「PMSに当帰芍薬散ってどうなの？」知っておきたいポイント【お悩み相談室】
PMSで頭痛・むくみ・気分の落ち込みがつらく、当帰芍薬散を試すべきか迷っている20代の女性からのご相談です。冷えや生理中の重だるさもあり、自己判断で市販薬を買うか、受診して選ぶべきか悩んでいるとのこと。
漢方の選び方や注意点、漢方以外の選択師も含めて薬剤師がやさしくアドバイスします。
PMSの症状がつらく、最近、当帰芍薬散を試してみようか迷っています。特に生理前になると、頭痛やむくみ、イライラに加えて、気持ちが落ち込むことが増えてきました。市販薬や鎮痛剤では根本的に改善していない感じがします。
もともと冷え性で血行が悪い自覚があり、生理中は下腹部の重さや肩こりが強く出るタイプです。知人から「当帰芍薬散が合うかも」と聞きましたが、手軽に自分で買って使ってみるか、医師に処方してもらうためにクリニックに行くかも迷っています。
実際に服用した方の効果の感じ方や、注意点なども知りたいです。
（20代、女性、ハンドルネーム：柚子こコ、職種：事務・オフィスワーク）
最初に
生理前になると心も体もつらくなるのは、とても大変なことだと思います。
今回のご相談では「頭痛やむくみ、イライラに加えて気持ちの落ち込みが強くなってきた」とのことでしたね。
市販薬や鎮痛剤を使っても根本的に良くなっていない感じがしていること、その上で知人からすすめられた当帰芍薬散を試すべきか迷っているお気持ちが伝わってきました。
また、ご自身が「冷え性で血行が悪い」と自覚されている点や、生理中に下腹部の重さや肩こりが強く出るタイプだと丁寧に振り返られている姿勢も印象的でした。
症状を整理しながら改善の糸口を探していること自体が、ご自身の体を大切にされている証拠だと思います。
どうか今のしんどさを一人で抱え込まず、相談してくださったことをまずは労いたいです。
まずは“目指す状態”を整理する
PMSの症状は人それぞれ異なり、「こうなれたら少し楽になれるかも」という方向性を持って取り組むのが大切です。
今回のご相談では、冷えやむくみといった体の症状に加えて、イライラや気分の落ち込みといった精神面のつらさも強い印象を受けます。
そのため、まずは「体の冷えやむくみが改善して、少しでも体が軽くなる」ことができると生活全体の負担が和らぐかもしれません。
また「気分の落ち込みが生理前でも強く出にくくなる」ことも大切なゴールになりそうです。
知識の面では「市販薬と病院処方薬の違いを知って選べるようになる」「自分の体質に合う漢方がどれかを見極められる」「漢方以外の治療法も選択肢として持てる」などを知っておけると安心できるでしょう。
つまり、ご自身で判断してすぐに試すよりも、まず専門家に体質をみてもらい「当帰芍薬散が本当に合うかどうか」を確認する方が、遠回りのようでいて結果的には改善への近道になる場合が多いです。
当帰芍薬散はどんな人に合う？
PMSは女性ホルモンの変動が大きく影響すると考えられており、体の症状と心の症状が複雑に絡み合います。
漢方では「気・血・水」のバランスの乱れとして整理され、症状の現れ方によって処方を選んでいきます。
・気の乱れ（気滞）：イライラ、怒りっぽさ、抑うつ感など精神症状が中心 → 加味逍遥散
・血の滞り（瘀血）：頭痛、腹痛、腰痛、肩こりなど痛みや重さが中心 → 桂枝茯苓丸
・水の滞り（水毒）：頭痛、むくみ、吐き気、めまいなど水分代謝の乱れ → 当帰芍薬散
当帰芍薬散は、冷えやむくみ、めまいを伴いやすい方に合うことが多く、比較的早めに効果を実感する人もいます。
ただし、今回のご相談のように「イライラや落ち込み」といった精神症状が強い場合には、加味逍遥散が候補になることも少なくありません。
どちらが合うかは自己判断が難しく、体質の細かい部分を医師や薬剤師に確認してからの方が安心です。
専門家に相談するメリット
市販の漢方薬は医療用に比べて生薬の配合量が少ないものが多く、効果を実感できずに長期間続けてしまうこともあります。
副作用としては当帰芍薬散では胃もたれなどの副作用が出ることもあり、持病や他の薬との飲み合わせによっては注意が必要です。
自己判断で漫然と続けるよりも、まずは専門家に相談することをおすすめします。
PMSを軽くする選択肢と生活習慣
PMS対策には漢方だけでなく、低用量ピルという選択肢もあります。
排卵を止めてホルモン変動を小さくすることで、身体症状・精神症状ともに改善が期待できます。
ただし妊活中の方には適さないためライフプランに応じて選択が必要です。
そして忘れてはいけないのが生活習慣です。
体を冷やさない、十分な睡眠、ストレスケア、栄養バランスのとれた食事などが、漢方の効果を引き出す大切な土台になります。
最後に
まとめると、相談者さんには冷えやむくみといった症状があるため当帰芍薬散が合う可能性はありますが、
イライラや気分の落ち込みが強い点も考慮すると、専門家に体質を診てもらってからご自身の体質に合った漢方薬の服用を開始するのが最も安心で効果的です。
ご自身の症状に合わせた適切な方法を選ぶことで、少しずつ今のつらさが和らいでいく可能性が高まるかと思います。
＜本記事の回答者＞
北里大学薬学部卒業後、総合病院産科病棟で勤務した経験をもとに、主に妊活～授乳期にかけての薬の飲み合わせやお子さんの予防接種についてのご相談を専門にしています。私たちの日常のそばにある薬だからこそ、正しく使っていただきたい、そんな思いで回答しております。薬について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
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