ピルをやめたらどうなる?不安に向き合うヒント【お悩み相談室】

生理・PMS
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今回は、ピルを服用して体調が安定したものの、続けるべきか、やめるべきかと悩んでいる30代女性からご相談をいただきました。妊活のタイミングや今後のライフプランを考えるうえで、ピルとの付き合い方に迷うのは自然なことですよね。

ピルのメリット・デメリットを整理しながら薬剤師がお答えします。

PMS・PMDDの症状や出血量が多く、ピルを飲みはじめてから3年ほどが経過しました。
症状自体はラクになり、出血量も減ったので出血があるときにも大きく不安にならず、過ごすことができるようになりました。
しかし、昨年結婚をしたことで、ピルを飲み続けるかどうか悩むようになってきました。
また、ピルを飲んでいることで血栓症になりやすかったり子宮頚がんのリスクが上がること、40歳以降は飲み続けられないことなどのデメリットも改めて考えるようになりました。
ただ、ピルをやめると、せっかく安定していた身体と心が元に戻ってしまうと思うとそちらのデメリットも私には大きく、どうしたらいいのか悩んでいるところです。専門家の方からみて、ピルの服用をやめるタイミングというのはどのような時なのでしょうか?また、服用をやめることでの身体の変化や代わりになる方法などがありましたら教えてほしいです。

(30代、女性、ハンドルネーム:かさね、職種:医療・介護・福祉)


最初に

ご相談いただき、ありがとうございます。
ここまで症状が落ち着いたのは、ピルが身体にしっかり合っているからこそ、ピルを続けるかやめるか、たくさん悩まれていることと思います。


PMS(※)やPMDD(※)の症状がやわらぎ、経血量も減ったことで月経があるときにも大きな不安を感じずに過ごせるようになったということはとても心強い事ですよね。


だからこそ、「これからも飲み続けるのか、それともやめるのか」という選択に悩みが生まれるのは、とても自然なことだと思います。

ピルのメリットとデメリット

あらためて、ピルのメリットとデメリットについて整理してみましょう。


ピルには、排卵を抑える働きがあり、ホルモンの波を安定させる効果があります。
これによって、月経にともなう心身の不調、つまりPMSやPMDDが軽くなったり、経血量が減ったりします


また、ピルを服用することで月経痛の改善や、子宮内膜症・卵巣がん・子宮体がんのリスクを低下させるという長期的なメリットも知られています。 服用を続けることで月経周期が予測しやすくなり、生活のリズムが整うという点も、日常生活に大きな安心感をもたらしてくれる大きなポイントですね


一方で、ピルの服用にはリスクも存在します


もっともよく知られているのが「血栓症リスク」です。ピルに含まれる女性ホルモンのエストロゲンは、血液を固まりやすくする作用があるため、まれではありますが深部静脈血栓症や肺塞栓症などを引き起こす可能性があります


また、子宮頸がんのリスクについてもわずかに高まることが指摘されています。ただし、定期的な子宮頸がん検診を受けることで、早期発見・対処が可能ですので過度な心配は不要です。
またご相談にあるようにピルは「40歳以降は使えない」と誤解されがちですが、正確には、「非喫煙者で心血管疾患のリスクが低ければ、閉経近くまで使用できる」とされています。


逆に、喫煙習慣がある方や、高血圧・糖尿病片頭痛(特に前兆を伴う場合)などの持病がある場合には、年齢にかかわらずリスクとベネフィットを慎重に考えたうえで、医師と相談しながら継続可否を判断する必要があります。


今回ご相談いただいたように、結婚や妊娠希望はピルをやめる一つの良いきっかけになりますから、例えばもし今後妊活を考えているのであれば、ピルを中止して自然な月経周期に戻していくことも選択肢だと思います。

一般的に、ピルをやめると数ヶ月以内に排卵が回復し、自然な生理が戻ることが多いですが、体質やこれまでの使用期間によっては、周期が整うまでに少し時間がかかることもあります。特に妊活を急ぐ場合は、ピル中止後の体調をみながら、必要に応じて婦人科を受診すると安心ですね。

ピルを中止し多くの場合は半年程度で症状は自然に落ち着く

ピルを中止すると、これまで抑えられていたPMSやPMDDの症状、月経量の増加といった変化が再び現れる可能性があります。一時的に月経不順や肌荒れが起こる方もいますが、多くの場合、半年程度で自然に落ち着いていきます。

もし、PMSやPMDDの症状が強く再発してしまった場合には、漢方薬や対症療法でサポートすることが可能です。

たとえば、気分の落ち込みには「加味逍遙散」、イライラには「抑肝散加陳皮半夏」など、体質に合わせた漢方を選ぶ方法があります。また、症状によっては低用量の抗うつ薬や食事・睡眠・運動といった生活習慣の見直しを組み合わせることも有効です。経血量が増えて不安な場合には、鉄分補給を意識することも大切ですね。

最後に

このように、ピルは年齢だけを理由にやめなければならないものではありません大切なのは、これからのライフステージに合わせて、あなたにとって無理のないサポート方法を見つけていくこと。ピルを続ける選択も、中止して別の方法に切り替える選択も、どちらも間違いではありません。

納得できる選択をするために、不安なことや気になることがあれば、ひとりで抱え込まずに専門家に相談してみてくださいね。


あなたが安心して、自分らしく過ごせる方法を一緒に探していきましょう。

<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています

公益社団法人 日本産科婦人科学会
▶月経前症候群(PMS):https://www.jsog.or.jp/citizen/5716/

社会福祉法人 恩賜財団 済生会
▶月経前不快気分障害(PMDD):https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/premenstrual_dysphoric_disorder/

公益社団法人 日本産科婦人科学会
▶低用量経口避妊薬(OC)の使用に関するガイドライン:http://www.jsognh.jp/common/files/society/guide_line.pdf

回答者:株式会社ファミワンに所属する【薬剤師】

病院の産科病棟で勤務した経験をもとに、主に妊活~授乳期にかけての薬の飲み合わせやお子さんの予防接種についてのご相談を専門にしています。私たちの日常のそばにある薬だからこそ、正しく使っていただきたい、そんな思いで回答しております。薬について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。


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