産後ケアを当たり前に。ママの笑顔が家族の笑顔につながる場所「マームガーデンリゾート葉山」【マムズ 斎藤 睦美】
目次
自身の経験を社会課題の解決に活かしたい
― 斎藤さんのこれまでのご経歴と、現在のマームガーデン代表に至るまでの経緯をお聞かせください
幼い頃から保育園や幼稚園の先生という職業に憧れていて、大学では保育士と幼稚園教諭の資格を取得しました。その一方で、父が会社経営をしていたこともあり、民間企業が社会課題を解決していく姿勢にも大きな魅力を感じていました。
新卒で選んだのは、保育園などの先生ではなく、発達に遅れのあるお子さんとそのご家族の支援を行い、「障害」という個と社会の間に生じる社会課題をビジネスの力で解決することを目指した会社でした。社会課題に向き合う現場を経験して、あらためて自分の経験を生かして課題解決ができないかと考えるようになりました。
父はエンターテイメントやサービス業を営んでいます。過去には「不良の溜まり場」とされていたカラオケ店を明るく安心できる場所にしたり、「貧者の宿」と言われていたカプセルホテルを安全で快適な空間に変えたりと、独自の視点で社会課題の解決に取り組んでいました。その姿を見て、私も「サービス業を通して、社会課題を解決したい」という想いを強く抱くようになったのだと思います。
自分自身の想いや経験を活かせる場所はないかと模索する中で、父の会社であるNSグループに入社しました。ちょうどその頃、「企業主導型保育事業」を政府が推進していたこともあり、2016年に新宿で保育園を立ち上げ、園長を3年間務めました。
自社の女性スタッフが働きやすい環境を整えると同時に、地域の方々にも安心して通える園として喜んでいただくことができたのはうれしかったですね。
姉の出産で感じた「産後ケア」の現状と課題
ーそこから産後ケアホテル「マームガーデンリゾート葉山」の立ち上げに至るわけですが、きっかけは何だったのでしょうか
きっかけは、姉の出産でした。仕事のできる姉が、産後、想像以上に心身ともに弱っている姿を目の当たりにして衝撃を受けると同時に、産後の大変さを改めて実感しました。
そして、産後ケアの現状を知るきっかけにもなりました。姉は民間と公営の産後ケア施設を利用していましたが、選択肢は少なく、様々な条件で希望通りに利用できないことも多くありました。
産後ケア施設の数が少ないだけでなく、そもそも産後ケアを希望する側の課題自体も十分に理解されていないということを強く感じました。
そこで、グループ会社でホテルや飲食事業、そして保育園を運営している強みを活かして、「産後ケアホテル」という形で社会貢献できないかと考えたのが、マームガーデンリゾート葉山の立ち上げの経緯です。
― 前例のない産後ケアホテルの立ち上げには、苦労も多かったのではないでしょうか
そうですね。立ち上げると決まってから、場所やオープンするタイミングはトントン拍子に進みましたが、前例のない47室という日本最大規模の産後ケアホテルということもあり、多くの壁にぶつかりました。
特に苦労したのは、「どんな産後ケアホテルを作りたいのか」というビジョンを明確にすることでした。
産後ケアが必要とされていることは理解していましたが、私たちが提供すべき価値は何か?お客様が求めていることは何か?を考えながらサービスをつくっていかなければいけない状況でした。
オープンして半年間、利用者の方々の様子を見ていく中で、ただ産後ケアを提供するのではなく、リゾートホテルのようにリラックスできる場所を提供し、産後を楽しんでいただきたいという思いがより一層強くなりました。それからは、サービスの解像度、やりたいことの解像度がぐっとあがり、迷いなく進めています。
サービスのコンセプトが明確になり、スタッフ一人ひとりの意識も大きく変わっていきました。
産後ケアという選択肢で出産・育児をポジティブに
― 利用者の方々の反応はいかがですか
オープン当初は、「病院のような場所」をイメージして来られる方も多く、チェックインするときも入院日とおっしゃる方もいました。ご利用いただく方から医療寄りのサービスを求められていたことに影響をうけ、施設自体も医療っぽい雰囲気になってしまっていたのが最初の反省点です。
その後リゾートホテルのような空間作りを進め、アフタヌーンティーやバーベキュー、ベビーマッサージ教室など、産後を楽しめるサービスを充実させていくうちに、「産後が本当に楽しかった」「マームガーデンに泊まることが楽しみで出産をがんばれた」「また利用したい」といった喜びの声をいただくことが増えました。
特に、印象的だったのは、「マームガーデンがあったから、二人目を産もうと思えました」という言葉です。
出産・育児に対する不安を抱えている女性は少なくありません。産後ケアという選択肢を知ることで、妊娠期間中の不安を払拭できたり、産後の不安が楽しみに変わるのであれば、それは本当にうれしいことです。マームガーデンを立ち上げて本当によかったなと思います。
― マームガーデンの特徴は何でしょうか?
