ナプキンの備品化から始める「誰もが安心して働ける職場環境づくり」【花王 田村 優樹】

目次
ロリエブランド商品のマーケティングを担当
ー田村さんのご経歴について教えてください
2016年に花王グループカスタマーマーケティング株式会社に入社し、店舗様やチェーン本部様への営業を8年間担当していました。
2024年から花王株式会社サニタリー事業部に異動し、生理用品ブランド「ロリエ」のマーケティングを担当しています。「しあわせ素肌」や「肌きれいガード」の商品マーケティングを担当しながら、ブランド活動の一つである「職場のロリエ」も推進しています。
「職場のロリエ」プロジェクトのきっかけ

ー「職場のロリエ」について教えてください
「職場のロリエ」は、企業の福利厚生の一環として、トイレットペーパーと同じように、職場のトイレにナプキンを備品として設置することを推進するプロジェクトです。2022年から「職場のロリエ」の活動を進め、現在は440社を超える企業の皆様にご賛同いただいています (2025年5月時点)。
働く人にとっては急な生理の際もナプキンの心配がなくなり、周囲の生理への理解が促進され、より働きやすくなる。導入企業にとっては社員が安心して働ける環境づくりの1つになる。働く人と企業の双方にうれしい環境づくりを、賛同してくださる企業と一緒に推進すべく、花王が専用BOXを無償で提供し、ナプキンは導入企業に福利厚生の一環として購入いただいています。
さらに導入企業には、花王が制作した生理の基礎知識やケーススタディをまとめた研修動画「生理を知る。考える。」を提供し、社員が安心して働ける環境づくりへの具体的なサポート方法を提案しています。

設置するナプキンはロリエの「スリムガード」を推奨とさせていただいていて、その購入先や運用方法などについては、導入企業にお任せするシンプルな仕組みになっています。
ー導入のハードルが低いというか、とても自由度が高いのですね
そうですね。実際に導入を検討している企業様にご説明すると「思っていたよりも自由なんですね」と驚かれることもあります。
職場環境は多岐にわたりますので、こちらでルールを固めずにそれぞれの職場にあった形で進められるように、運用方法は各企業様にお任せしています。補充に関しても、清掃会社に委託していたり、総務部が担当していたりと、ケースはさまざまですね。同じ企業でも工場と本社で運用の仕方が異なるということもあります。もちろん、導入を検討している企業様にヒアリングしながらこちらからも運用方法などはご提案させていただきます。

ー導入の際、企業の方が気にするのはどのようなことでしょうか?
費用や運用についてのご質問が多いです。費用については、ナプキンの必要枚数を試算してお伝えしています。対象となる方の人数に加え、リモート勤務がある場合は出社率などもヒアリングし、これまでの導入企業様の実績等も参考にして必要枚数や費用感をお伝えできるようにしています。
運用に関しては、誰が・いつ・どのように補充するかというのは取り決めが難しいときもありますが、300社以上導入いただいた中で蓄積された対応方法を踏まえてご提案させていただいています。
ー「フェムケア」という言葉が知られるようになり、企業も女性従業員の支援、働きやすい環境づくりに取り組まなければという空気が生まれていますね
そうですね。企業としてどのようにアプローチするか悩まれるかもしれませんが、ナプキンの備品化によって働く女性の心配事を少しでも減らすことができるので、置くことから始めてみるだけでもいいと思います。それが社員の帰属意識やエンゲージメントに寄与することも、ぜひお伝えしたいことですね。
生理の症状には個人差があるので、女性同士も違いを知って寄り添い合えるようになれたらいいですし、理解した上で何ができるのか、どのように考えるべきかを、多くの方に考えていただきたいですね。
ーとても素敵なプロジェクトですね。提供のきっかけは何だったのでしょうか?
入社1〜3年の社員に職場での悩み事を聞いたことがあったのですが、その時に生理の困りごとがあることが分かり、さらに広くWebアンケートを取りました。
「仕事中に急に生理になってしまった時、ナプキンがなくて困った」「時間がなくて、ナプキンを取り替えずに我慢している」などの声を受け、「生理をもっと過ごしやすく」というブランドパーパスを掲げるロリエができることとして「職場のロリエ」をスタートしました。

