月経の悩み、がまんしないで。からだも心もラクに過ごせる選択肢があります【医師 佐藤 愛佳】

生理・PMS
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ご自身のからだを正しく知って管理する 一緒に考える診療を
つくば国際ブレスト&レディースクリニック 佐藤 愛佳医師

佐藤 愛佳

つくば国際ブレスト&レディースクリニック

産婦人科専門医、母体保護法指定医、日本思春期学会性教育認定講師

2011年宮崎大学医学部卒業。筑波大学附属病院茨城県立中央病院筑波学園病院水戸済生会総合病院茨城西南医療センター病院龍ヶ崎済生会病院等で勤務。
周産期・婦人科診療に従事しながら、ヘルスケア領域・特に性教育に力を入れており、学校での講演も行う。2024年4月より「つくば国際ブレスト&レディースクリニック」にて婦人科診療の常勤医として勤務。

産婦人科医として、女性が快適に日常を過ごせるためのサポートを

ー産婦人科医を目指したきっかけを教えてください

高校生の頃、進路を考える中で理系科目が得意だったことから「医学部を目指してみたら」とすすめられたのが、医師を志す最初のきっかけでした。

家族に医療関係者はおらず、医療が身近にあったわけではありませんが、当時放送されていた『Dr.コトー診療所』を見て医師という仕事に憧れを抱いたことや、女性として資格を持つことへの安心感もあると考え進学を決めました。

大学入学後は、「このまま医師になっていいのか」と悩んだ時期もありましたが、祖父ががんで亡くなったことが転機となりました。医学部に進学したとはいえ、医学の知識がほとんどなかった自分が何もできなかった悔しさを通して、「本気で医師になる覚悟があるのか」と自問し、しっかり学ぼうと決意しました。

産婦人科に興味を持ったのは、大学5年生の実習で初めて分娩に立ち会った時の感動がきっかけです。それまでは出産は助産師さんの仕事というイメージが強く関心も薄かったのですが、出産の現場に立ち会って「自分もこうして生まれてきたのか」と胸がいっぱいになり、親への感謝も込み上げてきました。実習先の先生方がとても親身で、病棟に入り浸るほど夢中になったのも大きかったです。

当時は周産期医療に強い関心があり、分娩やハイリスク妊娠の管理に興味を持っていました。出身大学の宮崎大学医学部付属病院では、新生児も産婦人科チームが担当していて、産科・婦人科・新生児の各グループが連携し、お腹の中から出生後まで一貫して診療を行っていました。この体制にも魅力を感じていました。

ー現在のクリニックで働くようになったきっかけや経緯を教えてください

現在のクリニックには、婦人科診療が本格的にスタートした2024年4月から常勤医として勤務しています。

大学卒業後は地元・茨城県に戻り、筑波大学で産婦人科の研修医として勤務しました。結婚・出産を経て、フリーランスとして働くなど、仕事と家庭の両立を模索してきました。

もともとは周産期への興味が強かったのですが、婦人科の外来を担当する中で、それよりももっと手前の段階、たとえば月経で悩んでいる方や、避妊に関する選択肢へのアクセスといった部分も含めて、女性がより快適に日常を過ごせるように情報を届けたりサポートしたりすることに、すごくやりがいを感じるようになりました。

「つくば国際ブレスト&レディースクリニック」は、もともと乳腺や乳がんの診療を中心としたクリニックでしたが、地域の女性たちの幅広いニーズに応えたいという院長先生の想いから、「婦人科を充実させたい」とお声がけいただいたのがきっかけです。

まずは立ち上げに関わる形で非常勤として診療をスタートしました。少しずつ患者さんも増えてきて、診療体制が整ってきたタイミングで、常勤として関わっています。

つくば国際ブレスト&レディースクリニック ホームページ
「つくば国際ブレスト&レディースクリニック」
(https://tsukuba-breast.jp/)

