不妊治療「年内のチャンスはあと2回」という焦りとプレッシャーで限界です。「やめたい・諦めたくない」の葛藤をどうしたらいいですか?【生殖心理カウンセラー監修:お悩み相談室】
今回は、4年間にわたる不妊治療の中で、11月のスケジュール帳を見て「年内のチャンスはあと2回」というプレッシャーに潰されそうになるという30代女性からのご相談です。
「やめたい・諦めたくない」という葛藤の中、妊活を続けるメンタルを持ちたいと願っていらっしゃいます。
妊活における期待と絶望の反復による心理的苦痛に、メンタルケアの必要性を解説し、自分を責める必要がない理由を提示。
「年内妊娠」から「年内を安全に過ごす」への目標再設定といった「今のメンタルで続けられる形に妊活」を考えること、治療を休むことの意味、ご主人への具体的なSOSの出し方、カウンセラーや主治医との連携方法について、生殖心理カウンセラーがお答えします。
37歳で4年不妊治療を続けています。もう11月、スケジュール帳を開き絶望しています。
「年内のチャンスはあと2回だけ」、強烈なプレッシャーに締め付けられています。
毎月、「今度こそは」とすがるような気持ちで期待しては、生理が来るたびに目の前が真っ暗になって、また希望をなんとか見つけ出しては次のクールに立ち上がっています。
「来年こそは」と思ったその来年がもうすぐ終わる…
年の暮れが近づくと、どれぐらい高さがあるかわからない井戸の底で、少しずつ落ちてくる水で身体が冷たくなって動けない夢をみます。
せっかくSNS断ちしているのに、自分の想像で自分を傷つけてしまいます。
主人も支えようとしてくれますが、そもそも私の支柱がもう腐ってボロボロな気がします。
リセット時の夫の涙を見ても、私の中の恐怖は私だけにしかなく、私が何とか向き合わなければいけないのだろうなと感じます。
正直、不妊治療から、子どもが欲しいという思いから逃げ出したいです。
それでもまだ頑張りたいという気持ちと葛藤しては、やめたい、やめたくないとずっと芯がなくなったままです。
妊活を続けるメンタルを持つためにはどうしたらいいのでしょうか。
(30代、女性、ハンドルネーム:ありんこ、職種:専門職)
最初に
ありんこさん、4年もの間、不妊治療を続けてこられたのですね。
スケジュール帳を開いて「年内のチャンスはあと2回だけ」と数えてしまう。
その瞬間、ただ予定を見ているだけなのに、未来そのものに追い詰められるような感覚があるのだと思います。
毎月「今度こそは」と希望をかき集め、生理が来るたびに目の前が暗くなり、それでも次の周期に向けてもう一度立ち上がる。
これは、気合いで乗り切れる類の疲れではありません。
心の支柱が腐ってボロボロな気がする、という表現がとても切実でした。
支柱が弱いのではなく、4年間ずっと重たいものを支え続けてきたのですよね。
井戸の底で水が少しずつ落ちてくる夢も、ありんこさんの心が「もう冷たい、もう動けない」と知らせているように感じます。
SNSを断っても、自分の想像で自分を傷つけてしまう。
それほどまでに、治療が生活の隅々まで入り込んでいるのだと思います。
「今のメンタル」で続けられる形の妊活とは?
「妊活を続けるメンタルを持つには」と考える前に、「今のメンタルで続けられる形に妊活を変えるには」と考えてみてほしいです。
今の治療の重さに対して、心の装備がもう限界に近いのかもしれません。
年内あと2回、という数え方は、とても自然ですが、心にはとても過酷です。
たとえば、
「年内に妊娠するかどうか」ではなく、「年内はこの2周期をどう安全に過ごすか」に目標を変える。
リセットした日の過ごし方を事前に決める。
判定日周辺は予定を減らす。
パートナーさんには、励ましよりも「今日は一緒に沈んでほしい」「結論を出さずにそばにいてほしい」と具体的に伝えておく。
「やめたい / まだ頑張りたい」の片方を消さなくてもいい
不妊治療では、期待と落胆の反復によって強い心理的苦痛が生じやすいことが知られています(※1)。
また、生殖医療では、治療方針だけでなく、感情面や夫婦関係への心理社会的ケアも重要だとされています(※2)。
もし眠れない、食べられない、涙が止まらない、仕事や日常生活がかなり難しい状態が続いているなら、クリニックの心理士、カウンセラー、主治医に「治療を続けたい気持ちはあるが、心が限界に近い」と伝えてください。
治療を休む相談も、敗北ではなく治療計画の一部です。
休むことと諦めることは同じではありません。
ありんこさんの中にある「やめたい」と「まだ頑張りたい」は、どちらも本音です。
片方を消さなくていいのです。
今は芯がないのではなく、芯が折れないよう必死にしなっている状態なのだと思います。
最後に
ありんこさんの人生は、今年の残り2回で採点されるものではありません。
まずは、井戸の底から一気に上がろうとしなくていい。
今日はあたたかな毛布に包まる。
明日は誰かに気持ちを話す。
そのくらいで今の自分は花まるだと思ってみてくださいね。
<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています
National Library of Medicine(NLM:米国国立医学図書館)
▶Greil AL, Slauson-Blevins K, McQuillan J. The experience of infertility: a review of recent literature. Sociology of Health & Illness. 2010.:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3383794/
OXFORD UNIVERSITY PRESS(オックスフォード大学出版局)
▶Gameiro S, et al. ESHRE guideline: routine psychosocial care in infertility and medically assisted reproduction. Human Reproduction. 2015.:https://academic.oup.com/humrep/article/30/11/2476/2384614
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