自分のリズムを手軽に知って、前向きな毎日を「わたしの温度®」【TOPPANエッジ 廣瀬 久美 / 名和 成明】

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"リズムといきていく"をブランドメッセージに、多くの女性のキレイと活躍を応援したい

廣瀬 久美

TOPPANエッジ株式会社 イノベーションセンター イノベーション推進部
ヘルスケアプロモーションチーム チームリーダー

2005年入社。中央研究所(現 イノベーションセンター)にて、低温焼成導電性インクの開発など主に材料開発に従事。2017年、テーマリーダーとして「わたしの温度®」の開発をスタート。現在、プロモーションチームリーダーとして「わたしの温度®」のプロモーションを推進。

名和 成明

TOPPANエッジ株式会社 イノベーションセンター イノベーション推進部 部長

1996年入社。開発研究所(現 イノベーションセンター)配属。要素技術の研究開発、機械設計、大規模生産設備の仕様構築・実用化などに従事。プリンテッドエレクトロニクスの研究開発など様々なプロジェクトに関与する中で、部門横断でヘルスケア領域の新事業創出を目指す「わたしの温度®」プロジェクトを発足。次世代センサ協議会技術委員。MBA(UK)。

印刷技術を活用した新事業への挑戦

―廣瀬さんと名和さんのそれぞれの役割と、「わたしの温度®」開発に携わるきっかけをお聞かせください

廣瀬さん: 私は2017年のプロジェクト開始当初から開発に携わっていて、現在はプロモーションリーダーとして「わたしの温度®」のプロモーション担当をしています。

名和さん: 私ももともと研究開発部門で、生産設備の研究開発や、有機ELなど電子部品の技術開発に携わっていました。

「わたしの温度®」にはプロジェクト立ち上げ当初から関わっており、開発の道のりをずっと見守ってきました。現在はイノベーション推進部で「わたしの温度®」を含む新規事業の開発・事業推進のマネジメントを担当しています。

写真左から名和さん、廣瀬さん

―TOPPANといえば印刷会社というイメージが強いのですが、フェムテック分野への取り組みやデバイス開発のきっかけは何だったのでしょうか

名和さん: 私たちが在籍するTOPPANエッジでは、従来の紙を中心とした製品やサービスと最先端のデジタル技術を掛け合わせて、企業や社会の課題解決に貢献するソリューションを提供しています。

技術革新の進展や社会のデジタル化の影響で印刷関連市場は縮小傾向にあるため、既存事業の技術やノウハウを活かしつつ、その枠を超えた新しい事業の展開が必要とされています。

市場トレンドや自社の強みを分析した結果、たどり着いたのがヘルスケア分野でした。「わたしの温度®」の開発をスタートした2017年当時、日本ではまだ「フェムテック(※)」という言葉すら浸透していませんでしたが、女性の社会進出や健康意識の高まりを背景に、大きな可能性を感じていました。また、「パーソナルデータ」が注目され、今後、ウェアラブルデバイスから取得されるパーソナルデータが利活用される世の中になるだろうという予測も後押しとなりました。

社内には個人情報を取り扱う上でのノウハウや電波を用いて非接触でデータを読み書きするデバイスの開発に関する技術が蓄積されており、それらを活用することで、女性の健康をサポートする新しい製品を生み出せる可能性があると考えました。

廣瀬さん:開発開始当初、私たちは「プリンテッドエレクトロニクス」、つまり印刷技術を用いて配線やセンサーを製造するための開発に取り組んでいて、小型心電センサーの開発など、複数のテーマを同時進行させていました。

そんな中、私自身が結婚を機に妊活を始め、基礎体温を記録することになりました。毎朝決まった時間に体温を測る作業は想像以上に大変で、「本当にみんなこんなことを毎日続けているのだろうか?」と疑問に感じていました。

「もっと手軽に自分の体のリズムを知ることができたら…」。そんな思いから「わたしの温度®」の開発に一層力を入れるようになりました。

寝ている間に自動で温度を計測 手軽に自分のリズムを把握

―「わたしの温度®」はどのようなサービスなのでしょうか

廣瀬さん:「わたしの温度®」は、“リズムと生きていく”をブランドメッセージにした、つけて寝るだけで女性特有の周期リズムを把握できるヘルスケアIoTサービスです。専用のナイトブラ(※)に小型のデバイスを装着して寝るだけで、自動的に温度リズムを計測し、アプリにデータを送信します。

