月経困難症・PMSは、ご自身にあった治療の選択肢があります【医師 小川 隆吉】

生理・PMS
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「来てよかった」と感じてもらえるようにからだと心を支える医療を提供
小川クリニック 院長 小川 隆吉

小川 隆吉

小川クリニック 院長

医学博士、産婦人科専門医、母体保護法指定医

1975年に日本医科大学を卒業後、同大学産婦人科に勤務。1987年からは都立築地産院(現・都立墨東病院)で産婦人科医長を務めるとともに、日本医科大学産婦人科の講師も兼任し、臨床と教育の両面で産婦人科医療に従事。1995年に小川クリニックを開院し、現在に至るまで地域に根ざした医療を提供。

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小川クリニック

一人ひとりの患者さんと丁寧に向き合うために、婦人科診療所を再スタート

産婦人科医を目指された経緯やきっかけを教えてください

医師になろうと決意したのは、高校3年生の時です。父は産婦人科医だったのですが、高校3年生で進路を決めるまでは医師になろうとは思っていませんでした。

現在のクリニックの場所は、私の父がかつて産婦人科診療所を開設していた場所です。10年間ほど休院状態だった診療所を1995年に再スタートしました。

開院当初から、不妊治療、妊娠中のケア、出産、更年期まで、トータルな産婦人科医療に取り組んできました。2021年までは分娩の取り扱いもおこなっていたのですが、現在はお産は一時中止し、外来診療に注力しています。

最近の診療内容としては、不妊治療と妊婦健診がそれぞれ約3割ほどを占め、その他には、月経困難症に対する治療やピル処方に加えて、保険適用外となりますが「インティマレーザー」を希望される患者さんが増えてきています。思春期から更年期、老年期までライフステージに寄り添う診療を提供しています。

小川クリニックホームページ
1995年「小川クリニック」として再スタート
https://www.ogawaclinic.or.jp/

診療時に心がけていることや工夫していることを教えてください

私は、「ここに来てよかった」と思っていただける医療を提供したいという想いで、日々の診療に向き合っています。患者さんの抱える悩みや不安を少しでも軽くして、笑顔で帰っていただくことが目標です。

そのためには、やはり常に最新の医療知識を把握しておくことが欠かせません。新しい治療法や研究結果について学ぶため、できるだけ学会や研究会に参加し、日々知識のアップデートに努めています。

たとえ自院で対応できないケースであっても、最新の情報を把握していれば、適切な医療機関をご紹介することができますし、患者さんにとってより良い選択肢を提案できます。

また、診療においては「医師と患者さんは対等な関係であるべき」と常に意識しています。一般的には、診察室で医師が横を向いてカルテを記入しながら話すことが多いかもしれませんが、私は必ず患者さんと向き合って、対面でお話しするようにしています。机を挟んで対面で座り、カルテの記入も患者さんの目の前でおこないます。

対面で診療できる小川クリニックの診療室
机を挟んで患者さんと向き合い、対面で診療

もちろん、プライバシーの配慮も大切にしています。診察室は個室となっており、外に会話が漏れることはありませんので、安心してお話しいただけます。

こうしたスタイルは、開院当初から大切にしてきたもので、「患者さんとしっかり向き合い、安心して話せる環境をつくりたい」という想いから始まりました。患者さんがリラックスして話せる空間づくりは、結果として診療の質にもつながると実感しています。

日々の学びや情報収集を治療に活かす

ー医師としてやりがいを感じたエピソードがあれば教えてください

そうですね。やはり診療や検査を通じて、病気や異常を早期に発見し、より良い結果につながったときには、医師としての誇りと大きなやりがいを感じます。また不妊治療で40歳以上の方が様々な治療で妊娠できずに受診。当クリニックでの人工授精で妊娠が確認された時に一緒に喜びを分かち合えた場合もやりがいを感じます。

当院では、早期発見・早期治療に結びつけるための検査に力を入れています。子宮筋腫や子宮内膜症の早期発見を目的とした婦人科検診をはじめ、子宮頸がん検診、妊娠前のブライダルチェック、妊娠後の妊婦健診など、女性のライフステージに応じたさまざまな検査を実施しています。

過去には、胎児スクリーニング検査で異常を見つけ、大学病院へ紹介した結果、生まれてすぐに手術がおこなわれ、赤ちゃんの命を救うことができたケースも数々ありました。大学病院の先生にも驚かれ、ご家族からもとても感謝していただきそれぞれの例がとても印象に残っています。

「胎児スクリーニング検査」は現在では広く知られていますが、当院では10年以上前から取り入れており、妊娠20週と30週のタイミングで、赤ちゃんの心臓、肺、腎臓などの主要な臓器に異常がないかを詳しく確認しています。

私はもともと慎重?な性格で、日々の診療では「この先どのような経過をたどるか」「万が一悪化した場合、どのように対応すべきか」といったリスクを常に想定しながら患者さんと向き合っています。

実際に、いわゆる「人食いバクテリア(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)」と呼ばれる重篤な感染症を疑い、迅速に対応したことで命を救えたケースもありました。

もちろん、過度に不安を抱きすぎて冷静な判断ができなくなっては本末転倒ですが、リスクを見逃さずに想定し備える姿勢を大切にしています。

そのためにも、正確な臨床判断を支える知識のアップデートは欠かせません。日々の診療に加え、学会参加や最新の文献を通じた情報収集を継続することで、診療の幅を広げ、より質の高い医療の提供につなげたいと考えています。

