妊娠中でも安心できる薬の選び方と生活の工夫【お悩み相談室】

妊娠・出産
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妊娠中に薬を飲むことに迷いを抱えている30代女性からのご相談です。月末の激務で頭痛や疲労が重なり、市販薬に頼らざるを得ない状況に不安を感じているとのこと。

妊娠中でも比較的安心して使える薬や、生活の工夫、受診時のポイントについて、薬剤師が解説します。

妊娠がわかってから、薬を飲むことにすごく慎重になっています。
経理事務の仕事をしているのですが月末は激務…疲労と睡眠不足で毎月体調を崩しそうになるのを薬でなんとかやりすごすというルーティンになっています。
これまでは市販の風邪薬や頭痛薬を当たり前のように使ってきたけど、妊娠中は赤ちゃんへの影響が心配です。でも職場には人も少なくて、簡単に休むこともできず、薬を頼らずに乗り切れる自信が正直ありません。薬を控えたい気持ちと、仕事を休めない現実の間でどうしたらいいのか悩んでいます。毎月のような頻度で妊婦が飲んでもいい頭痛薬とかありますか?

(30代、女性、ハンドルネーム:ことっぷ、職種:事務・オフィスワーク)


最初に

妊娠してから薬を飲むことにとても慎重になっているのですね。
経理事務のお仕事は月末が特に忙しく、疲れや寝不足が重なって体調を崩しやすい。
これまでは市販の風邪薬や頭痛薬でなんとか乗り切ってきたけれど、妊娠中は赤ちゃんへの影響が気になって「同じように薬を飲んでいいのか」と不安になるお気持ち、とてもよくわかります。

一方で、職場は人手が少なくて簡単に休むこともできない。
薬を控えたい気持ちと、仕事を続けなければならない現実の間で揺れ動いているのですね。
毎月のように体調不良と向き合う中で、「妊娠中でも安心して飲める頭痛薬はあるの?」と悩むのは自然なことだと思います。

まずは不安を打ち明けてくださったこと自体、とても大事な一歩です。

「薬を控えたい」と「無理できない現実」の整理

この状況では、次のように考え方を整理しておくと安心です。

薬をなるべく使わずに済む工夫を持っておく

頭痛が出そうなときに早めに水分をとる
空気の乾燥を避ける
パソコン作業の合間に体を伸ばす

など、ちょっとした工夫で薬に頼らずに済む場面が増えることがあります。

「妊娠中に飲んでいい薬」について主治医と確認しておく

妊娠中でも比較的安心して使える薬はあります
「頭痛が出たらどの薬を、どのくらい飲んでいいか」をあらかじめ主治医に確認しておくと、体調が悪いときにも迷わず対応できます。

それでもどうしても体調がつらいときは、無理せず職場に相談することも妊娠中は大切です。
そのために、あらかじめ仕事の分担を話し合ったり業務の優先順位を整理しておくと、いざというとき安心して休むことができるかと思います。

妊娠中に使える薬と注意すべき点

妊娠中に頭痛や発熱が出たときに使われやすい薬の一つが「NSAIDs(エヌセイド)」というタイプのお薬です。
ロキソニンやイブプロフェンなど、市販薬としてもよく目にする成分がこれにあたります。
ですが妊娠中、特に20週以降の使用に注意が必要です。


理由は大きく分けて2つあります。

①赤ちゃんの腎臓に影響が出て、羊水が少なくなることがある

羊水は赤ちゃんを守るクッションの役割や、手足を動かすための大事な環境です。
羊水が少ない状態が長く続くと、肺の発達が遅れたり手足の自由な動きが制限されて変形につながることもあります。
そのため妊娠中期以降は、NSAIDsを長く使ったり、大量に飲むことは避けるべきとされています。

②赤ちゃんの血液の通り道が早く閉じてしまうことがある

お腹の中の赤ちゃんは特別な血管を使って心臓から肺へ血液を送っています。
NSAIDsを妊娠後期に飲むと、この血管が早く閉じてしまうことがあり、赤ちゃんの心臓や肺に強い負担をかける恐れがあります。
最近では妊娠20週以降でも影響が出る可能性があるとわかってきました。

また「塗り薬や貼り薬なら安心」と思われがちですが、実際には薬の成分は皮膚から体に吸収されるため、飲み薬と同じような影響が出ることがあります。
ですので外用薬でも注意が必要です。

一方で、妊娠中に比較的安全性が確かめられているのはアセトアミノフェン(カロナールなど)です。
炎症を抑える効果はNSAIDsと比較するとやや弱いですが、発熱や痛みに対しては幅広く使われています。
妊娠がわかったら「頭痛が出たときはこの薬を」という選択肢を主治医と話し合っておくと安心です。

最後に

妊娠中は「薬を避けたい気持ち」と「体調を崩してしまう現実」の間で本当に悩みます。

だからこそ、生活の工夫と医師に確認した薬の使い方、
その両方を準備しておくことが、

安心して過ごすための鍵になると思います。



<参考文献・出典>

公益社団法人 日本産科婦人科学会
▶産婦人科診療ガイドライン-産科編2017:https://www.koishikawa-cl.com/pdf/191106.pdf

<本記事の回答者>

北里大学薬学部卒業後、総合病院産科病棟で勤務した経験をもとに、主に妊活~授乳期にかけての薬の飲み合わせやお子さんの予防接種についてのご相談を専門にしています。私たちの日常のそばにある薬だからこそ、正しく使っていただきたい、そんな思いで回答しております。薬について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。


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