(https://www.kao.co.jp/laurier/project/shokuba/ より引用)
ー田村さんご自身は男性ということもあり、生理について実感しづらい部分もあると思いますが、どのように取り組んでいらっしゃいますか?
そうですね、よく聞かれることではありますが、このプロジェクトに男性が携わることの意味は大きいと思っています。
「職場のロリエ」は生理時に使用するナプキンを備品化する活動ではありますが、根底にあるのは「職場を少しでも働きやすくしたい」という想いです。
その想いに性別は関係ないですし、花王グループでは誰もがあらゆるブランドに携わる可能性があります。必要とする人に商品を届けたいという想いはどのブランドを担当していてもどの職種であっても共通ですね。
「職場のロリエ」は導入企業と共に発展させるプロジェクト 小さなアクションから働きやすい職場環境につながる
ー「職場のロリエ」の今後の展開を教えてください
今後は、「ナプキンの備品化」という一つのアクションが、実は「職場環境を変えるひとつのきっかけ」になることをメッセージとしてしっかりお伝えしていきたいと思います。ちょっとした行動や取り組みで働きやすさが変わる、それが伝わる活動にしていきたいです。
「職場のロリエ」を導入してくださっている企業と私たちとで一緒に発展させていきたいので、導入後にも企業様に寄り添って、一緒に職場環境を考えるようにしていきたいですね。
花王 公式noteで「職場のロリエ」の導入事例を公開中
「大手ゼネコンの大林組さんが「職場のロリエ」にかける想いに迫る!」
ー社内からの反響はいかがですか?
2024年7月に、「職場のロリエ」をさらに広める社内アンバサダーを募集した際のエピソードをご紹介させてください。
もともと100人集まってくれたらうれしいと思っていたところ、なんと580人を超える社員に手を挙げていただいただけでなく、そのうちの4割が男性だったことも嬉しかったです。
職場のロリエの公式HPにつながる二次元バーコードを記載した名刺サイズのカードを通して、得意先の企業の方、家族や友人に職場のロリエを紹介いただくのが活動内容なのですが、実際にアンバサダー経由でのお問い合わせもありました。

アンバサダー同士で社内チャットを通じて活発にアイデアを出し合ったりしていますので、ブランドのひとつの活動を、みんなが応援してくれているのがうれしく、やりがいになっています。
そのほかにも、「職場のロリエ、いいね」「イベントで紹介するよ」と言ってくれる人もいて、同じ想いを持ってくれている人が花王グループにはたくさんいることが素敵なことだと思っています。ブランドはたくさんありますが、こんなに応援してもらえる活動は他にないのではないかと思っています。
ー読者の皆さんにメッセージをお願いします
「職場のトイレにナプキンを備品として置く」というひとつのアクションが、誰もが安心して働ける職場づくりのきっかけになるかもしれないとの想いで日々頑張っています。
ご意見があればしっかり耳を傾けて、賛同いただいた企業の皆様と一緒に、職場に安心を置く「職場のロリエ」を広めていきたいと思っていますので、ご興味を持っていただけたらうれしいです。

大切にしているのは忙しくても立ち止まること
ーお仕事がとても忙しそうですが、田村さんのリフレッシュ方法を教えてください
趣味らしい趣味があるわけではないので、家族と過ごし、5才と3才の子どもと遊んだりすることが一番のリフレッシュですね。最近は口も達者になってきてわんぱく盛りの子供たちですが、とてもかわいい存在です。
そして、忙しく、せっぱつまった時こそ、一度立ち止まる時間を大事にしています。立ち止まることは勇気が必要なときもありますが、「この仕事はあの仕事と連動しているから、一つ終えれば思ったより忙しくならないかもしれない」など、整理する時間を持つことでゆとりが生まれ、結果的に効率良く進むというのが、社会人となった9年間で身につけ大事にしていることです。
あとは、なるべく終わりの時間を決め、ダラダラしないようにしています。決めた時間に仕事が終わらなければ、自分の業務を見直すきっかけにもなりますので、今日はここまで、あとは明日の自分に期待しようぐらいの思い切りを持って仕事を終え、家に帰って子どもと遊んだりしています。
(取材:2024年12月)
本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。