「母親失格」と責めた産後の孤独。むぴーさんが「私だけじゃなかった」と自分を許せた瞬間【体験談インタビュー】

妊娠・出産
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むぴー

大阪在住、3児の母。インスタグラマーフォロワー10万人超。Xでの育児絵日記が17万いいね!を記録し、子育て世代から圧倒的な共感を集める漫画家・イラストレーター。著書に『母がはじまった』など。

著書
「母がはじまった(PHP研究所)」
「子供ができて知ったこと(扶桑社)」
「いつか家族でやりたい99の楽しいことリスト(CCCメディアハウス)」
「ほかの子と、ほかの親と、比べてしまう自分をやめたい(KADOKAWA)」

今回は、書籍『母がはじまった』の著者である「むぴー」さんへのインタビューです。
産後の睡眠不足や社会からの孤立、赤ちゃんを可愛いと思えない悩みをどう乗り越えたのかお聞きしました。

育児漫画は「見てほしい」という衝動から。書籍化につながったSNS発信のきっかけ

──むぴーさんがイラストや絵日記の活動を始めたきっかけを教えてください

きっかけは、長男が卒乳した頃に少し時間の余裕ができ、「描くか!」と思い立ったことです。

もともと幼い頃から絵を描くのは好きでしたが、あくまでも趣味で、大人になってからは全く描いていませんでした。漫画の描き方や構成も独学で、最初の頃はとにかく「自分が描きたいものを描く」というスタイルで描いていました。
そして私には“報告したがり”な一面がありまして。せっかく描いた漫画なのだから「誰か見てくれ~」という気持ちでSNSへの発信を始めました

その後、長女を出産した際の入院中に時間があったため、そこから本格的に、ほぼ毎日の育児日記としてSNSへ投稿するようになりました。

── 特に読者の方からの反響が大きかった作品はありますか

書籍『母がはじまった』の元となった漫画、『そして母になる。』という作品には、多くの反響をいただきました。

引用:「母がはじまった」(出版社:PHP研究所 | 著者:むぴー)

この「そして母になる。」という作品は私の実体験を元に描いた、フィクションマンガです。リサという主人公は私ではありませんが、全て私が実際に経験した感情を描いています。

実はこの作品、最初は「せっかくだから、もっと多くの人に見てもらいたい」という思いつきで、自分で育児メディアに売り込みをしたんです。 すると、あるメディアさんが掲載してくださり、それを見た出版社の方から「本にしましょう」とお声をかけていただき、『母がはじまった』という形で書籍化が決まりました。

本を出したくて計画的に動いていたわけではなく、「やりたい」「楽しそう」という衝動のままに行動した結果、それが形になったという感じです。

理想の母親になれない自分を責めて。産後の「暗闇」から抜け出せた瞬間

── 『母がはじまった』の中ではとてもリアルに様々な感情が描かれています。どのような思いで作られたのでしょうか

この作品は、出産直後に誰にも言えず、ずっと心の中にわだかまっていた感情を一つひとつ丁寧に整理したい、そして私が感じた「お母さんそのもの」に焦点を当てたいという思いで作りました。

育児漫画や育児絵日記は世の中にたくさん出ていますが、当時は「うちの子可愛いでしょ」という話や、「育児大変!」というエピソードが多い傾向があると感じていました。でも、私にとって一番しんどかったのは、産後入院中の1週間でした

今まで『ただ一人の女性』として生きてきた世界が、出産を機にガラッと一変しました。 何もできない赤ちゃんの命を預かり、いきなり『母親』にならなければならない。そのあまりのギャップと責任の重さに、当時は気持ちが追いつかず、戸惑うばかりで、赤ちゃんを可愛いと感じる余裕が全くありませんでした

入院生活では助産師さんのサポートがあったけれど、退院後は夫と赤ちゃんとの3人、日中は赤ちゃんとの2人きりの生活も不安でたまらなかったです。

引用:「母がはじまった」(出版社:PHP研究所 | 著者:むぴー)

それでも周りは「おめでとう」と祝ってくれるので、弱音を吐くことができずにいました。

ずっと私の心の中に残っていた、そうした行き場のない感情をすべて漫画に描いたんです。

すると、読者の方から「私もそうだったんです」「言えなかったけど同じように思ってました」という声や、「今ちょうどその渦中にいて、私だけじゃないんだと思いました」というコメントを、想像以上にたくさんいただきました。

ずっと「赤ちゃんを可愛いと思えない私は、母親失格だ」と思っていましたが、共感の声を頂いたことで「あ、私だけじゃなかったんだ」と救われ、過去の気持ちのモヤモヤが、すーっと消えていくのを感じました

「息してるかな?」と眠れない夜。第一子育児の緊張と、3人目で得られた心の余裕

── むぴーさんご自身は産後の生活や感情に変化はありましたか?

