生理中の下痢がつらい…薬や対策はどうすべき?【お悩み相談室】

生理・PMS
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今回は生理中の下痢に悩まれている20代女性からのお悩みです。 食事に気をつけても症状が改善せず、仕事や通勤にも影響が出てしまうそうです。

生理中の下痢について、またより良い付き合い方について薬剤師がお答えします。

生理が始まってからずっと悩んでいることがあります。生理中の下痢です。PMSが終わったと思ったら生理が来て下痢と戦っています。自分でも食事に気をつけて脂っぽいものや甘いものを食べないようにしています。どんなに気をつけても下痢になります。生理になると生理痛にも悩まされるので鎮痛剤と下痢止めどちらを優先して薬を飲むかも毎回の悩みです…。本当は薬を飲まないほうがいいと思うんですけど、仕事にも集中できないし、通勤中にもお手洗いに行きたくなることが多いので薬に頼るばかりです。生理中の下痢がなくなることが一番ですが、何か対策はありますか?ゼロが難しければよい付き合い方を教えていただきたいです。

(20代、女性、ハンドルネーム:トマト鍋、職種:事務・オフィスワーク)


生理中の下痢は女性ホルモンによるもの

生理中の下痢に長年悩まされているとのこと、とても辛いですね。PMSが終わったと思ったら今度は下痢に苦しめられるという状況では、気持ちも落ち込んでしまうのではないでしょうか。通勤中や仕事中にトイレが気になり集中できないのも、大きなストレスになるのではないでしょうか。

生理痛と下痢の両方が重なるとどの薬を優先するべきかも迷うと思います。現在のように日常生活に支障をきたすほどであれば、適切な薬を服用しながら、少しでも快適に過ごせる方法を見つけていくことが大切です。

生理中の下痢の主な原因は「プロスタグランジン」という物質の影響です。プロスタグランジンは子宮を収縮させて経血を排出する働きを持っていますが、同時に腸の動きを活発にする作用もあるため、結果として生理中の下痢を引き起こすことにつながる場合があります

また、生理前に分泌が増える「黄体ホルモン(プロゲステロン)」には腸の動きを抑える作用があるため一般的に生理前は便秘気味になる方が多いといわれますが、生理が始まるとホルモンバランスが急変し、一気に腸が活発になることで下痢になりやすいのです。

その他冷えやストレス、食事の影響も関与している可能性がありますが、脂っこいものや甘いものを控えても改善しないということは、やはりホルモンの影響が大きいと考えられます。

鎮痛剤を第一選択にし下痢止めは補助的に使用する

生理痛もある中で鎮痛剤と下痢止めのどちらを優先するかというご相談ですが、結論から言うと、鎮痛剤を優先することが良いと考えます。

イブプロフェンやロキソプロフェンなど非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる鎮痛薬は、プロスタグランジンの生成を抑える作用があるため、生理痛の軽減だけでなく腸の過剰な動きを抑える効果も期待できます。したがってまず鎮痛剤を服用し、それでも下痢がひどい場合に下痢止めを補助的に使うという順番が望ましいでしょう。

下痢止めの成分である「ロペラミド(市販薬にも含まれています)」は、腸の動きを抑えて下痢を改善しますが、プロスタグランジンの影響が強いと十分な効果が得られないこともあります。さらに、過剰に使用すると腸の動きが鈍くなり次の便が出にくくなる可能性もあるため、必要最小限の使用にとどめることが大切です。

もし、下痢による腹痛が強い場合には芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)漢方薬も選択肢の一つになります。この漢方薬には腸の痙攣を抑える作用があり、腹痛と下痢の両方にアプローチできるため、生理中の症状を和らげる助けになるかもしれません。

また生理中の下痢が毎回続く場合、低用量ピルの使用を検討するのも一つの方法です。ピルの服用中はホルモンバランスが安定すること、また子宮内膜増殖が抑制されるためプロスタグランジンの過剰な分泌を抑えられることで、生理痛や生理に伴う下痢の軽減が期待できます

ピルにはいくつか種類があり、ご自身の体質に合ったものを医師と相談しながら選ぶことが重要です。ただし、妊活中の方はピルの服用により排卵が抑制されるため、また持病がある方は健康状態によって使用が制限される可能性があるため、まずはご自身がピルを使用可能かどうか医師に相談してみるとよいですね。

腸内環境を整えることも長期的な対策の一つになります。生理前後の腸の動きの変化を和らげるために、乳酸菌やビフィズス菌を含むサプリメントや発酵食品を日頃から摂取し腸内細菌のバランスを整えることで腸内環境が安定すると、ホルモンの影響を受けにくくなり生理中の下痢の程度が軽くなる可能性があります。

また、身体を冷やさないことも大切です。特に生理中は血流が悪くなりやすいため、腹巻や温かい飲み物を取り入れることで、腸の過剰な動きを抑えられるかもしれません。

症状がつらいときは婦人科を受診して相談してみて

生理中の下痢への対応としては、まずプロスタグランジンの生成を抑える鎮痛剤を第一選択とし、それでも下痢が続く場合に下痢止めを補助的に使用するのが効果的と考えますが、あまりにも症状が辛い場合は自己判断で薬を服用せずにまず婦人科を受診して相談してみてください。

長期的な改善を目指すなら、低用量ピルの服用によってホルモンバランスを安定させ、下痢の原因となるプロスタグランジンの過剰分泌を抑えることで、根本的な解決につながる可能性があります。また、普段から腸内環境を整えたり身体を冷やさないようにするなど、生活習慣の心がけによって生理中の下痢を軽減する助けになる場合もあります

生理による体調の変化は個人差が大きいため、ご自身に合った方法を見つけることが大切です。無理せず少しでも快適に過ごせるよう、適切に薬や専門機関を活用しながら、ご自身の体調と上手に付き合っていける方法を試してみてくださいね。

回答者:薬剤師

病院の産科病棟で勤務した経験をもとに、主に妊活~授乳期にかけての薬の飲み合わせやお子さんの予防接種についてのご相談を専門にしています。私たちの日常のそばにある薬だからこそ、正しく使っていただきたい、そんな思いで回答しております。薬について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。


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