運転中にイライラが止まらない…これって男性更年期?【お悩み相談室】
運転中にちょっとしたことでイライラしてしまうという50代男性からのご相談です。
家族に「イライラ噴射やめて」と注意され、自分でも「昔より短気になった」と感じているとのこと。
今回は、男性更年期(LOH症候群)と怒りっぽさの関係、そして“上手に付き合うための心と体の整え方”について臨床心理士がアドバイスします。
最近、運転中にやたらイライラする。ちょっと割り込まれただけでムカッときたり、信号待ちでもやたらせっかちになったり。昔はもう少し余裕があった気がするんだけど、最近ほんとに短気になった。これって男性の更年期障害だったりしますか?
年齢的にも58といい歳だししょうがないことなのかと思いつつ、ネットで「男性 更年期」って調べたら、しんどそうなことがたくさん書いてあってこれからもっとひどくなるのかと正直ちょっとビビってます。
今のところ、軽く運動したりサプリ飲んだりはしてるけど、正直あんまり効果は感じず。
うまく付き合っていくしかないのかなと思うが、娘や妻から「運転中にイライラ噴射するのやめて」と言われてるので、何かいい方法があれば教えて欲しいです。
(50代、男性、ハンドルネーム:ねこおやじ、職種:営業)
目次
最初に
「割り込まれただけでムカッ」「信号待ちでもせっかちになる」
いやぁ、それ、あるあるです。
50代の男性で「昔より怒りっぽくなった」とおっしゃる方は本当にとても多いですよ。
それにしても、「娘や妻に“イライラ噴射やめて”と注意された」という表現、思わず笑ってしまいました。
同時に、娘さんもパートナーさんも、あなたの様子を気にかけておられるのだなと思いました。
きっと、あなたの様子について、母子で何度か話したのでしょうね。
そのなかでお父さんのイライラを深刻な問題にし過ぎないように、「イライラ噴射」という表現が生まれたのではないでしょうか。
あなたを傷つけないように、だけど自分たちもどう接したら良いかわからない困りを、優しく伝えようとした一言だったのだろうと思いました。
素敵なご家族ですね。
「昔より短気」自分が変わった——その違和感の正体
あなたのなかには、「最近、自分でも制御しにくい」と感じている戸惑いがあるのですね。
仕事でも家庭でも責任を担ってきて、今も現役で頑張っている。
そのぶん、心と体がオーバーヒート気味になっているのかもしれません。
そして、ここがポイントです。
「昔はもっと穏やかだった」「今は何か違う」——その違和感は、心の問題というより、体の中のホルモン(テストステロン)が少しずつ減ってきた影響である可能性があります。
男性の更年期、つまりLOH症候群の典型的なサインのひとつが“イライラしやすさ”なのです。
50代は心と体のアップデート期。イライラもそのサイン
男性ホルモン(テストステロン)は、判断力・記憶力・理解力といった認知機能や、活力を高める働きがあります。
これが減ってくると、ちょっとした刺激でもカッとなりやすくなります。
でも、このような変化は、これからの未来のための「調整期」として必要なものです。
人間、50代は、ちょうどホルモン・体力・ストレス・役割の変化が重なる時期なんです。
まさに人生の交差点。
そこでクラクションを鳴らしたくなるのは、ある意味、自然な反応なのです。
「怒りゼロ」よりも「怒りを運転できる自分」へ
では、どうしたら過ごしやすくなるか?
ポイントは「怒りを消す」ではなく、「怒りを持ちながら安全運転できる状態をつくる」ことです。
具体的には、
①体の状態を知る(泌尿器科・男性更年期外来でホルモン値をチェック)
②日常で“リセットの瞬間”をつくる(深呼吸・ストレッチ・仮眠・軽運動)
③「イライラしてる自分を実況中継」してみる(例:「今、俺めっちゃ怒ってるな」)
③は冗談のようですが、効果があります。
怒りは無意識に燃え上がる感情なので、言語化すると“火力”が下がるんです。
運転中に「俺、今、割り込みにイラッとしてる。うん、でも車間距離は保ってる。えらいぞ俺」と、脳内実況をしてみてください。
生活リズムを整えることで穏やかさを取り戻す
男性更年期によるイライラや焦りは、ホルモンの減少だけでなく、長年のストレス蓄積、睡眠不足、運動不足、栄養バランスの崩れなどが関係します。
つまり、「ホルモンのせい」と「生活習慣のせい」がタッグを組んでいる状態。
体のケアとしては、
・睡眠を十分にとる
・筋トレやウォーキングなど、軽い運動を継続する
・肉・魚・卵・ナッツなど、亜鉛とタンパク質を意識して摂る
・アルコールの摂りすぎを控える(眠りの質を下げ、ホルモン生成を妨げる)
サプリメントも悪くありませんが、根本的には「生活全体のリズムを整える」ほうがお勧めです。
なぜなら、更年期はこれからの未来の生活習慣を作っていく、準備期間だからです。
もし症状が続くようなら、泌尿器科でホルモン検査を受けてみてください。
治療法やカウンセリングも含めて、選択肢はいろいろあります。
最後に
「しょうがない歳だから」とあきらめる必要はまったくありません。
イライラも焦りも、人生の節目に訪れる自然なアップデートです。
うまくハンドルを握りながら、また快適なドライブに戻る日がきっと来ます。
次に信号で止まったら、深呼吸を一回。
窓の外の空を見て、「まぁ、今日も生きてるし、よしとするか」。
そんなゆるい一言が、何よりの特効薬かもしれません。
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