夫が海外転勤に!外国での不妊治療、何から調べる?「海外療養費制度」や「英文紹介状」など知っておきたいこと【お悩み相談室】

妊活・不妊
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今回は、夫の海外赴任に同行するため仕事を辞める決断をしたものの、異国の地での不妊治療に対する不安が止まらない30代女性からのご相談です。
言葉の壁、高額な費用、年齢的な時間の猶予で悩んでいらっしゃるとのこと。

予期せぬ海外赴任に揺れる心に寄り添い、渡航前に整理すべき情報や利用できる制度について生殖看護認定看護師が具体的にアドバイスします。

不妊治療をしています。先日、夫に先進国への海外転勤の辞令が出ました。
赴任期間がわからないため、夫と話し合い、私も仕事を辞めてついていく決心をしました。
決心したはいいものの、言葉も通じない、医療体制も全く違う異国の地で妊活を続けていけるのか不安で押しつぶされそうです。

不妊治療の専門医が近くにいるのか、日本人医師はいるのか、保険は適用されるのかなど、何をどこまで調べればいいのかもわからずオーバーヒート状態です。
日本なら同じ金額で数回は体外受精ができたかもしれないと思うと、金銭的な負担も重くのしかかります。
SNSで海外在住の方のブログや体験談を読み漁るのも疲れました。 でも、精子凍結を用いて日本でひとり妊活に励むのも私には無理そうです。

夫のキャリアもやりがいも応援したいけれど、私の妊活のリミットを考えると「どうして今なの?」と八つ当たりしたくなります。
夫も仕事で余裕がない中、見知らぬ土地で私たち夫婦は妊活を進められるのか…。色々なハードルが一気に上がってしまいました。
考えがまとめきれていないのですが、何かアドバイスいただけると嬉しいです。

(30代、女性、ハンドルネーム:ミモザ、職種:販売・サービス)


最初に

日々、不妊治療を頑張ってこられてきた最中に舞い込んだ、先進国への海外赴任という予期せぬ辞令。
そこからお二人で何度も話し合い、ミモザさんがこれまで築き上げてきたキャリアを一度横に置いて異国の地へついていくという、本当に大きな、そして勇気ある決断をされたのですね

決心したからといって、すぐに不安が消えるわけではありませんよね。
むしろ、決めたからこそ「現地の医療体制で本当に大丈夫なの?」という不安がより現実味を帯びて押し寄せてきているのではないでしょうか

言葉も通じない、システムも全く違う異国の地で、果たして今までのように治療を続けていけるのか。
信頼できる専門医と出会えるのか、高額な治療費を払ってでも日本以上の成果が期待できるのか……。
何をどこまで調べればいいのかわからず、SNSの情報に翻弄されてオーバーヒートしてしまったとおっしゃるのも、無理はありません

日本なら保険診療で、慣れ親しんだ言葉で安心して治療を受けられたはずなのにという、やり場のない思い。
そして、パートナーを応援したい気持ちと、ご自身の30代という貴重な時期を大切にしたい気持ちの間で引き裂かれそうになる思い。
「どうして今なの?」と叫びたくなってしまうその激しい感情は、十分理解できます。

これはミモザさんが未来の家族のことを誰よりも切実かつ真剣に考えている証拠だと思います。
これまで重なり合う大きな変化に対して、真摯に向き合ってこられたご自身を、まずは労ってあげてくださいね

海外不妊治療の不安を整理する3つのマインドセット

今のミモザさんは、医療体制や言語の壁という未知の環境に対して、治療の質を維持できるかどうかの不安で心が休まらない状態かと思います。
ミモザさんが納得して次の一歩を踏み出せるために、まずは以下のように考えてみるのはいかがでしょうか。

「時間の価値」を最優先にする

日本での保険診療を離れることには抵抗があると思いますが、不妊治療においてどうしても考えなくてはならないのは年齢と時間です。
今行える治療を夫婦で納得し、進めていくという視点に切り替えていきましょう

