職場で強く当たってしまう…更年期のイライラ対策に薬に頼るべき?【お悩み相談室】

今回は、「最近イライラが強くなり、職場や周囲の人にきつい言葉をぶつけてしまう」と悩む40代女性からのご相談です。もともとは大人しい性格だったのに、感情のコントロールが難しくなり、自分自身に戸惑っているとのこと。
更年期に伴うホルモン変化と心の不調の関係、日常でできる工夫、医療でのサポートについて助産師がアドバイスします。
最近、イライラが抑えられず、職場や周囲の人たちにきつい言葉をぶつけてしまうことが増えました。特に、仕事を怠けたり嘘をつく人には強く当たってしまいます。その様子を見ていた同僚から「最近どうしちゃったの?」と言われることも多く、自分でも言い過ぎたと後悔して家で涙が出ることもあります。もともとは大人しく自己主張もできない性格だったのに、今では逆に自分が怖いと感じるほどです。
更年期の影響かもしれないと思うのですが、薬に頼るべきか悩んでいます。
どう乗り越えたらいいのでしょうか。自分の変化に自分でもついていけず不安でいっぱいです。
(40代、女性、ハンドルネーム:かしわもち、職種:医療・介護・福祉)
目次
最初に
ご質問ありがとうございます。
ご自身でもコントロールできないほどイライラが強くなり、職場や周囲の人にきつい言葉をぶつけてしまうことがあるのですね。
特に仕事を怠けていたり、嘘をつくような態度を目にすると、抑えられない怒りがこみ上げてきて強く当たってしまう。
そしてその後は後悔して涙が出たり、怖ささえ感じてしまう。
これまで大人しく自己主張もあまりしなかった性格からのあまりの変化に、ご自身がついていけず、不安でいっぱいなのだと感じました。
周りから「最近どうしちゃったの?」と心配されるくらい、周囲も変化に気づいているのですね。
その言葉を受けてまた落ち込んでしまったり、悪循環になっているお気持ちも伝わってきます。
ご自身の変化を客観的にとらえながらも、「更年期の影響かもしれない」と冷静に考えようとしている姿勢はとても大切で、
真剣に向き合おうとしているからこそ、こうしてご相談してくださったのだと思います。
イライラや涙もろさは性格ではなく“更年期のサイン”
まずは「自分がコントロールできないのでは」という恐怖を和らげるために、気持ちの変化が体のホルモンバランスと関わっている可能性を理解できると、少し安心できるかもしれません。
更年期の時期は、エストロゲンという女性ホルモンが急激に減少することで、心の揺れやイライラ、不安感、涙もろさなどが出やすくなることが知られています。
決して「性格が変わった」わけではなく、身体の変化に伴う一時的な状態かもしれません。
日常のリズムを整えることがイライラを和らげる一歩
「どう乗り越えるか」という点では、まずは日常の中で心身のリズムを整えることが役立つことがあります。
普段の睡眠や食事、軽い運動などを意識的に整えることだけでも、感情の波が少し落ち着くことがあるんです。
また、自分一人で抱え込まず「最近イライラが強くて」と身近な人に打ち明けておくことも、周囲も理解をもって接しやすくなるかもしれませんね。
さらに、強い怒りや涙が続き、生活や仕事に影響が出ている場合には、婦人科や心療内科で相談してみることも一つの道です。
「薬に頼るべきか」と悩まれているとのことですが、必ずしも薬が第一選択ではありません。
体調や症状に合わせて、生活改善やカウンセリングなども含めて複数の選択肢があることを知れると安心できるのではないでしょうか。
更年期に起こる心と体の代表的な不調とは
更年期障害は、閉経の前後5年ほど(一般的に45〜55歳前後)にみられる心身の不調の総称です。
原因はエストロゲン分泌の急激な減少で、血管運動神経症状(ほてり、発汗、動悸)、精神神経症状(イライラ、不安、抑うつ気分)、体の不調(頭痛、肩こり、めまい、不眠など)が組み合わさって現れます(※)。
更年期に選べる治療法
治療の選択肢としては、以下のようなものがあります。
- ホルモン補充療法(HRT):
不足するエストロゲンを補うことで、心身の症状を和らげる効果があります。
特に血管運動神経症状や精神症状に有効とされます。 - 漢方薬:
体質や症状に応じて処方され、イライラや気分の波に用いられることがあります。 - 抗不安薬や抗うつ薬:
不安や抑うつが強く、生活に支障をきたす場合に医師が必要と判断した際に使われます。
ただし薬を使うかどうかは、症状の強さや生活への影響、持病の有無などを考慮して医師と一緒に判断します。
必ずしも「薬に頼るしかない」というものではなく、生活習慣の改善や心理的サポートで十分に落ち着く方も多くいます。
最後に
「自分でもコントロールできないような感情の揺らぎ」と感じられている場合、それは更年期の一時的な変化かもしれません。
そして必要に応じて専門的なサポートを受けることで、「これなら自分を責めずに乗り越えられそうだ」と感じられるようになることも十分に可能です。
どうぞご自身の心と体の声を、大切に受け止めながら、少しずつできることを積み重ねていってみてくださいね。
<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています
公益社団法人 日本産婦人科学会
▶更年期障害について:https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/
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