従来の基礎体温計のように、毎朝同じ時間に口の中で体温を測り、手動で記録する必要がなく、手軽に自分の体のリズムを知ることができる点が特徴です。

計測データは、アプリ上でグラフとして分かりやすく表示されるだけでなく、日々の温度データや過去の生理の記録などから、生理日や排卵日の予測、そして妊娠のしやすさやからだの状態をお知らせします。

また、「こころ」「からだ」「食事と運動」の3つのカテゴリーで、目的に合わせたアドバイスを毎日受けることができます。食事に関してはおすすめメニューのアドバイスが届くのですが、「参考にして、夜の献立に取り入れてみました」というお声も届いています。

そのほかにも専門家によるコラムの配信や、提携する外部サービスによって産婦人科や小児科医へのオンライン相談ができるといった機能があります。

「わたしの温度®」デバイスとアプリ画面イメージ

名和さん:「わたしの温度®」は、ナイトブラに装着することで、就寝中に身体の同じ場所で連続的に複数回衣服内の温度を計測でき、外気温を考慮した独自のアルゴリズムによって、より正確なデータを導き出せる点が、従来の基礎体温計とは異なります。

高温期と低温期の差はわずか0.3度程度しかなく、従来の基礎体温計による計測のように起床直後に一回だけ計測する方法は、計測時刻や体調によってばらつきが生じやすく、正確に計測できない場合があります。「わたしの温度®」は医療機器ではありませんが、就寝中の温度を連続的に計測することで、このわずかな温度変化を捉えて高温期と低温期の変化を確実に把握できる点や、計測のストレスや手間から解放されるのが特徴です。

専用ナイトブラとデバイス

専門外の分野への挑戦、社内理解への高いハードル

― 開発中に苦労された点はありますか

廣瀬さん: 開発メンバーとのコミュニケーションですね。

開発当初は、印刷技術を用いて、薄くて曲げられる体温センサーを開発する予定でした。しかし、印刷物ではどうしても精度にばらつきが出てしまい、わずか0.3度という高温期と低温期の差を正確に計測することが難しいことが分かりました。そこで、より精度の高い計測が可能なハードウェアの開発へと、開発方針を大きく転換せざるを得ませんでした。

私は化学が専門で、プリンテッドエレクトロニクスに用いるインクの研究や開発の経験を重ねてきました。印刷技術を用いたセンサー開発まではこれまでの経験を生かせたのですが、方針転換後はアプリ開発や筐体設計、ファームウェア開発など、全く未知の分野に挑戦することになりました。

そこで、社内の様々な分野のメンバーに協力を仰ぎながら開発を進めていくことになりましたが、当初は業務負荷が増えることにメンバーから不満が出ることもあり、専門知識の差によるコミュニケーションの難しさ、新たな知識の習得など、私にとってはチャレンジの連続でしたね。しかし、開発が進み、試作サンプルを評価してくださった多くの女性から喜びの声をいただいたことで、メンバーのモチベーションが上がり、次第に協力体制ができていったように思います。

また、センサー形状と計測アルゴリズムの開発にも苦労しました。ユーザーの体型は、胸の大きい人、小さい人、太った人、痩せた人など個々に異なります。試行錯誤を繰り返し、あらゆる体型の女性に対応できるよう工夫しました。

名和さん:新規事業開発ということもあり、私の立場としては、まず社内の理解を得るのに苦労しました。「なぜ当社が女性向けの製品を?しかもヘルスケアのサービスをやる必要性はどこにあるのか?」という声も挙がっていました。

まずは社内に向けてなぜこの事業が必要なのか、どんな未来を目指しているのかを説明し、共感してくれる仲間を増やしていきました。

デバイスやサービスの開発を進めると同時に、社内向けにプレゼン資料を作ったり、チームメンバーのモチベーションを維持するためにビジョンを共有したり、事業としてのブランディング開発をしたりと、本当にいろんな業務を同時進行していましたね。