「プロのサポート」を前提に計画する

言葉の不安を個人の努力で解決しようとすると精神的に疲弊します。
医療通訳やコーディネーターといった外部の力を借りることを前提にし、一人で抱え込まない体制を整えることを優先しましょう

「夫婦の共同プロジェクト」にする

病院探しや制度の確認をミモザさん一人の仕事にせず、パートナーと役割を分担しましょう。
孤独な戦いではなく二人の共通の課題として捉え直すことを目指しましょう

海外療養費制度と病院探しの方法

不妊治療を専門とする看護師の立場から、ミモザさんが直面している保険と制度の現実、そして具体的な病院探しのヒントをお伝えします。

日本の公的保険と「海外療養費制度」の活用

海外へ転居し住民票を抜く場合、日本の公的医療保険は利用できませんが、海外療養費制度という仕組みがあります
これは、海外で受けた治療費の一部が、帰国後に申請することで還付される制度です。

2022年から日本でも不妊治療が保険適用となったため、海外で行った体外受精なども、日本での保険診療の範囲内であれば還付対象となる可能性があります。
還付額は日本の診療報酬基準で計算されるため全額ではありませんが、心理的な負担を和らげる大きな一助となります。

渡航前にご自身の健保組合等から診療内容明細書などの専用様式を入手しておきましょう

ライフプランを考えた上で治療・妊娠計画を

ミモザさんが30代であり、将来的に二人以上のお子さんを望まれているのであれば、一層これからのライフプランに基づいて妊娠を計画していくことが重要です。


日本で自費で体外受精を行い貯胚しておくことも可能ですが、「いつ帰ってこれるかわからない状態」ならばお勧めはしません
海外においても不妊治療の医療水準は高く、日本よりも効率的なアプローチをとるクリニックも存在します。

いつ帰国できるかわからない状況で待機するよりも、現地で治療を継続することが、ミモザさんにとって最も妊娠の可能性を高めるベストな選択肢だと言えます。

具体的な病院探しの3つのステップ

旦那様の会社の「海外赴任規定」と「アシスタンスサービス」を確認

大手企業の海外赴任では、会社が提携する医療アシスタンスサービス(日本語での病院紹介や予約代行)が利用できます
まずは旦那様に、そのサービスを通じて不妊治療クリニックをリストアップしてもらうよう依頼しましょう。

現地の「日本人会」や「コミュニティ」の活用

現地の日本人会や駐在員家族のコミュニティは、SNSのブログよりも遥かに確実で血の通った情報源になります。
「どの病院のスタッフが親切か」「通訳の手配はどうしているか」といった一次情報は、ミモザさんの不安を解消する大きな力になります。

「英文紹介状」の準備

現在の主治医に、これまでの全記録(ホルモン値などの検査結果、治療歴など)を網羅した詳細な英文紹介状(診療情報提供書)の作成を依頼してください。
これが現地の医師とミモザさんを繋ぐ最も重要なパスポートとなり、無駄な再検査を防ぎ、スムーズな治療再開を可能にしましょう。

最後に

はじめは引っ越したばかりで、環境の変化についていくだけでも精一杯だと思います。
まずは新しい土地の生活に慣れることを優先してくださいね。

少しずつ落ち着いてきたら、二人で手を取り合って納得のいく病院をゆっくり探していきましょう。
ミモザさんがどこの空の下にいても、応援しています。
焦らず、一歩ずつ進んでいきましょうね。


<参考文献・出典>

全国健康保険協会
▶海外療養費とは:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3120/r138/

厚生労働省
▶「希少言語に対応した遠隔通訳サービス」のご案内:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/newpage_00015.html

Emergency Assistance Japan
▶海外医療アシスタンス:https://emergency.co.jp/lp/medical_security/index.html

<本記事の回答者>

示村英実

生殖看護認定看護師/不妊カウンセラー

所属:株式会社ファミワン

妊娠を望む方の少しでも力になりたいという想いから、一般企業を退職し、看護師になりました。現在は不妊治療クリニックにて勤務しながら、株式会社ファミワンにて、妊活中の方に対してのアドバイザーを担当。一人ひとりに耳を傾け、寄り添うサポートを心掛けています。


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