男性の産後うつ…はじめて育児の中、妻としてどう夫を支えればいいのかわからない【お悩み相談室】

今回は、育児に協力的だった夫の笑顔が減り、無言で過ごす時間が増えたことに不安を感じている奥様からのご相談です。ネットで「男性の産後うつ」を知り、夫もその可能性があるのではと悩んでいるようです。
妻として何ができるのか、家族全体で状況を乗り越える方法について、育児や家庭の相談を得意とする公認心理師がアドバイスします。
出産から5カ月が経ち、夫の様子が気になっています。出産前から一緒に両親学級に通ったり、育児にも協力的なとても優しい夫です。最近、夫の笑顔が減り、趣味のギターも弾かなくなりました。以前は子どもをあやす時によく話しかけてくれていましたが、昨日はずっと背中をぽんぽんするだけで、無言のまま部屋の一点を見つめていました。夫に声をかけると「ちょっと仕事で疲れてるだけで大丈夫」というだけで、異様な雰囲気にそれ以上は私も聞くにきけなくなってしまいました。
ネットで調べたところ、「男性の産後うつ」にたどり着き、女性だけではなく男性もなるんだと驚きながらも、夫も産後うつかもしれないと感じています。私も仕事に復帰したばかりで余裕がなかったとはいえ、夫の変化を感じていたのに何もしてあげられていなかった自分が情けないです。初めての子育てを経験している中、夫の心の負担をどう支えればよいのか分からず、もどかしい気持ちでいっぱいです。
妻として何ができるのか、また家族でどのようにこの状況を乗り越えればいいんでしょうか。
(30代、女性、ハンドルネーム:れもん、職種:販売・サービス)
頑張っている男性ほど、頑張りの糸が切れてしまう
れもんさん、ご質問ありがとうございます。出産から5か月、初めての育児はわからないことばかりで戸惑ったり慌てたりすることも多いですよね。
もしかしたらパートナーさんは、初めての育児のお疲れが出てきたのかもしれません。
親になるために妊娠中から身体ごと変化する女性と違い、男性は気持ちの持ちよう、つまり意志の力で親になるための準備をします。
子育てという大きな生活環境の変化や責任の重さに適用しようとがんばり続け、あるタイミングでがんばりの糸が切れてしまう。
家族を大切にしようとがんばっている男性ほど、そのような状態になってしまいます。
笑顔が減ったり趣味のギターを弾かなくなったり、無言のまま宙を見つめる様子を見たりすると、心配や不安な気持ちにかられますよね。あなたのそのセンサーは信頼できるものだと思います。
産後は赤ちゃんのことで手一杯でパートナーの変化を見落としてしまうことも多いのですが、よくお気付きになりましたね。
もし、パートナーさんが睡眠・食事がとれなくなったり、会話がスムーズにいかない、いつもぼんやりして感情が見えないなどのご様子があれば、地域の保健師さんのいる相談窓口や出産された産婦人科にご相談なさってください。
専門的な視点で男性の産後うつの可能性を精査し、心療内科や精神科を受診する必要性を検討した方が良い場合もあります。
同じ立場の人とのコミュニケーションで心強さを感じる
お住まいの地域に、子育て広場のような場所はありますか?
乳幼児を連れて親子で過ごせる公的機関で、日によってリトミックやお話し会などのイベントが開催されていることが多いです。そうした子育てひろばでは、パパを対象としたイベントが土日にプログラムされているところもあります。
私は子育て広場で心理士として勤務していた経験があるのですが、パパが多く集まるイベントではパパ同士が子育てや生活、時にはお仕事の話をしたりしてリフレッシュしている様子でした。
同じ立場だからこそわかりあえることがあったり、「うちもそうなんですよ~」とお互いの共通点を知ることで安心したりと、様々なメリットがあるように思います。悩みや大変さを誰かに相談するわけじゃなくても、同じ立場の人との会話で心強さを感じられるのかもしれません。
よかったら、そうしたイベントにご家族みんなで参加なさってみてください。子育てで疲れていそうだから家でゆっくりさせてあげたいと思うかもしれませんが、普段とは違う新しい刺激が人の心を活性化させたりします。
夫婦の時間を作り「お互いを褒め労う」ことも大切
また、可能ならばお子さんを誰かに預け、ご夫婦で一緒に過ごすのも良いかもしれませんね。
5か月間初めての子育てで奮闘してきたお互いを褒めて、労い合って、「これからもよろしくね」と伝え合う。時にはそんな、夫婦水入らずのお時間も作って頂けたらと思います。
回答者:公認心理師・臨床心理士
自治体の子育て相談窓口でお仕事をさせていただいています。キンダーカウンセラーやスクールカウンセラーとしての経験も長いです。子育て中は悩みが尽きないですよね。年齢や個性に応じた親子のコミュニケーションでお困りなら、ご相談ください。不登校、ひきこもり、家庭内暴力や虐待などのカウンセリングも得意としております。
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