「生理の辛さは我慢しなくていい」予防医学を取り入れながら、女性の一生に寄り添うトータルケアを【医師 渡邉 沙耶】

生理・PMS
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病気の治療も予防も 女性の健康にトータルに寄り添います

渡邉 沙耶

練馬総合病院

産婦人科専門医、婦人科内視鏡技術認定医、ダビンチ認定術者

東京医療センターで初期研修後、東京歯科大学市川総合病院(現 国際医療福祉大学市川総合病院)、慶應義塾大学病院等を経て、2023年より練馬総合病院 産婦人科に勤務。内視鏡手術や女性医学を専門に、手術から生理の悩みまで幅広く診療を行う。「すべての女性の味方」をテーマに、ライフステージごとに変化する心身の悩みに同じ女性の視点で寄り添い、患者さんの生活がより豊かになるよう丁寧なサポートを大切にしている。

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患者さんと共に成長し、歩んでいけるオンリーワンの診療科の魅力

――先生が医師になられたきっかけや、産婦人科を選んだ理由について教えてください

私が医師を目指した原点は、「誰かの人生の深いところに、しっかりと関われる仕事がしたい」という思いでした。

学生時代に実習でさまざまな診療科を経験しましたが、産婦人科で立ち会った「命が生まれる瞬間」のインパクトは、今でも忘れられないほど大きなものでした。

ただ、私がこの道を選んだ理由は、それだけではありません。産婦人科は、新しい命が誕生する瞬間だけでなく、女性が生まれてから最期を迎えるまで、一生のすべてに寄り添い、見守り続けることができる診療科です。そんな唯一無二の、まさにオンリーワンな役割に魅力を感じて、産婦人科医になることを選びました。

――実際に産婦人科医になられて、日々どんなところに魅力を感じていますか

女性には、女性にしかわからない身体の変化や、ライフステージによる波がありますよね。私自身も一人の女性として、患者さんと同じように年齢を重ね、体調の変化やライフイベントを経験しています。

患者さんの悩みを単なる「知識」として診るのではなく、一人の女性としての「実感」を共有しながら、一歩ずつ一緒に進んでいける。これは女性医師として産婦人科に携わる上での、何よりの強みです。

自分自身の経験が増えるほど、患者さんの気持ちに深く寄り添えるようになっていく。そうして患者さんと共に成長し、人生を歩んでいける今の環境に、とてもやりがいを感じています。

練馬総合病院(https://nerima-hosp.or.jp/)

一人ひとりの背景にある“ゴール”を大切に、患者さんとともに考える

――現在の練馬総合病院では、内視鏡手術などを専門にご担当されていると伺いました

婦人科の外来も担当していますが、現在のメインはやはり手術です。
小さな傷、小さな負担で、悩んでいる方に手術の治療を提供する「低侵襲手術」を中心に、先ほどお話しした「女性医学」を合わせた2本立てで、今は診療を行っています。

私は本当に腹腔鏡手術が大好きで、手術中はアドレナリンが出ているのを感じます。「ここだ」という患部を綺麗に取り除き、直していく過程は、究極に集中する時間です。日々技術を磨くという意味で、アスリートのような感覚に近いですね。

――患者さんと向き合われる中で、大切にされていることや、先生なりのスタンスがあれば教えてください

大切にしているのは、患者さんご自身が思い描いている「ゴール」を、きちんとお聞きすることです。どういうふうにしたくていらっしゃったのか、そのゴールを探りながらお話を伺います。

また、治療方針をこちらから一方的に提示するのではなく、選択肢をきちんとお伝えした上で、「一緒に考えていこうね」というスタンスを大事にしています。

最近ではこうした姿勢を「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM・共同意思決定)」と呼ぶそうですが、まさにその考え方を大切に、日々患者さんと向き合っています。

――患者さんとコミュニケーションをとる際に、先生が工夫されていることはありますか

患者さんのご職業や、どのようなご家族と暮らしていらっしゃるかなど、お話しいただける範囲で伺い、カルテにメモしておくようにしています。

「今、下のお子さんが受験で大変」「お父様の介護をされている」といった背景を書き留めておくと、次にいらした時も、その方がどのような状況にあるのかをすぐに思い出すことができます。

そうした背景を知ることで、治療法の提案や手術のタイミングなど、「この方はきっと早く退院して自宅に帰りたいだろうな」といった、その方の生活に合わせた細かな配慮ができるようになります。これは私なりの、大切なコミュニケーションの工夫ですね。

――先生が「医師になってよかった」と感じるやりがいや、印象に残っているエピソードがあれば教えてください

やはり、自分が治療に携わった患者さんからいただく言葉が一番嬉しいですね。
以前、手術からその後の経過までずっと診させていただいた患者さんに、「もう先生じゃないとダメなので、絶対にどこにも行かないでくださいね」と言っていただけたことがあり、今も強く心に残っています。

また、手術を受けられた方には、手術前後の写真をご本人と一緒にお見せすることが多いのですが、患部が綺麗になった様子をご覧になって「本当にここで手術してよかったです」と言っていただけると、大きなやりがいを感じます。