小川クリニック 外観 / 待合

月経困難症・PMSはお一人おひとりに合わせた治療が選べます

―月経にまつわる受診で多いご相談はどんなことでしょうか

最近は、月経困難症に関するご相談が非常に増えてきた印象があります。特に高校生くらいの若い方から、閉経前の50歳前後の方まで、幅広い年代の女性が受診されています。

当院では、患者さんの体質やライフスタイル、ご希望を丁寧に伺ったうえで、「低用量ピル」や「ジェノゲスト(黄体ホルモン製剤)」などを選択肢としてご提案しています。

ジェノゲストは、ピルに比べて血栓症などの副作用リスクが低い点が特徴です。たとえば喫煙習慣がある方、偏頭痛のある方、あるいは40歳を超えてピルの使用に注意が必要な方でも、ジェノゲストであれば安全に使用できるケースがあります。

ピルに対して副作用への不安をお持ちの方もいらっしゃいますが、そうした場合には「これはピルとは異なるタイプの薬ですよ」とご説明することで、安心して治療を受けていただけることが多いです。実際、ジェノゲストもピルも、いずれも月経困難症やPMS(月経前症候群)に対して有効性が確認されており、それぞれに適した患者さんがいらっしゃいます。

また、ピルにもさまざまな種類があります。仮にある製剤が合わなかった場合でも、他のタイプに切り替えることで症状が改善することもあります。最近では保険適用のピルもありますので、若年層の方でも経済的な負担が少なく、継続しやすい選択肢が増えています。

逆にピルが合わなければジェノゲストを試してみる、あるいはその逆といった柔軟な対応が可能です。服薬の方法についても、患者さんの生活スタイルや希望に応じて調整しています。

このように、月経に関するお悩みには複数の治療選択肢があります。患者さんと一緒に相談しながら、無理なく続けられる方法を一緒に見つけていけるよう心がけています。

最近では、オンラインでピルを処方するサービスも広がってきました。とても便利な仕組みだと思いますし、オンライン処方そのものを否定するつもりはありません。ただ、診察を受けずに処方が行われるケースには、一定の注意が必要だと感じています。

ごくまれではありますが、卵巣や子宮の病気が見過ごされた結果、症状が悪化してしまうケースもあります。だからこそ、オンライン処方を利用する方にも、できれば年に1回、あるいは2年に1回でも構いませんので、婦人科での定期的な診察を受けていただければと願っています。ご自身の身体の変化に、早く気づける環境を整えることがとても大切です。

女性のライフステージ全体に寄り添う医療を

読者の方へメッセージをお願いします

私は、命の根っこに関わるこの仕事に、強い使命感とやりがいを感じながら日々診療にあたっています。

今後も、不妊治療や妊婦健診に取り組みつつ、「フェムケア」や「フェムキュア」と呼ばれる女性のライフステージ全体に寄り添う医療を、より一層充実させていきたいと考えています。

たとえば、思春期には月経困難症に悩む方がいます。その背景に子宮筋腫や子宮内膜症といった器質的疾患が隠れていることもあります。こうした症状は将来的に不妊症と関係してくる場合もありますので、月経の異常を感じた時は産婦人科の受診をお勧めします。

また、妊娠を希望する方へのサポートや、望まない妊娠への対応、妊娠後のケアにも力を入れています。さらに、更年期障害や骨粗しょう症、性交に関するお悩み、尿漏れなど、年齢を重ねる中で生じるさまざまな症状にも丁寧に対応していきたいと考えています。 女性の人生におけるあらゆる場面において、お一人おひとりそれぞれのニーズに合ったケアを届けることを大切にしています。

女性のライフステージ全体に寄り添う医療を提供
女性のライフステージ全体に寄り添う医療を提供します

私は赤ちゃんや子どもが大好きで、自宅の前にある保育園の子どもたちの笑顔を見るたびに元気をもらっています。子どもを持つということは、単に「産むこと」ではありません。その子が生まれたあと、どうすれば幸せに育っていけるのか、そうした視点を持って社会全体で支えていくことが大切だと思います。

少子化についても、「人口が減るから困る」といった単純な話ではなく、「どうすれば誰もが幸せに生きられる社会になるか」という観点から考えていく必要があるのではないでしょうか。

医療もまた、利益を追いすぎるのではなく、「人の役に立ちたい」という本来の目的に立ち返るべきだと感じています。そうした思いを忘れずに、これからも患者さん一人ひとりと真摯に向き合っていきたいと思います。

不妊治療や妊娠、出産に関する著書や雑誌などへの寄稿も多数

趣味の時間と愛犬との散歩でリフレッシュ

ー小川先生のリフレッシュ方法を教えてください

そうですね。お酒を飲んだり、ジャズを聴いたり、競馬場に行ったりすることがリフレッシュになっています。それから、泳いだりジョギングをしたり、体を動かすことも好きですね。

ーちなみに先生はワンちゃんを飼われていて、大谷選手の愛犬・デコピン君と同じ犬種だとか

はい、そうなんです。もう15歳になりました。デコピン君は「賢い」「人懐っこい」と紹介されていましたが、うちの子は…ちょっと性格が違うかもしれませんね(笑)。休みの日に一緒に散歩に出かけるのも楽しみのひとつです。

(取材:2025年4月)


本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。

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