また、製品が完成に近づくにつれ、今度は「わたしの温度®」を社会に浸透させることの難しさに直面しました。「企業で働く女性に使ってほしい」という思いで様々な企業にサービス紹介を行いましたが、なかなか理解を得られません。「なぜ男性であるあなたが、このような製品を勧めるのか?」と疑問視されることもよくありました。

「女性のために」と女性だけが声を上げるのではなく、男性である私自身が問題意識を持って取り組むことが社会を変えるために重要だと感じ、あえて先頭に立って推進してきました。

名和さんと廣瀬さん

― 数々の困難を乗り越えて開発された「わたしの温度®」ですが、どのような時にやりがいを感じますか

廣瀬さん: 展示会などで「わたしの温度®」を実際に手に取っていただき、「こんな商品を待っていました」「今回初めて知りましたが、女性の役に立つすばらしいサービスですね」といった声を直接聞けた時は、開発の苦労が報われる思いです。

また、「わたしの温度®」を使うことをきっかけに妊娠に至ったといううれしい報告や、「低温期と高温期がしっかり把握できるようになりました」という声も励みになっています。

今年から、研修と「わたしの温度®」をセットにした企業向けパッケージ「わたし新発見プログラムTM」の提供を始めました。実証実験の中で、「これまで諦めていたキャリアに、もう一度挑戦してみようと思った」という声をいただくなど、妊活以外の目的でもユーザーがメリットを感じて活用してくださったことが本当にうれしいです。

すべての女性の健康を見守り、サポートする存在を目指して

― 今後の展望について教えてください。

廣瀬さん:現在は妊活目的で利用される方が多いですが、月経前の不調やウェルエイジングに関心のある方にもっと気軽に利用してもらえるよう、機能拡充や認知度向上に今後さらに力を入れていきたいと考えています。

具体的には、研修プログラムを通して、月経随伴症状による労働パフォーマンスの低下を改善することや、更年期に特化したサービス開発にも取り組んでいます。

女性特有の高温期と低温期の変化を知ることは、自分のこころとからだの状態を知ることです。「温度リズムの把握= 妊活」というイメージを少しずつ変え、「わたしの温度®」が、すべての女性の心と体の健康をサポートする存在になることを目指しています。

1カ月の女性特有のリズム(高温期と低温期)と体調変化

― 最後に、忙しい日々を送る女性たちへ、メッセージをお願いします。

廣瀬さん: 仕事や家事、育児に追われる日々の中で、自分のことは後回しになりがちですよね。自分の心と体の声に耳を傾け、自分を大切にする時間を持ってもらえたらいいなと。

少しでも楽に自分自身と向き合えるツールとして「わたしの温度®」でお手伝いができれば幸いです。

「子どもの寝顔が最高の癒し」「剣道で精神統一」それぞれのリフレッシュ方法

― 廣瀬さん、名和さんが気分転換やリフレッシュのために、普段されていることがあれば教えてください

廣瀬さん: 仕事中は気分転換に、社内のカフェにコーヒーを買いに行くことが多いですね。缶コーヒーではなく、ドリップされたコーヒーの味と香りを楽しむようにしています。

家庭では、5歳と3歳の子どもの寝顔に癒される毎日です。寝顔が本当に可愛くて、ほおをぷにぷにしたり、匂いをクンクンしたりしてリフレッシュしています(笑)。

― クンクン(笑)、わかります!お子さんの寝顔は最高の癒しですよね。名和さんはいかがですか

名和さん: 私は最近、剣道にハマっています。息子に習わせたことがきっかけなのですが、道場の先生に勧められて週末は私も一緒に稽古に参加しています。

稽古は結構辛い時もありますが(笑)、稽古を終え、正座をして黙想をしているとき、頭から突き抜けるような爽快感があります。礼で始まり礼で終わる剣道には、精神的な鍛錬、心をクリアにする力があるのかもしれません。

汗を流すと気分転換になりますし、剣道特有の礼儀作法や精神統一の時間が心身のリフレッシュにつながっていると感じています。

(取材:2024年9月)


本記事は、取材時の情報に基づき作成しています。各種名称や経歴などは現在と異なる場合があります。時間の経過による変化があることをご了承ください。

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