――練馬区の広報などで積極的に情報発信をされていますが、どのような想いで取り組まれているのでしょうか

産婦人科医として地域に貢献していくためには、20代から40代といった若い世代の方々に、ご自身の健康について正しく知っていただくことが不可欠だと思っています。

今は情報の得方も多様化していますので、病院側も新しいメディアをしっかりと追いかけて発信していかなければ、本当に届けたい方々へ情報を届けることができません。

病院としてインスタグラムを始めるなど、情報発信のあり方には工夫しています。少しでも多くの方が、必要な情報に触れられるきっかけをつくっていきたいですね。

引用:練馬区Webサイト(健康部 健康推進課)

ねりま健康ちゃんねる(Youtube):
https://www.youtube.com/channel/UCrCo-Yw0b4UUtCDwP5ync5g

「辛くなる前に相談してほしい」 変化する女性の意識と、産婦人科をもっと身近な場所に

――月経にまつわるトラブルで先生が今ご対応されている方は、どのような悩みを持たれていることが多いのでしょうか

月経前の不調(PMS)から、月経痛の悩みまで、ご相談の内容は多岐にわたります。

症状の程度もさまざまで、「なんとなく調子が悪い」という身近な悩みで来られる方もいれば、月経痛が重く、痛みで全く動けなかったり救急車で運ばれてきたりするほど重症の方もいらっしゃいます。どのような段階であっても、お一人おひとりの悩みに合わせた対応を心がけています。

――病気に繋がるような気になるサインや、「こういう時は気をつけた方がいい」といった目安はありますか

まず一つの目安として、生理の時に鎮痛剤が手放せないようであれば、一度ご相談いただきたいです。

意外と多いのが、痛みで学校や仕事に行けないほど辛いのに、「なんとか自分で我慢して、どうにかしてしまっている」という方です。婦人科はどうしても受診のハードルが高いと感じてしまうかもしれませんが、「そんなに辛いのであれば、もっと早く来ていいんですよ」とお伝えしたいですね。そこまで辛くなる前に、まずは相談していただくことがとても大切です。

――「以前よりは気軽に産婦人科を受診する人が増えた」という声も聞きますが、先生の印象としてはいかがですか

メディアの影響などもあって、若い方の意識は一時期よりだいぶ変わってきたと感じます。

また、私たちのような女性の産婦人科医が増えたことも、足を運びやすくなった大きな理由ではないでしょうか。今は若手の医師の半分以上が女性という状況もありますので、そうした変化も相まって、以前よりは「まずは婦人科へ」という意識が浸透してきている印象を持っています。

予防医学とアンチエイジングで、自分らしい人生を歩むサポート

――「食医学」や「アンチエイジング」にご興味を持たれ、専門的に学ぼうと思われたきっかけは何だったのでしょうか

いろいろな女性の患者さんを診ていく中で、女性の心身の健康が食事と深く結びついていることを痛感したのがきっかけです。病気になってからの治療はもちろん大切ですが、それ以前の「予防」として、食生活は非常に大きな役割を担っています。

個人的な話にはなりますが、私自身も「フードドクター」という資格の勉強をして食生活を変えたところ、それまで悩んでいたひどいPMS(月経前症候群)が改善するという経験をしました。

薬で対処するしかなかった不調が食事で変わることを身をもって体感したからこそ、患者さんにも医学的な治療と合わせて、生活習慣や食事の面からも適切なアドバイスができるようになりたいと考えています。

――アンチエイジング専門医とは、具体的にどのようなことを目的とした分野なのでしょうか

「アンチエイジング」と聞くと、美容の分野を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実は予防医学に基づいた非常に学術的な分野です。

私たちが目指すのは、健康寿命を延ばすことにあり、その結果、いくつになっても自分らしく、充実した毎日を送り続けられる心身を育むことを目的としています。

具体的には、老化を一つの「病的なプロセス」と捉え、そのスピードをできるだけ緩やかにするためのアプローチを行います。食事・運動・睡眠といった生活習慣の改善をベースに、必要に応じてサプリメントやホルモン補充療法などを組み合わせ、心身を健やかで若々しく保つ。そうした「病気にならない身体づくり」を科学的にサポートするのが、アンチエイジング専門医の役割です。

すべての女性の味方として、一生に寄り添うトータルケアを

――最後に、読者へのメッセージをお願いします

産婦人科医として、そして一人の女性として、私のテーマは「すべての女性の味方であること」です。

患者さんをトータルでケアできるように、医学的な知識はもちろん、食生活のアドバイスから高度な手術まで、その方の力になれることであれば何ひとつ諦めずに、私自身ですべてを診られる医師でありたいと考えています。

少し欲張りかもしれませんが、どんな側面からも患者さんをサポートできるよう、日々勉強と診療に励んでいます。

小さな悩みでも、心身の不調でも、どんなことでも構いません。皆さんにとって「何でも相談できる一番身近な相手」になれたら、これほど嬉しいことはありません。

――先生ご自身のリフレッシュ方法を教えていただけますか

先ほどお話しした「食医学」とも繋がるのですが、私にとって料理や食事はとても大切なリフレッシュ方法です。

旬の食材を使い、「今の自分にはこういう栄養が必要だな」「これが食べたいな」と直感的に感じるものを自分の手で作る。そうやって自分の体と向き合いながら料理をすることは、私にとって心も体も一番元気になれる習慣です。 ちなみに今日は、このあと旬の春野菜をたっぷり使ったクラムチャウダーを作ろうかな、なんて考えています。

(取材:2026年3月)


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