一人目の時の「睡眠不足」「社会からの孤立」が辛かったです。

産後はとにかく気が張りっぱなしで、体は疲れているのに眠ることができない状態でした。
特に第一子は抱っこでないと寝ない子でしたが、たまにベッドで静かに寝てくれても、今度は「あれ、息してるかな?」と気になって様子を見てしまうんです。
「明日も一日中この子を守らなきゃいけないから、今のうちに休んでおこう」 そう思えば思うほど、「しっかりしなきゃ」とスイッチが入りっぱなしになってしまい、なかなかリラックスして眠れない夜が続いていました。

引用:「母がはじまった」(出版社:PHP研究所 | 著者:むぴー)

また、赤ちゃん中心の生活リズムになるので、どうしても社会との接点が減り、子どもと二人きりの世界になりがちでした。 意思疎通ができない「宇宙人」のような赤ちゃんと向き合い続ける毎日は、新鮮でありつつも、やはり大人との会話を求めてしまう瞬間もありました

赤ちゃんがいると、ちょっとそこまで外出するだけでも大仕事です。歩いてすぐのコンビニに行きたいと思っても「大変だから我慢しよう」と諦めてしまうのが日常でした。

かといって、夫に預けて一人で出かけても、心から楽しめないんです。夫に「見ているよ」と言われても、「赤ちゃん泣いていないかな」と心配になってしまって。体は外にいても、心はずっと家に残っているような状態でした。

でも、3人の子どもを産んだ今振り返ると、第一子の時は「気を張りすぎていたな」と思います

当時は、子どもが寝ている間は「テレビさえつけちゃいけない」と思うほど必死で、この大変さが永遠に続くような気がしていました。

しかし、2人目、3人目となると、「この辛い時期は数ヶ月で終わる」「1年もすれば歩けるようになる」という見通しが立ちます。

上の子が手伝ってくれるようにもなりますし、「泣いていても少しくらいなら大丈夫」と、良い意味で気を抜けるようになれました
「今は大変だけど、必ず終わりは来る」。そう思えるようになったのは、経験を重ねて少し強くなれたからかもしれません

「どうか今日、少しでも眠れますように」。渦中のママへ伝えたいこと

──今まさにお母さんとして奮闘中の方へメッセージをお願いします

今、まさに奮闘している方には、「どうか今日、少しでもよく眠れますように」と願っていることを切実に伝えたいです。 
もちろん、「時間があるなら寝たいけれど、家のこともしなきゃ……」と、実際には心身を休めることすら難しいのが現実かもしれません。

かつての私も、周りからの言葉が全く響かないほど追い詰められていました。
でも、今の私から、あの頃の私と同じように悩むあなたに伝えたいのは、「今の眠れない日々は永遠には続かないよ」ということです。

子どもはちゃんと成長して、いつか自分でご飯を食べ、自分の足で歩けるようになります。親が常に身体を支えていなくても、子ども1人でいろんなことができるようになります。今は出口が見えない暗闇の中にいるように感じるかもしれませんが、終わりはちゃんとやってくるから、大丈夫ですよと伝えたいですね。

育児絵日記は「自分のため」のリフレッシュ。10年越しに取り戻した「一人の時間」と楽しみ

-最後にむぴーさんのリフレッシュ方法を教えてください

子どもが小さかった当時は、育児絵日記を描くことが唯一のリフレッシュで、自分を保つ手段でしたね。 正直、毎日が大変すぎて「可愛い」と思えるのはほんの一瞬。
でも、そのわずかな瞬間を必死に描きとめ、読者の方に「可愛いですね」と言ってもらうことで、ようやくバタバタの日常を客観視できていたんです。当時は誰かのためではなく、ただただ自分のために描いていました。あとは、チョコモナカアイスを食べてなんとか乗り切っていましたね。

それから10年。子どもたちが学校や幼稚園へ行くようになり、ようやく自分の時間を持てるようになりました。 今はゲームやピアノ、そして大好きだった読書も再開しています。以前は子どもに邪魔されて「どこまで読んだか分からない!」と諦めていた紙の本も、今は図書館に通いつめて心ゆくまで楽しんでいます。

一人の時間ができるまで長い時間がかかりましたが、やっと「自分自身の楽しみ」を取り戻せた気がします。最近は、あんなに欲していた甘いものより、しょっぱいものが食べたい気分です。

(取材:2026年1月)


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