「仕事終わりの一杯」は妊活にNG?アルコール完全断ちはキツイです【お悩み相談室】

今回は、妊活のために病院に通い始めた30代男性からのご相談です。
医師から「アルコールは控えめに」と言われたものの、仕事終わりや週末の飲み会が唯一の楽しみで、完全にやめるのはつらいとのこと。
男性側の飲酒は妊活にどの程度影響するのか、また具体的にどこまで気をつければ良いのか、管理栄養士が解説します。
妊活のために病院に通い始めたところ、医師から「アルコールは控えめに」と言われました。頭ではわかっているんですが、仕事終わりの一杯が唯一の楽しみで…。週末に友人と飲む時間もストレス発散になっているので、完全にやめるのは正直きついです。妻には「妊活のために協力して」と言われてるけど、自分の気持ちにも折り合いをつけたいと思っています。そんなに悪いものなのか、男性側がどこまで気にすればいいのか、詳しく知りたいです。
(30代、男性、ハンドルネーム:妊活中男性、職種:ITエンジニア)
最初に
妊活中男性さん、ご相談ありがとうございます。
妊活のために病院に通い始めたところ、飲酒についての指摘があったとのこと。
ご自身の楽しみもある中で、妊活のために生活を変えようとお考えなのですね。
とても素晴らしいと思いました。
今回は飲酒と妊活の関係について、お伝えしていきますね。
男性不妊の種類と原因
まず、男性不妊の種類と原因についてお伝えしていきます。
男性不妊は大きく分けて3つの原因があります。
①射精される精液の中の精子の数が少ない、もしくは運動率が低下している、あるいはその両方の場合(造精機能障害)
②勃起ができず挿入できない、勃起はするが射精がうまくいかない、あるいはその両方(性機能障害)
③精子は作られているものの精子の通り道(精路)のどこかが閉塞しているため精液中に精子がない(精路通過障害)
造精機能障害の原因は、精巣の上にある静脈にこぶができてしまう精索静脈瘤や造精機能を司るホルモンの分泌低下、
停留精巣の術後、精巣炎や染色体異常などがありますが、多くのケースでは原因不明とされています。
性機能障害は神経障害や糖尿病、心因性、薬剤性が原因とされています。
精路通過障害の原因には、先天性の両側精管欠損や精巣上体炎後の炎症性閉塞、鼠径ヘルニア手術等があります。(※1)
喫煙・アルコール・高温環境を避ける意味
男性不妊の治療としては、原因に合わせて内科的治療(薬物療法)や外科的治療(手術)を行いつつ、人工授精や体外受精などの不妊治療も合わせて行うことで、妊娠を目指していきます。
中でも内科的治療としては、生活習慣等、男性不妊の原因になりうる因子の除去が重要とされています。
具体的には、精子形成や射精を障害する可能性がある薬剤、喫煙、アルコール過剰摂取等、男性不妊の原因になりうると考えられるものがあれば、可能な範囲で中止していきます。
また、サウナや長時間の入浴、ひざ上でのコンピューター使用等、精巣を長時間の高温環境におく可能性がある因子はできるだけ避けるべきと考えられています。(※2)
妊活は「協力関係」を育てる練習期間
精液の所見に対し何か特別な治療が必要な状態ではなかったとしても、妊活をするにあたって、生活習慣等男性不妊の原因になりうる因子を取り除いていくことはどんな方にとっても妊娠に向けての近道になるのではないでしょうか。
妊活のために病院に通い始めたとのことなので、パートナーの方は不妊の検査や治療のためにご自身以上にお体の負担やお気持ちの面でも頑張っていらっしゃる状況なのではないかなと思いました。
ここできちんと同じ方向を向いて、どれだけ足並みを揃えて進むことができるのか、どれだけ寄り添うことができたのかは、お二人のこれからの人生にとても大きな影響を与えます。
ここから先に訪れる妊娠や出産、育児は妊活以上にお二人が協力していく必要があります。今の時点からその練習と捉えて、力を合わせていけたら良いですね。
「どのくらい飲んでいいの?」具体的な飲酒量の目安
さて、具体的にはどれぐらいの量のアルコール飲料の摂取が過度の飲酒となるのでしょうか。
不妊治療の分野においては、アルコールの摂取量についての基準はありません。
しかし女性の排卵障害の原因の1つである多嚢胞性卵巣症候群では肥満も1つの因子である(※3)こと、
男性も糖尿病が男性不妊の原因となりうる(※1)ことから、今回は生活習慣病予防といった視点でのアルコール摂取の基準で考えていきたいと思います。
厚生労働省の「健康日本21(第二次)」では、生活習慣病のリスクの高い飲酒量(純アルコール量)として、男性1日平均40g以上、女性20g以上としています。
また一般的に、週に2日間程度の休肝日を設けることも推奨されます。(※4)
お酒に含まれる純アルコール量(g)の算出式は以下のようになります。
摂取量(ml) × アルコール濃度(度数/100)× 0.8(アルコールの比重)
例としてビール500ml(5%のアルコール濃度)の場合の純アルコール量は 500(ml) × 0.05 × 0.8 = 20(g) となります。(※5)
具体的な一日の飲酒量としては、ビール500ml(5%のアルコール濃度)を2杯にとどめて、週に2回の休肝日を設けましょう。
厚生労働省のホームページ上では、飲酒量を計算することができるサイトも公開しております(https://izonsho.mhlw.go.jp/alcoholwacth/)。(※6)
ご自身の一回当たりの飲酒量を計算し、基準と比べてどうなのかを比較してみると今後のお酒の場での気を付けるべきポイントも把握することができますね。
最後に
今回は妊活と飲酒についてのご相談でしたが、
子どもを持つことがゴールではないということもぜひ覚えておいていただきたいです。
どうしてもやめられないから、今が楽しいからと過度な飲酒を繰り返しているとご自身の楽しみであるお酒をやめなくてはならないほど、健康を害してしまうこともあります。
妊活の為はもちろんなのですが、その先の未来を元気に過ごしていく為にも
過度な飲酒になっていないかどうか、見直してみてくださいね。
<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています
一般社団法人 日本生殖医学会
▶生殖Q&A Q4.不妊症の原因にはどういうものがありますか?:http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa04.html※1
▶生殖医療Q&A Q15.男性不妊の場合の治療はどのようになるのですか?:http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa15.html※2
公益社団法人 日本産科婦人科医会
▶一般不妊治療:https://www.jaog.or.jp/note/(2)一般不妊治療/※3
厚生労働省「健康日本21アクション支援システム」
▶アルコールとメタボリックシンドローム:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-005※4
厚生労働省
▶健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html※5
▶みんなに知ってほしい飲酒のこと:https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001368730.pdf※6
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