患者さんご自身が「自分で決める」ためのお手伝い

ー診察の際に心がけていることはありますか

患者さんご自身が「自分の体のことを理解し、納得して治療を選ぶ」、そのために私たちがお手伝いをするというスタンスを大切にしています。

実際の診療では、「他院で卵巣が腫れていると言われたけれど、詳しいことはよく分からない」とおっしゃる方にお会いすることがあります。けれど、それは自分の体のことですし、もっと主体的に関わってもらえるといいなと思っています。

日本ではまだ「お医者さんに言われたから従う」という文化も根強く、質問しづらいと感じている方も多いように思います。私が女性で比較的年齢が近いこともあり、話しかけやすいと言っていただけることもあるので、なるべく分かりやすく説明し、一緒に考える診療を心がけています。

たとえばピルを処方する際も、「この薬を出します」ではなく、「こんな種類があって、こんな違いがありますよ。どれにしましょうか?」と選んでもらうようにしています。更年期の症状や生理の悩みも、「必ず治療すべき」というものではなく、困っているかどうかが大事です。治療することでどう変わるか、しない場合はどうかをお伝えした上で、最終的にはご本人の意思を尊重しています。

私自身、若い頃からピルを使っていて、出産後は避妊リングを使用するなど、自分なりに生理や体調をコントロールしてきました。そうした経験をもとに、「実はもっと快適に過ごせる方法もあるんですよ」と、必要に応じてお伝えするようにしています。

無理に治療をすすめることはしませんが、選択肢を知ることで、自分の体にもっと関心を持ち前向きに向き合ってもらえたら嬉しいです。

クリニック外観
つくば駅から徒歩3分
クリニックエントランス
クリニック エントランス

つらい生理痛は我慢せず、早めの相談がおすすめ

ー月経やPMSで受診される方によく見られる悩みや特徴的な症状について教えてください

生理に関するご相談で特に多いのは、生理痛がつらいというお悩みです。

最近では、「友人がピルを飲んでいてよかったと聞いた」というきっかけで前向きに受診される方も増えてきましたが、実際には「学校や仕事を休むほどつらくなってから」ようやく相談に来られる方も多い印象です。

また、「生理は普通」とおっしゃる方でも、実際には毎回痛み止めを使っているなど、ご自身では症状を軽く見ているケースもあります。

PMSについては、気分の落ち込みやイライラなどの症状で来院される方が多く、生理痛と合わせて悩まれていることがほとんどです。「毎月同じ時期に家族にあたってしまう」といったことがきっかけで気づく方もいらっしゃいます。

ピルに対して「副作用が強そう」といったイメージを持たれている方も多いですが、メリットや選択肢があることをお話しすると「それなら使ってみたい」と前向きになる方も多いです。生理やPMSのつらさは我慢しなくていいこと、気軽に相談していいことを、もっと知ってもらえたらと思っています。

気軽に相談していいことを、もっと知ってほしい

ー月経トラブルを我慢しすぎることによるリスクについてもお話しいただけますか

PMS自体は身体に直接的な悪影響はないと思いますが、生理痛には少し気をつけていただきたいです。特に若いころから生理痛が強い方は、将来的に子宮内膜症のリスクが高いといわれています。

昔は一生のうちに生理が50回くらいしかなかったとも言われていますが、今はその9倍近く、450回ほどになるとも言われています。これだけの回数が本当に「自然」なのかという問いもありますし、生理の回数が多いことが内膜症の原因のひとつではないかとも考えられています。

実際、26歳で子宮腺筋症と子宮内膜症が見つかった方もいました。その方は高校生の頃から生理がつらかったものの、当時は「異常なし」と言われて様子を見ていたそうです。早くから治療を始められていたら違ったかもしれません。

ピルの使用やホルモン療法は、生理の回数を減らすことにもつながります。つらい生理痛は「体質だから」と我慢するのではなく、早めに相談していただく方が体にとってもいい選択です。

生理痛を我慢し続けるよりも、早い段階で治療することで、将来的な病気のリスクも軽減できますし、体調も安定します。毎月体調が悪くて集中できない期間があるのはもったいないですよね。生理をコントロールすることで、学業や仕事のパフォーマンスも向上することが期待できます。

