不妊の原因は僕のせい。妻の夢を叶えてあげられないかもと思うと、前向きに過ごせません【生殖心理カウンセラー監修:お悩み相談室】
今回は、男性不妊が判明し「妻の夢を叶えてあげられない」と強い罪悪感を抱く20代男性からのご相談です。「自分と結婚しなければ…」というネガティブな思考から抜け出せず、顔を見て話せない状態のようです。
妻への適切な接し方や、過度な罪悪感を手放し夫婦で前に進むための心の向き合い方について、生殖心理カウンセラーがお答えします。
1年経っても授からず、検査の結果、僕の精子に原因がある「男性不妊」だと分かりました。
左側に精索静脈瘤があり、精子の数も運動率も極端に低いそうで、「手術をすれば改善の可能性はあるが、精子の状態改善を確認するには半年ほどかかる」と医師に言われました。
不妊治療をする金銭コストと、何より妻の身体に負担をかけたくないので、怖いですが手術をしようと思います。
僕は29歳、妻は28歳で、妻の昔からの夢は「子供は3人、5人家族になること」。妻は「一緒に頑張ろうね」と僕を責めたりはしませんが、「不妊の原因は自分だった」と突きつけられたあの日から、 もしかしたら自分のせいで「一生、子供ができないかも」と考えてしまいます。
彼女の夢を叶えてあげられないのも罪悪感でどうにかなりそうですし、愛想をつかされて離婚なんてことになってしまったら…と最悪な未来が頭をよぎります。
どうしても前向きになれず、妻は普通に接しようとしてくれているのに、僕はどうしてもぎこちなく、妻の顔をみて話せません。
このままではダメだと思っているのに、「僕と結婚しなければ、彼女は今頃お母さんになれていたかもしれない」というネガティブな妄想に囚われて、寝ている彼女の手を握るのが精一杯です。
妻へどう接したらいいのでしょうか。僕はどう向き合えば前に進めるでしょうか。
(20代、男性、ハンドルネーム:nao也、職種:営業)
最初に
nao也さん、検査で男性不妊だと分かり、精索静脈瘤の手術も考えておられるのですね。
男性にとっては、とても怖い手術です。
そんな選択を迫られた中で、「治療の金銭的負担やパートナーさんの身体の負担を少しでも減らしたい」と考えている。
その時点で、nao也さんはもう十分にパートナーさんと向き合っておられると思います。
ただ、「原因は自分だった」と告げられた瞬間から、心の中ではずっと裁判が続いているような状態なのかもしれません。
「自分のせいで子どもができないかも」
「夢を叶えられないかも」
「離婚されるかも」
と、最悪の未来ばかりが浮かぶ。
精液検査の結果を、人間としての点数表みたいに感じてしまう方もいます。
でも、精子の数や運動率は、nao也さんの価値の数ではありません。
そこだけは、強くお伝えしたいと思いました。
明るく振る舞おうとせず、不安を正直に話してみて
今、前向きになれないのは当然です。
男性不妊は、身体の問題であると同時に、
「自分はパートナーを幸せにできないのでは」
という存在そのものへの不安に触れやすい問題です。
だからこそ、明るく振る舞おうとしなくて大丈夫です。
むしろ無理に元気な顔をすると、パートナーさんは「本当は一人で抱えているのでは」と不安になるかもしれません。
私は、男性不妊のカップルとカウンセリングをする機会が多いのですが、こういう不安は正直に話してくれた方が、パートナーさんは安心することが多いと感じています。
「一緒に頑張ろうね」と言ってくれるパートナーさんなら、きっとnao也さんの弱さそのものではなく、黙って遠ざかっていくことの方が寂しいのではないでしょうか。
たとえば、
「責められていないのは分かっている。でも、自分のせいで君の夢を壊してしまう気がして怖い。だから最近ぎこちなくなっていた」
と伝えてみてください。
これは、夫婦の情報共有です。
お互いの気持ちや考えを伝え合うことは、妊活で一番大事なことです。
手術や体外受精の選択は一人で負わない
精索静脈瘤は男性不妊の原因の一つで、手術によって精液所見の改善が期待できる場合があります。
ただし、精子が作られるには時間がかかるため、改善を確認するまで数か月単位で見ることが一般的です(※1)。
この「待つ時間」は、身体以上に心にこたえるかもしれません。
だからこそ、手術をする・しない、体外受精へ進む・待つ、といった選択を、nao也さん一人の責任にしないことが大切です。
パートナーさんに接するときは、明るい夫を演じるより、「怖いけど一緒に考えたい」と言える夫でいてください。寝ている手を握る優しさも素敵ですが、起きている時に言葉で手を握ることも必要です。
最後に
「僕と結婚しなければ」と考えてしまう時は、「僕たちは今、夫婦で治療方針を選んでいる途中」と言い換えてみましょう。
男性不妊は、nao也さん個人の欠陥ではなく、おふたりで向き合う治療テーマです。
原因が分かったことは、終わりの宣告ではなく、次の作戦会議の開始でもあります。
おふたりの未来を、心から応援しています。
<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています
例)公益社団法人 日本産科婦人科学会
▶月経前症候群(PMS):https://www.jsog.or.jp/citizen/5716/※1
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