「妊娠9週の壁」流産の不安にどう向き合えばいい?【お悩み相談室】

妊娠・出産
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妊娠初期、心拍が確認できたものの、ネットで「妊娠9週の壁」「稽留流産」の情報を見て不安が止まらないという30代女性からのご相談です。

妊娠初期の流産リスクや不安との向き合い方について、助産師がアドバイスします。

先週、産婦人科で赤ちゃんの心拍が確認できました。うれしいのも束の間、9週や12週あたりに突然の“妊娠の壁”があるとネットで見て、不安で仕方ありません繋留流産(けいりゅうりゅうざん)という言葉も最近知り、何の異常もなく、つわりもあって安心していたのに、健診で「心拍が止まっています」と告げられるという体験談を読み、心がざわついています。あと3週間で妊娠9週目、エコー検診が怖くてたまりませんお腹の赤ちゃんは元気か不安で、もし死んじゃってたら…と考えると涙が出ます。気持ちを落ち着けるために妊婦日記をつけたり、リラックスできるアロマをたいたりしてますが、頭から不安が離れません。

(30代、女性、ハンドルネーム:クラリセージ、職種:事務・オフィスワーク)


最初に

クラリセージさん ご相談ありがとうございます。

お腹の赤ちゃんの心拍が無事に確認でき喜んでいたところで、稽留流産や9~12週頃での流産の可能性を知り、今とても不安になっておられるのですね。
「心がざわつく」、「頭から不安が離れません」という言葉から、心配でたまらない様子が想像できました。

今回は、妊娠の壁について説明し、クラリセージさんが『今』をどのように過ごすかを考えるきっかけになれば幸いです。

「妊娠9週・12週の壁」ってどういうこと?

あと3週で妊娠9週になる、ということなので、クラリセージさんは現在妊娠6週ですね。妊娠5~7週ぐらいで心拍が確認され、ホッと安心できたにも関わらず、その後の検診で心拍が止まっていた、という悲しい経験をされる方がいらっしゃるのも事実です。


実は妊娠7~9週は、流産の可能性が高い時期と言われており、そのため「妊娠9週の壁」という言葉が言われるようになりました。
逆に、妊娠9週を越えると、流産率がかなり低下するため、妊娠が継続できるかどうか、越えられるかどうかの『壁』となります。


妊娠が確認された後に起こる流産は、約15%と言われています。
また、この頻度は、お母さん(母体)の年齢と共に上昇し、40歳以上になると妊娠しても40%以上が流産すると言われています。
日本産科婦人科学会では、「妊娠したことがある女性のうち、38%が流産を経験したという報告がある」と掲載しています。
流産というツラい経験は、日本ではあまりオープンに話さない内容のため、私たちが気づきにくいだけで、実は流産は稀なことではないんですね。


流産がみられる時期は、超音波検査で赤ちゃんの心拍が確認できる前の妊娠初期(妊娠6~7週未満)で全体の約70%以上が起こります。
そして、その頻度は妊娠週数が進むにつれて減少し、心拍確認後に流産となるのは約5%、妊娠12週までには流産のうち約80%が起こっているため、「妊娠12週の壁」という言葉も出てきました。
妊娠12週以降22週未満の流産は全妊娠の1.5%程度とされています。


妊娠12週未満の流産を早期流産といい、最も多い流産原因は赤ちゃんの異常です。
流産した組織(絨毛組織)の染色体を調べると、約80%に異常が認められたという報告があります。
つまり、精子と卵子が出会い受精卵となった段階で、その子は流産する運命と決まっているのです。そして、そのほどんどが偶然のできごとなのです。

不安を減らすために、避けた方がよいこと

仮に流産となってしまった場合、お母さんはご自分の何らかの行動を責めてしまうかもしれません。
しかし、以下の避けるべき行動以外は、流産に影響することはほとんどないと考えられています。

【妊娠中に避けるべき行動】

・カフェインの過剰摂取コーヒーだと1~2杯/日程度に)
・タバコ
・アルコール摂取
・性交渉(子宮の収縮につながったり、コンドームなしの性交渉では感染につながる可能性も。安定期後、主治医の先生に確認してからにしましょう)
・自己判断での薬の使用(市販薬・処方薬に限らず、必ず事前に産婦人科医に確認を)
・レントゲンなど検査・治療で放射線を浴びること病院受診時は必ず妊娠していることを告げる

リラックスのためのアロマ、妊娠中の注意点

また、クラリセージさんはアロマがお好きなようですが、子宮収縮作用や、生理を促す通経作用、神経毒性などがあるものもあり、妊娠の時期に応じて使用を控えるべきものもありますので、ご確認の上ご使用くださいね。
真正ラベンダー、スイートオレンジ、グレープフルーツなどは妊娠全期で使用でき、心を静めたり、リフレッシュするのに効果的と言われています。
ご自身がリラックスできるように取り組まれていることは、とても良いので、精油の作用を確認の上、活用してくださいね。

今のあなたにできる、不安との付き合い方

不安なことがあると、どうしてもそのことを考え、余計に不安になることもありますよね。
そういう時は、映画やドラマを観たり、本を読んだり…身体をあまり動かさずにできるご自身が没頭できることをやってみてください。
自動的に気持ちが向くので、頭の切り替えがしやすくお勧めですよ。

そして、色んな情報があって、一喜一憂したり、他の人と比べたり…不安をあおられる可能性があるので、今は「流産」に関するネット検索を控えておきましょう
不安なことはかかっている産婦人科でご自身の状況も含め確認するのが確実です。

最後に

赤ちゃんの問題による流産が多い中では、私達では防ぎようがない場合がほとんどです。
ですが、そういうこともあるんだな、と理解した上で、今をゆったりと過ごすことが今のクラリセージさんには必要かと思います。
「自分の好きなことに集中する」ことに取り組んでみてはいかがでしょうか?
不安を忘れる時間が少しでも増えますように。

<参考文献・出典>

NPO法人 SIDS家族の会
▶流産について:https://sids.gr.jp/miscarriage.html

公益社団法人 日本産科婦人科学会
▶流産・切迫流産:https://www.jsog.or.jp/citizen/5707/

<本記事の回答者>

谷村弥生

助産師/保健師/公認心理師

所属:株式会社ファミワン

産婦人科での様々な年齢層の方と関わっている勤務経験から、月経やホルモンバランスの乱れにより起こる症状や、病院受診を迷う症状、人に相談しにくいお悩みについて、あなたと一緒に考えていきます。もちろん心理的なお悩みも遠慮なくご相談ください。皆さんのフェムケアを応援したいと思っています。


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