私自身はもともと生理が軽い方だと思っていたのですが、研修医の頃にピルを服用していて、妊娠を希望して服用をやめたときに「生理ってこんなにつらかったんだ」と驚きました。なくなって初めて分かるつらさってけっこうあるんですよね。

ー読者へのメッセージをお願いします

生理やPMSの症状は、自分にしか分からないものだからこそ、つい「これくらいは我慢するものなのかな」と思ってしまう方が多いと思います。生理というのはそもそも妊娠や出産のための体の機能で、妊娠を望まない時期にその症状を我慢し続ける必要はありません。

月経トラブルの裏に病気が隠れていることもあります。年齢に関係なく、「つらいな」「生活に支障があるな」と感じたときは、ぜひ気軽に相談してみてください。

治療の選択肢もたくさんあり、自分に合った治療法が見つかれば、より快適に過ごせるようになるかもしれません。

また「婦人科は内診があるから抵抗がある」という方でも、内診をしない選択も可能です。もちろん治療が必要なければ、そのまま様子を見るという選択でも構いません。

婦人科をもっと身近な存在として捉えて、信頼できる「かかりつけ医」を持っていただけたら嬉しいです。生理やPMSだけでなく、将来的に妊娠・出産、更年期、閉経など、女性のライフステージに応じてさまざまな変化があります。だからこそ、どこかのタイミングで一度婦人科とつながっておくことで、長く安心して相談できる場所を持てると思います。

「性教育」を通じて、正しい知識を届けたい

ー余談ですが、小学校や中学校で「性教育」の講義をされているとも伺いました

そうですね。性教育の講義は、小学校は年に2回ほどで、中学校や高校は2022年から始まり、2023年からは母校の中学校と高校で継続的に行っています。

母校での性教育の授業風景
母校での性教育の授業 佐藤愛佳先生

「性教育」への関心が高まったのは、比較的最近のことです。2人の子どもを育てながら外来診療を続ける中で、現実に若年妊娠や育児放棄といった問題があることに直面し「知識があれば防げたのでは」と感じる場面も多くありました。

ちょうどその時、テレビで見た「小さい頃からの性教育が、加害者にも被害者にもならない社会につながる」という話に深く共感し、自分も性教育に関わりたいと思うようになりました。

講義では、正しい知識を伝えることが重要ですが、ただ真面目に話すだけでは伝わりづらいため、経験談やドラマの話を交えて、より入りやすい形で伝えるよう心がけています。また、学生からの質問をきっかけに自分も新たに調べ直したりして、お互いに学び合うことができる点が楽しいです。

印象に残っているのは、小学生の授業で、性の多様性や月経、SNSの被害、性的同意などについて話した時のことです。子どもたちの反応も良く、講義後には「ちょっと気持ち悪いと感じたけど、大事なことだと思った」と感想が聞けてとても嬉しく思いました。

あとは地元ならではかもしれませんが、「講義を聞いて、受診しました」とクリニックにいらっしゃる方もいて、治療のきっかけになったと知った時は嬉しかったですね。

「性教育」については、学校の先生や保護者の中でも意識や考え方が異なる方もいますので、早期に正しく、継続的に教育を受けることはまだまだ難しい状況だなとは感じています。熱心な先生がいればお声がかかりますが、異動によって継続できないということも…。子どもたちの未来のために、これからも活動や発信は続けていきたいと思っています。

「おいしい時間」と「おしゃべり」でリフレッシュ

ーリフレッシュ方法を教えてください

実は今は、仕事も楽しくて特にストレスもなく、あまりリフレッシュ方法を意識することはないんですけど。友達や家族と一緒においしいものを食べながら、お酒を楽しむことが一番リフレッシュできるかなと思います。

あと、モヤモヤしているときは、スタッフと話したりするのもいいですね。忙しくて疲れすぎたときなんかは、ちょっとお昼ご飯を食べながら「今日どうだった?」とか話を聞いてもらったりしています。

食事も、一人で食べるより、家族とおしゃべりしながら食べることが多いです。やっぱり、話すことが気分転換になるので、それが一番かもしれません。

(取材:2025年3月)


本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。

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