妊活中の頭痛…薬を飲んでも大丈夫?【お悩み相談室】

妊活・不妊
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今回は「妊活中に頭痛が続き、市販薬を使っていいのか不安」という30代女性からのご相談です。薬はなるべく避けたいと思いつつも、痛みを我慢し続けるのもつらいとお悩みのご様子です。

妊活中に気をつけたい薬の使い方と、安心して過ごすための考え方について、薬剤師がアドバイスします。

妊活を始めてから、うまくいかないストレスからか頭痛がつらい日が多くなりました。市販の頭痛薬を飲んでいるのですが、そういえば妊活中から薬を気にしなきゃダメだったのではないかとより頭を抱えています。
痛みがひどいと仕事にも支障が出るので、痛いと思ったらすぐにでも薬に頼りたいのが本音です。でも妊活中だし、今後妊娠できた時もなるべく飲まない方がいいと思うので、できるだけ我慢した方がいいですよね?
妊娠中でも飲める薬があるのは知っていますが、薬はリスクとも聞くので…。
我慢できる範囲はひとそれぞれだと思うのですが、我慢する目安などありますか?
薬を飲むとなったら出来るだけ罪悪感なく飲みたいので専門家さんのご意見を聞きたいです。

(30代、女性、ハンドルネーム:憂鬱日和、職種:事務・オフィスワーク)


最初に

妊活を始めてから、なかなか思うように進まないことへのストレスもあってか、頭痛に悩まされる日が増えているのですね。
仕事にも支障が出るほどの痛みがあるなか、「薬を飲まない方がいいのでは…」と考え始めると、さらに不安や罪悪感が募ってしまうお気持ち、とてもよく分かります。

妊活中は「体に取り入れるものが赤ちゃんに影響するかもしれない」と考える機会も増えるので、
慎重になるのはごく自然なことですし、それだけ真剣に妊娠に向き合っている証拠でもありますね。

ただ一方で、頭痛がつらい状態のまま日々を過ごすのは本当に大変なことだと思います。
薬を我慢することでストレスや緊張が高まり、かえって痛みが悪化してしまうこともあります。

「薬に頼るのは悪いことではない」と分かっていても、「妊活中だし…」とためらってしまうお気持ち、とても繊細でまじめだからこそのお悩みだと感じます。

薬を「我慢か飲むか」よりも「安心して選ぶ」視点

今のお悩みに対しては、まず「妊活中でも安全に使える薬や対処法がある」と知っておくことで、安心感をもって過ごせる状態を目指せると良いかもしれません。


たとえば、

「頭痛を我慢するか、薬を飲むか」の二択ではなく、
「薬を飲むならどれが安心かを、専門家と相談して決める」という視点を持てるようになると、不安と痛みのはざまで悩む時間がぐっと減るはずです。


また、「痛みが起きたときにどうするか」だけでなく、
「日常的に頭痛を予防・軽減する方法を取り入れる」という視点を持つことも、今後の安心感につながると思います。
頭痛の頻度や強さが減ると、薬に頼らなくても過ごせる日が増え、自信もついてきます


つまり、

・痛みがつらいときには、必要なときに適切な薬を使えるようにしておく
・それと並行して、日常生活の中で頭痛やストレスを減らしていく工夫を取り入れる


この2つをバランスよく両立できると、妊活中でも安心してご自身の体調を守っていけるのではないでしょうか。

妊娠超初期の薬の影響は「全か無か」

妊活中はホルモンバランスが変化しやすく、また「妊娠しなければ」という心理的ストレスも大きいため、頭痛が起こりやすい時期です。
実際に、緊張型頭痛や片頭痛が悪化する方もいらっしゃいます。


薬についてですが、確かに妊娠の可能性がある時期は慎重になる必要があります。
ただ、「妊活中だから一切飲んではいけない」というわけではありません


特に、受精後2週間(妊娠3週末)以内の「妊娠超初期」と呼ばれる時期は、「全か無かの法則」といって、薬の影響を受けた場合でも、受精卵が影響を受けたときは受精能力を失って着床せず妊娠が成立しないか、あるいは完全に修復されて影響を残さずに発育すると考えられています。

つまり、この妊娠超初期の時期に薬を服用しても妊娠が継続した場合は、基本的に胎児への影響は考慮しなくてよいということです。
この時期はまだ妊娠に気づいていないことも多く、「後から薬を飲んでしまった」と不安になる方もいますが、流産にならず妊娠が継続した場合は薬の影響はまず残らないと考えられています。
ですので、過度にご自身を責める必要はありません。

使っていい薬を医師と確認しておこう

ただし、妊娠が成立している可能性が高まる妊娠4週以降(生理予定日を過ぎた頃)では、薬の種類によっては慎重な判断が必要になります。

特に、ロキソニン(ロキソプロフェン)などNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、妊娠初期から使用を控えた方がより安全とされており、妊娠中期以降(おおむね妊娠20週以降)では服薬が「禁忌」とされています。

これは、胎児が母体から酸素を受け取るために使っている「動脈管」という血管を、NSAIDsが収縮させてしまう恐れがあるためです。
動脈管は胎児期にだけ存在する血管で、ここが閉じてしまうと胎児に深刻な影響を及ぼす危険があります。


そのため、妊活中や妊娠の可能性がある時期に頭痛薬を使う場合は、事前に医師や専門家に相談し、妊娠中でも安全性が比較的高いとされる薬を処方してもらうのが安心です。
そうすれば痛みが強いときにもためらわずに使えますし、「これは使って大丈夫」と分かっているだけで精神的な安心感も大きいです。

頭痛をやわらげる生活習慣とセルフケアのコツ

また、薬に頼らずに頭痛を和らげる方法としては、次のようなセルフケアも有効です。

睡眠・休息をしっかりとる
カフェインやアルコールを控えめにする
・首肩のストレッチや軽い運動で血流をよくする
・頭や首を冷やす/温める
気分転換になること(趣味、散歩、音楽など)を取り入れ、ストレスを減らす

これらは頭痛予防にもつながりますし、ストレス軽減によって妊娠しやすい心身の状態をつくることにも役立ちます。

最後に

「妊活中だから我慢しなければ」と思いすぎるよりも、「痛みが強いときは安心できる薬を使い、普段からセルフケアで予防する」というスタンスで、無理なくご自身の体調を守ってあげてくださいね。

なによりもまず、あなた自身が心身ともに元気でいることが、未来の赤ちゃんにとってもいちばん大切なことですよ。

<参考文献・出典>

公益社団法人 日本産婦人科医会
▶妊娠と薬:https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%882%EF%BC%89%E5%A6%8A%E5%A8%A0%E3%81%A8%E8%96%AC/

公益社団法人 日本産科婦人科学会
▶産婦人科診療ガイドライン-産科編2023:https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2023.pdf

<本記事の回答者>

北里大学薬学部卒業後、総合病院産科病棟で勤務した経験をもとに、主に妊活~授乳期にかけての薬の飲み合わせやお子さんの予防接種についてのご相談を専門にしています。私たちの日常のそばにある薬だからこそ、正しく使っていただきたい、そんな思いで回答しております。薬について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。


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