流産、コロナ禍出産、そして緊急手術。波乱を乗り越えたさし身さんが伝えたい「妊娠・出産のリアル」と「信頼のかたち」 【体験談インタビュー】

妊娠・出産
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さし身

大阪出身、服を愛する1児のママ(2026年1月現在)。アパレル関連の仕事に携わりながら、3歳の息子との日常を描いた漫画をSNSで発信中。

今回は、育児漫画家・さし身さんのインタビューです。流産やコロナ禍出産、産後4ヶ月での緊急手術など、波乱続きの日々をどう乗り越えたのか。夫のワンオペ育児で見えた家族の変化や、頑張るママの背中を押すエピソード満載でお届けします。

「誰かの役に立ちたい」育児絵日記をSNSで発信した理由

――さし身さんがイラストや漫画を描き始めるきっかけを教えてください

一番のきっかけは、子育て中の「覚えておきたい!」という瞬間を忘れないように、絵日記として書き残しておきたいと思ったことでした。
もともと美術系の大学に通っていたため、私にとって「絵を描くこと」は日常生活に自然に溶け込んでいるものでした。

当初はあくまで趣味の延長でしたが、育児中に多くの方のSNS投稿に励まされた経験から、「私も誰かの役に立ちたい」という憧れを抱くようになりました
そこで思い切って専用アカウントを開設し、発信を始めました。

流産の経験を経て。何気ない「当たり前」という言葉の重み

――息子さんを授かる前に経験された「流産」についても発信されていますね。どのような思いで発信されたのでしょうか

なにより私自身が「前もって知っておきたかった」という強い思いがあったからですね。

自分が当事者になるまでは、「流産=産む直前や直後に起こるもの」というイメージを持っていました。初期段階での流産があることや、それが決して珍しいことではない、という事実を知りませんでした

さし身さんインスタグラム<流産した話⑧>より引用

初期流産は珍しいことではないからこそ、実は多くの方が人知れず経験されていることかもしれません。私の発信が、妊活中の方や妊娠中の方の不安を少しでも減らし、同じ経験をした方に寄り添うきっかけになればと願っています

また、私自身が、周りからの悪気のない言葉に傷つくこともありました
「結婚したら子どもを産む」「妊娠したら子どもを産める」「1人目産んだら次は2人目」
そういう、世間一般で「当たり前」とされる感覚に違和感を覚えることもあります。

相手の状況をすべて理解するのは難しいかもしれません。しかし、「この人にとってこの言葉はどう響くのかな」と少し想像するだけで、優しさは広がるはずです。
今の私は、あらためて「すべての妊娠・出産は奇跡である」と強く感じています。

さし身さんインスタグラム<流産した話エピローグ>より引用

産まれてこれなかった子のことを考えた結果、もう一度妊活を頑張ってみようと前を向くことができました。その後、ありがたいことに、とよまる(息子)を授かりましたが、無事に産まれてくるまでは本当に心配で……。

職場の方以外にはほぼ誰にも言えず、親に報告したのも妊娠から半年くらい経ってからでした。

孤独な「コロナ禍出産」が教えてくれた、意外なメリット

――つらい経験を乗り越えて、ついに出産!コロナ禍でのご出産だったそうですね

出産も想像以上に本当に大変でした。

長引くつわりに加え、出産当日は吐き気と陣痛促進剤による激痛の「ダブルパンチ」に見舞われました。陣痛は想像を絶するもので、当時は吐き気に耐えながら、一人で悶えるしかありませんでした。

追い討ちをかける辛さが、マスクの着用でした。
いきみたくても呼吸ができない状態で、パニック寸前。さらに、産後すぐに赤ちゃんが検査で連れて行かれ、一人で結果を待つ時間は不安でいっぱいでした。
無事に戻ってきたときは心の底からホッとしましたね。

出産後の入院中は、コロナ禍のため家族との面会は完全に禁止され、1週間ほど隔離状態でした。
しかし、これが意外にもメリットになったと感じています。
誰に気兼ねすることもなく、一人でのんびりと体を休めることに専念できたため、私にとってはむしろ良いリフレッシュ期間になりました。

生後4ヶ月で緊急手術へ。夫の「ワンオペ1週間」がもたらした変化

――ご出産後4ヶ月で、さし身さんが急きょ入院することになったそうですね

産後の検診で卵巣の腫れが見つかり、急きょ手術と入院が決まりました。

それまで夫は、一日中子どものお世話をするという経験がほとんどありませんでしたが、もうやるしかない状況だったので、入院に向けて「特訓」を始めました。
一人でお風呂に入れる練習や寝かしつけの手順を伝え、土日だけでも夫が一人で子どもと過ごす時間を増やしました。できる限り育児のスキルを身につけてもらってから、入院に臨みました

――さし身さんの入院中、初めてのワンオペは無事に乗り越えられたのでしょうか

約1週間の入院中、夫はほぼ一人で息子のお世話をやり遂げました。

最初の1〜2時間は、「泣き止まないんだけどどうしたらいい!?」というLINEが嵐のように来ました。「多分眠いんだと思うよ」と返信して、夫が試行錯誤して、「あ、こうやったら寝たわ!」と学ぶ。その繰り返しでした。

言葉で「一日中泣いてて大変だよ」と説明しても、やっぱり体験しないと分からないものです。「子どもって泣くもんだから」で済まされがちなところを、実際に「泣き止まないしんどさ」を肌で感じて乗り越えた経験は、夫にとってもとても大きなものだったと思います。

退院後、夫は「泣いていても俺一人で見れる」「これでも大丈夫」という自信がついたようです。
私自身も「私じゃなきゃダメ」という意識がなくなりました
夫との1週間を経たおかげで、子どももパパといることにすっかり慣れてくれたようです。
今では、パパに寝かしつけを任せて、私が一人でゆっくり休む時間も持てるようになっています。

「ママじゃなきゃダメ」は思い込み? パートナーを信頼する大切さ

――産後ワンオペ育児で頑張っているママさんへメッセージをお願いします

「ママじゃなきゃダメ」ということは、実はそれほど多くないはずです。
最初は任せるのが不安だと思いますが、一人で抱え込みすぎると自分を追い詰め、パートナーへの不満も積み重なってしまいます。
夫婦仲良くやっていくためにも、思い切って任せてみることも大切だと思います。

パートナーさんの「練習」だと思って、最初は数時間からでもいいので、ママがいない時間をつくってみてほしいです。
私のように予期せず入院することだってあるかもしれませんし、その時に一から伝えるのはなかなか難しいものです。パートナーさんにとっても、子どもとの信頼関係を築く大切な機会になります。
夫婦で穏やかに子育てを続けるために、ぜひチャレンジしてみてほしいと思います。

よく食べてしっかり寝ること、ぬいぐるみ作りでリフレッシュ

――さし身さんのリフレッシュ方法を教えてください

私のリフレッシュ法は「食べる・寝る・趣味」の3つです。 そのなかでも最優先にしているのは「睡眠」です。やることは山積みでも「家事は後でいい!」と割り切って、土日は子どもと一緒に昼寝をして体力を回復させています。

趣味では、最近「推しのぬいぐるみ作り」にハマっています。 YouTubeを参考に、初心者ながら材料を買い込んで熱中する時間が楽しいです。

ただ、手芸が好きと言っても「作らされる」のは苦手です。入園グッズなど必要に迫られ「やらなければならない」ものは、迷わず既製品を買います(笑)。
あくまで「自分がやりたい時」に、無理せず楽しむのが長続きの秘訣ですね。


(取材:2026年1月)


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