の症状なのだろう」「どうすればよくなるのだろう」と不安な毎日を過ごしていました。原因がわからない不調が続くことは、想像以上につらいものだと、身をもって感じた経験でした。

西洋医学的な視点で病名がつかないのであれば、「この症状は漢方でどう捉えるのだろう」「漢方の視点で理解したい」と強く感じるようになり、改めて学び直すことを決意しました。学びを進めるうちにその奥深さに魅了され、今では日々の診療にも積極的に取り入れています。

実は学生時代にも、漢方に触れる機会はありました。私が在籍していた富山医科薬科大学(現・富山大学)では、漢方に特化した講義を受けることができました。当時は、漢方をしっかり学べる医学部は少なかったのですが、そうした環境に恵まれていたのは大きかったと思います。ただその頃は、熱心に講義を受けてはいたものの、本格的に体系立てて学ぶまでには至らず、知識として理解しているという程度でした。

医師としての経験を積む中で、自らの不調を通じて漢方の必要性を実感し、改めて深く学び始めたという経緯です。

現在は「すみれが丘そよかぜクリニック」の院長に就任されています。もともとは女性専用のクリニックだったと伺いましたがクリニックについて教えてください

当院はもともと、「すみれが丘女性医療クリニック」という女性専門のクリニックでしたが、2016年2月に「すみれが丘そよかぜクリニック」として地域のかかりつけ医となるべく、新たなスタートを切りました。

今では、内科・漢方内科・皮膚科・形成外科・美容皮膚科・婦人科・心療内科を掲げ、各科と連携しながら、年齢や性別に関わらず、からだの内外をトータルケアできるクリニックです。困った時はここに行けば大丈夫と思っていただけるような、地域のかかりつけ院でありたいと思っています。

すみれが丘そよかぜクリニック
https://www.soyokaze-clinic.jp/

患者さんの生活に合った無理なく続けられる治療法をご提案

診療の際に心がけていることはありますか?

治療を押しつけるのではなく、ご本人の生活スタイルや価値観に合った形で取り入れていただけるよう、柔軟にご提案するよう心がけています。患者さんの生活に応じて、ご本人が取り入れやすい形で治療を進めることが、症状の改善にもつながりやすいと考えます。

受診される皆さん一人一人がより良い人生を送るためのサポーターでありたいと思っています。

診断において漢方や東洋医学ならではの視点はありますか?

患者さんが感じている不調を丁寧に汲み取ることを大切にしています。一般的には、検査結果に異常がなければ「問題なし」とされることもありますが、私は患者さんの自覚症状にしっかりと耳を傾け、原因が明確でない不調にも対応していきます。

診察では、脈や舌といった東洋医学独自の所見も重視しています。そうした身体のサインを総合的に捉えながら、患者さんの感じている違和感や不調と照らし合わせて診断・処方を行います。必ずしも目に見える症状や検査値に異常が出るとは限らない中で、そうした微妙な変化にも対応できる点が、東洋医学ならではの視点だと感じています。

更年期の心の不調は、身体のバランスを整えて改善

更年期症状でお悩みの患者さんも多いと伺いました。40〜60代の女性特有の体調の悩みや傾向はありますか?

更年期の時期にあたる40〜60代の女性では、さまざまな体調の変化を訴える方が多くいらっしゃいます。たとえば、イライラしやすくなる、気分が落ち込みやすくなるといった「気持ちの不調」を感じて受診される方も多いですね。ご自身では「これは心療内科に相談すべきなのか」と迷われるケースもありますが、漢方の視点からみると、こうした感情面の変化も体の状態と深く関わっていることが多くあります。

そのため、心の不調に見える症状でも、身体のバランスを整えることで改善が期待できる場合があり、そういったときには漢方を積極的にご提案しています。

また、ホットフラッシュ(突然暑くなることや発汗)、関節の痛み、むくみなど、典型的な更年期症状もよく見られます。こうした症状は人によって現れ方が異なるため、丁寧にお話をうかがいながら、その方に合った対応を心がけています。

たとえばホットフラッシュのような症状の改善はどのようにされていますか

「ホットフラッシュ」や「ほてり」の症状は、一見同じに見えても、その背景は人によって異なります。たとえば、実際には下半身が冷えているのに上半身が暑く感じる方もいれば、全体的な冷えはなく、単純に「暑い」とおっしゃる方もいます。そうした体の状態を丁寧に見極めることが大切です。

加齢に伴って体内の潤い(水分)が減少していくことがありますが、東洋医学ではそれを「熱」の症状として現れることもあるととらえています。

ですので、まずは体を潤す方向で、体質に合った漢方薬を検討します。その際には、その方の消化機能や体力なども考慮し、無理のない範囲で、比較的マイルドな処方から始め、必要に応じて段階的に薬の強さを調整していきます。

更年期症状の場合は、体質そのものを整えていくような少し長期的な視点での治療が必要です。症状の出方やご本人の生活スタイルに合わせて、じっくりと体を整えていくことが東洋医学ならではのアプローチだと考えています。

やりがいを感じる時はどのような時ですか?

そうですね。やはり患者さんの症状が改善されて元気になっていく姿を見るとうれしいですね。

患者さんは皆さん、それぞれに悩みや不調を抱えていらっしゃって、そのつらさに軽い・重いはありません。ただその中でも、日常生活を送ることすら難しいほどに不調を抱えていた方が、「最近は好きなことができるようになりました」とか、「帰ってすぐ横になっていたのが、そういうことがなくなってきました」とお話されるようになるとよかったなとうれしく思います。

診察を通して、顔色や表情が明るくなってきたり、脈や舌の状態が良くなってきたりすると、「あ、元気になってきているな」と感じられるんですね。そういった変化を実感できたときに、この仕事のやりがいを感じます。

「このくらいの不調は大丈夫」と我慢せず、ぜひご相談を

今、更年期に悩まれている方や、これから更年期を迎える方々に向けてメッセージをお願いします

心配なことがあればいつでも気軽にご相談いただきたいですね。

年齢を重ねる中で、体調の変化を感じる方は多くいらっしゃいます。40歳くらいになると「これって更年期なんでしょうか?」といったご相談をいただくこともよくあります。もちろん更年期に関係している場合もありますが、そうではないケースも多くあります。体の不調には、長い時間をかけて少しずつ現れてきたものも含まれているんですね。

「これくらいの不調なら大丈夫かな」と我慢せず、気になることがあれば、ぜひ気軽にご相談いただければと思います。お話を伺いながら、その方に合ったアプローチを一緒に考えていけたら嬉しいです。

トレッキングでリフレッシュ

リフレッシュ方法を教えてください

もともと体を動かすのが好きなので、ヨガをしたり、ここ数年はトレッキングにも出かけるようになりました。近隣の山に足を運んで、自然の中で良い空気を吸うと、とてもリフレッシュできます。

(取材:2025年4月)


本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。

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