更年期症状で心が沈み、「死にたい」とつぶやく自分が怖いです【お悩み相談室】

更年期
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今回は、更年期に差しかかり心の不調に悩む50代女性からのご相談です。疲れや物忘れを責めたり、ふと「死にたい」とつぶやいてしまうほど沈んだ気持ちを抱えておられます。

更年期のメンタル不調と向き合う考え方や、心を守るための工夫について、臨床心理士がアドバイスします。

最近、心の調子がとても悪く、もしかすると更年期の影響かもしれないと感じています。

・すぐ疲れたり物忘れしたりする自分を責めてしまう
・少しでも嫌な相手を強く敵視してしまう
「死にたい」がふと独り言で出る
・未来に希望が持てず、常に悲観的

といった状態です。

身体にも不調はありますが、特に心が沈んで抜け出せません。涙も出ず、ただ重く沈んでいる感じです。
同じような更年期のメンタル不調を経験した方が乗り越えた方法や考え方など、ぜひ教えてください。

(50代、女性、ハンドルネーム:みきこ、職種:医療・介護・福祉)


最初に

「疲れるのも、忘れるのも、自分のせい」

「些細なことで嫌いになる私は心が狭い」

「ふと『死にたい』って思う私は壊れてるんじゃないか」


そんなふうに、自分を責めて、責めて、さらに責めて、涙も出ない。
誰かに話す元気もない。

でも、その“重さ”は、あなたがここまで生きてきた年月の証です。


もしかしたら、子育てもひと段落して、「そろそろ自分の人生を…」と思っていた矢先
そんなタイミングでやってくるのが、心と体の両方にボディーブローをかましてくる更年期というやつです。



毎日の生活はなんとかこなしている。
でも、ふとしたときに「この先、何が楽しみなんだっけ?」と空虚になる。
朝起きても、やらなきゃいけないことはあるのに、体も心も動かない。
そんな自分を「さぼってる」と責めてしまう…。


いいえ、あなたはさぼってなんかいません。
むしろ、燃料切れでガス欠の中、今日もここにいることがどれだけすごいことか


誰にも言えない気持ちを、こうして言葉にできたこと。
それだけでもう、すごいことです。

「死にたい」と思うのは“生きたいのに苦しい”サイン

ご相談の中で、いちばん気になった言葉は「死にたいが独り言で出る」という部分です。

これ、本当に多くの方が経験しています

更年期に限らず、絶望が慢性的になると、人は“死”を“逃げ場”として脳内で扱い始めることがあります。

でも、それは「死にたいから」ではなく、「このままの状態でいたくない」から。

つまり、「生きたいのに、生きるのが苦しい」という状態なのです。



この状況で「前向きにならなきゃ」と思うのは、実は逆効果です。
まずは「この沈み込みには理由がある」と理解することから始めましょう



あなたは、「元気だった頃の自分」に戻りたいのかもしれません。
でも、それよりも大事なのは、「今の自分に合った生き方」にチューニングすることです。

・疲れやすいなら、頑張る時間と回復する時間の“帳尻”を合わせる

・物忘れには、“覚えていない前提”でメモと付箋を味方にする

敵視してしまう相手とは、そもそも物理的距離をとってみる


今の自分を“取扱説明書”にして、人生を再設計していくような考え方ができると、少しラクになるかもしれません

医療や専門家を味方につけて心と体を守る

更年期には、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な低下により、脳のセロトニンやドーパミンの働きが影響を受けるのではないかと言われています。

そのため、うつ状態や情緒不安定、不眠、意欲低下などの症状が出ることがあります(※)。


まずおすすめしたいのは、婦人科を受診して「更年期の心の不調かもしれない」と伝えることです。

HRT(ホルモン補充療法)や漢方、抗不安薬や抗うつ薬を使って心身の症状を和らげる選択肢もあります。

加えて、臨床心理士やカウンセラーによるサポートも有効です。

「ちょっとだけまし」と思える瞬間の積み重ねを

そして、何よりも大事なのは、「このままの私でも、生きていていい」と思える時間を、ほんの数分でも持つこと


コーヒーをいれる時間でも、テレビで動物番組を見る時間でもいいんです。

心が「ちょっとだけまし」と思える瞬間の積み重ねが、人生を支える根っこになることがあります。

最後に

あなたのペースで、ゆっくりと、

更年期の自分との付き合い方を探していってくださいね。

<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています

日大医学雑誌(日本大学医学会)
▶「更年期障害」著:前林亜紀(2021):https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/80/4/80_177/_article/-char/ja


<本記事の回答者>

戸田さやか

公認心理師/臨床心理士/生殖心理カウンセラー/がん・生殖医療専門心理士/ブリーフセラピストシニア

所属:株式会社ファミワン

「妊活や性の悩み、子育てや働き方のことまで、「誰に相談していいかわからない」テーマも歓迎しています。どんな内容でも大丈夫。安心してご相談ください。臨床心理学の確かな知識と技術を活かし、原因探しや悪者探しではなく、あなたにとってのゴールを発見するお手伝いをさせてください。」


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