妊娠中の不安が止まらない。不安との向き合い方を教えて【お悩み相談室】
妊娠20週を迎えたものの、不安が強く押しつぶされそうになるという30代女性からのご相談です。
過去に子宮外妊娠を経験し、不妊治療を経てようやく授かった命。喜びの一方で「何かあったら」と不安が止まらず、心音確認や破水チェックを繰り返してしまうとのこと。
今回は、妊娠中の強い不安との向き合い方や、破水の見極め方について助産師がアドバイスします。
妊娠20週4日です。妊娠中、不安な気持ちが強く、押しつぶされそうになります。初めての妊娠は子宮外妊娠で、片方の卵管を失い「妊娠の可能性は半分」と医師に言われ、当時は大きなショックを受けました。不妊治療を経て、ようやく授かった今の命がどれだけ奇跡的なものかを痛感しています。
性別もわかり喜びを感じた一方で、医師からリスクや最悪のケースについて説明されるたびに、不安が増してしまいます。
母も励ましのつもりで「もし8ヶ月で産まれても生きられる」と話してくれますが、前向きになれず、毎日胎児の心音を確認したり、破水を疑って排尿を紙コップで確認したりしています。頭では「考えすぎ」と分かっていても、不安を止められません。不安とどう向き合って過ごせばいいでしょうか。
(30代、女性、ハンドルネーム:にっちゃん、職種:営業)
最初に
妊娠20週4日を迎えられているとのこと、本当にここまでよく頑張ってこられましたね。
過去に子宮外妊娠を経験し片方の卵管を失い、その後の不妊治療を経て、ようやく授かった大切な命。
どれほどの喜びであり、同時にどれほどの不安を抱えてしまうかと思います。
自分とは無縁だと思っていたことと向き合うことになり、気持ちも追いつかなかった影響が、心の傷として今も残っているのではないでしょうか。
ご家族の「8ヶ月でも生きられるよ」という励ましも、安心どころかかえって不安を刺激してしまう場合もありますよね。
毎日赤ちゃんの心音を確認し、破水を疑って紙コップに尿をためて見てしまうほどの緊張感を抱えているとのこと。
頭では「考えすぎ」とわかっていても止められない…葛藤を抱えながら苦しい毎日をお過ごしかと思います。
「不安に振り回されない」を目指そう
不安を完全に消すことは難しいかもしれませんが、「不安に振り回されすぎない」状態を目指せると気持ちがぐっと楽になるかもしれません。
紙コップで尿を確認するほどの行動は、赤ちゃんの安全には決してつながらず、かえって「やらずにはいられない」気持ちを強化してしまいます。
ご自身でも冷静に「やりすぎかも」と気づいているので、ここがひとつのサインで、今から心のケアを始める良いタイミングにいらっしゃると思いますよ。
例えば「心音確認は一日1回まで」「破水は尿と違って自分で止められるものではないから、必要以上に確認しない」といった、自分なりのルールを小さく設けると、不安と少し「距離」を取れるかもしれません。
また、考えがぐるぐる止まらなくなった時には、深呼吸や音楽、軽い散歩などで気持ちを切り替える習慣を持つことも助けになります。
そして何より大切なのは、この気持ちを一人で抱え込まないことです。
今抱えている不安は、決してご自身が「弱いから」ではなく「過去の経験があまりに大きく、守るためにでている心の反応」だと思います。
パートナーや信頼できる人に言葉で伝えること、そして専門家のカウンセリングを利用することも大事なセルフケアです。
不安と上手に付き合うために、専門家に頼る選択肢も
妊娠中に不安を強く感じることは特別なことではなく、実はとても多くの妊婦さんに見られます。
海外では「妊娠関連不安(Pregnancy-Related Anxiety)」という名がつけられるほど、研究でも注目されているテーマです。
それだけ多くの方が同じように悩んでいるということでもあります。
こうした不安は放っておくと産後うつや育児への自信低下にもつながることがあるため、早めの支援や対策が推奨されています。
医療機関の中には助産師外来や周産期メンタル外来を設けているところがあり、臨床心理士やカウンセラーに相談できる体制も増えてきました。
心理的支援では、マインドフルネスや認知行動療法のような方法を使って「不安はあっても生活できる」状態を整える練習をします。
薬を使わずにできる方法も多いので、妊娠中でも安心して受けられるのが特徴ですよ。
破水を過度に心配しなくても大丈夫。その理由とは
破水について補足すると、破水は排尿のように自分の意思で出るものではなく、持続的に水っぽい液体が出て下着が濡れる状態が特徴です。
尿と違ってにおいや色も独特で、日常的に紙コップで確認しなくても、実際に起きれば明らかに区別がつく場合がほとんどです。
ですから「毎回確認しないと」と思いつめなくても大丈夫です。
最後に
これからの時間を少しでも安心して過ごすために、「不安をなくそう」ではなく「不安と折り合いをつけながら赤ちゃんと過ごす」視点を持てると良いかと思います。
早めに支援につながることは、出産後の安心にも直結します。
どうか一人で抱え込まず、必要なサポートを頼ってくださいね。
<参考文献・出典>
株式会社野村総合研究所
▶令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業「不妊治療の実態に関する調査研究(最終報告書)」:https://www.mhlw.go.jp/content/000766912.pdf
株式会社キャンサースキャン
▶令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業「流産や死産等を経験した女性に対する 心理社会的支援に関する調査研究 」:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000903116.pdf
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