大きく分けて二つあります。
一つは、日本最大級のリゾート型産後ケアホテルであるということです。都心からわずか1時間という好立地にありながら、豊かな自然に囲まれた環境で、心身をリフレッシュできます。
オーシャンビューの客室、産後ケアに特化したエステやヨガ、専属シェフによる美味しい食事など、ホテルならではのホスピタリティ溢れるサービスを提供しています。
そしてもう一つは、施設全体が産後ケア専用の空間であるということです。宿泊者は、全員が産後間もない母親とその家族です。
円座クッションが当たり前のようにソファの上に置いてあったり、授乳室では汗だくのママたちが赤ちゃんと戦っている姿に出会えたり(笑)周囲の目を気にすることなく、リラックスして過ごすことができます。
なにより、産後すぐという同じ境遇のお母さんたち同士で「みんな同じように悩んでいるんだ」「一人で抱え込まずに、周りに頼っていいんだ」と、安心感を得られるという声もいただいています。
― 今後の展望や、新たに展開していきたいことを教えてください
産後ケアを当たり前にしていくために、何ができるのかを探っていく必要があると思っています。
産後ケアを受ける必要性を知っていただくことが、マームガーデンの使命でもあると思っています。そして、産後ケアホテルを利用しやすくするためにも、様々な取り組みを行い利用例が増える試みをしていきます。
最近だと、去年の9月に「ふるさと納税」でマームガーデンが利用できるようになったのですが、今では利用者の5組に1組がふるさと納税を使って宿泊をしています。また、ふるさと納税を使用し祖父母や同僚からプレゼントとして贈るシーンも増えてきました。
産後のご家族にフィットし、新たな過ごし方の提案が出来るよう、チャレンジを続けていきたいです。
ママが笑顔でハッピーに過ごすための準備を整えて!
― 最後に、これから出産を控えている方、妊娠中の方へメッセージをお願いします
出産はゴールではなくて始まりです。
妊娠期間中には、「赤ちゃんのための準備」だけでなく「自分のための準備」も大切にしてください。
ひとつ赤ちゃんのための準備をしたら、ひとつママの準備も進めてほしいですね。赤ちゃんの寝床の準備をしたのであれば、私の睡眠時間の確保は大丈夫かなとか。赤ちゃんのミルク、おっぱいのことを気にしたなら、私の産後の食事はどうしようかなとか。つい赤ちゃんだけに意識が向いてしまいますが、ママのことも同時に考えてみてほしいと思います。
家庭の中で大切なことは、ママが笑顔でいることだと思います。ママが笑顔でハッピーに過ごすための準備をしてほしいですね。
出産は、本当に大変なことです。もしも「つらい」「苦しい」と感じることがあれば、一人で抱え込まずに、周りの人に相談してください。そして、産後ケアサービスを利用することで、少しでも心身ともに余裕を持って、赤ちゃんとの時間を大切に過ごしてほしいと思います。
私たちマームガーデンも、ママたちが笑顔で過ごせる社会の実現をサポートしていきたいと考えています。
モヤモヤしない思考を持つこととお風呂に浸かってリラックス
― 最後に、斎藤さんご自身がモヤモヤしたり悩んだりした時、気分転換にされていることを教えてください
モヤモヤしないための考え方として、「行為を恨んで人を恨まず」という父の言葉をいつも意識しています。反省すべきことや改善すべきことがあった時には、人を責めるのではなく、その行為を振り返り反省し、まずは自分にできることは何かを考えるようにしています。
とはいえ、モヤモヤした時の気分転換に効果的なのは、やはりお風呂ですね。シャワーのみだと、1日の疲れをリセットできなくて、眠るときまでどうしても仕事モードをゆるめられないんです。なので、熱めの湯船に浸かり、強制的に心と体をオフにしています。時間があるときは、近所の銭湯に行くこともありますよ。