子どもの生理痛は「当たり前」でも「我慢するもの」でもありません。痛みやつらさは治療が必要なサインです【医師 代田 琢彦】

生理・PMS
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「自分の家族」と思って診ます 不安やモヤモヤは我慢せず一度相談してみてください

代田 琢彦

シロタ産婦人科 院長

産婦人科専門医、(元)日本女性医学会幹事、日本女性医学学会認定医、母体保護法指定医

1993年、聖マリアンナ医科大学卒業。同大学病院産婦人科勤務を経て、座間市相武台で50年以上続く産婦人科の2代目院長に就任。お産や産前産後ケアから更年期障害まで、あらゆる世代の女性の健康をサポートする地域の「かかりつけ医」として診療を行っている。

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夜中に救急車が来るのが日常。父の背中を見て医師の道へ

――代田先生が医師を志したきっかけを教えてください

開業医だった父の背中を見て育ったことが一番のきっかけです。子どもの頃は自宅に診療所が併設されていたため、夜中に救急車のサイレンが聞こえ、父が起きて対応するのが日常の光景でした。

私にとってそれは特別なことではなく、「うちはこういうものだ」という感覚でしたね。そのため、進路を考える時期になっても他の選択肢は浮かばず、自然な流れで医学部を目指しました。

――産婦人科を選ばれたのは、どのような経緯だったのでしょうか。

最初から強い動機があったわけではありません。キャリアのスタートで不妊治療のチームに入り、その後、不足していた更年期外来や産科もカバーするようになりました。気がつけば不妊・更年期・産科という3つの領域を長年歩んできた形です。

病院で勤務後、父の診療所を継ぎました。1972年の開業から50年以上、父が築いてきたこの場所で、地域の方々を診続けています。地域に根を張り、世代を超えてサポートできることに大きなやりがいを感じています。

シロタ産婦人科
シロタ産婦人科(https://www.shirotaclinic.com/)

「自分の家族だと思って診療する」がモットー

――日々の診療で大切にされていることを教えてください

一番は安全を第一に考えること。そして「自分の家族だと思って診る」ということです。

データ上の正解があっても、「もし自分の家族ならこちらを提案したい」と思えば、その選択肢を正直にお伝えします。医療現場はマニュアル通りに進まないことも多いため、目の前の患者さんに合わせて柔軟に考えるよう心がけています。

――患者さんの希望とリスクのバランスなどはいかがでしょうか

最近はネットの情報をもとに治療を希望される方も増えています。命に関わらないことであれば本人の選択を尊重しますが、リスクについては率直にお話しします。

例えば、喫煙習慣がある方がピルを希望される場合、血栓症のリスクが高まります。「何万分の1」という確率でも、もし発症してしまえばその方にとっては100%です。怖がらせるためではなく、誠実な医療を提供するために、あえて厳しい側面もお伝えするようにしています。

また、安全のために「妊娠の可能性」も慎重に確認します。「絶対にない」と思っていても、実際には妊娠しているケースは珍しくありません。避妊したと思っていても妊娠することはありますし、妊娠検査薬の検査結果が1日で変わることもあります。気づかずに治療を進め、お腹の赤ちゃんに影響が出ることは避けなければなりません。性交渉の経験がある場合は、念のため確認させていただくことをご理解いただければと思います。

「あの子がこんなに大きく」——成長の喜びが、医師としての活力

――医師を続けていて、一番の喜びを感じる瞬間はいつですか

やはり、お産ですね。当院でご出産された方から、「あの子、大学を卒業しました」「元気に育っています」といった報告をいただけると、心から嬉しくなります。特に、難しいお産だったお子さんが元気に成長している姿を見たときは、この仕事を続けてきてよかったと実感します。

ただし、お産には常に、言葉では言い表せないほどの緊張感があります。一番怖いのは、順調だった経過が突然、急変することです。

特に異常がなかった方でも、1分1秒を争う判断や処置が必要になる場面があります。その緊張感がなくなることはありませんが、それを乗り越えた先には、他では味わえない感動と喜びがあります。それが私の活力になっています。

生理痛は当たり前じゃない。受験期の生理コントロールは「半年前」から

――来院される患者さんの中で、特に多いお悩みは何でしょうか

最近は、小・中・高校生のお子さんの生理に関する相談が多いです。「生理痛がつらくてどうにかしたい」「受験当日に生理が重ならないようにしたい」とお母さまと一緒に来院されます。

多くの方が「生理痛はあって当たり前」と考えていますが、日常生活のパフォーマンスが落ちるようなら、それは「治療が必要なサイン」です。我慢せず、早めに受診していただきたいですね。

――受験のために生理を調整したい場合、いつ頃受診するのがベストですか

余裕を持って、試験の半年前には受診してほしいですね。その理由は主に3つあります。

  • 薬が体に合うかどうか、実際に試してみる必要があるため
  • 飲み始めの1〜2ヶ月は、一時的な副作用(軽い吐き気、眠気、不正出血など)が出る可能性があるため
  • 本番をベストコンディションで迎えるための微調整期間が必要なため

副作用は大半の方が続けているうちに落ち着いてくる印象です。もし症状が強ければ薬を変えたり、吐き気止めを一緒に処方することもあります。

最近では小学生のお子さんも受診されています。「受験が決まったら産婦人科へ」と考えていただければと思います。

――どのようなお薬を使用するのでしょうか

主に「低用量ピル」か「プロゲスチン製剤(黄体ホルモン薬)」を使用します。

  • 低用量ピル:生理周期を安定させ、痛みも軽減します。
  • プロゲスチン製剤:血栓症のリスクがある方でも服用可能です。

どちらも効果には個人差があるため、毎月の診察で状態を確認しながら、その方に合う方法を一緒に探していきます。

――受診の際、本人や保護者が気をつけるべきことはありますか。

一番助かるのは、薬の効果について「効いているか、効いていないか」を正直に話していただくことです。
医師を前にすると、つい「大丈夫です」と答えてしまうお子さんも多いのですが、実は痛みが取れていなかったというケースもよくあります。遠慮なく話していただけることで、次の一手を考えることができます。

お母さんと一緒だと言いにくい場合もあるかもしれませんので、診察の最初だけお母さんに外で待っていただくこともあります。ただ、小・中学生くらいだと逆に緊張してしまうこともあるので、お子さんの様子を見ながら判断しています。

また、可能であれば「基礎体温表」をつけてお持ちください。毎朝測るだけのシンプルな記録ですが、排卵の有無がひと目で分かり、必要な検査の判断や、検査の負担を減らすことにもつながります。

――生理痛の裏に病気が隠れていることもあるのでしょうか

10代で子宮筋腫や内膜症があるケースは多くありません。しかし、強い生理痛がある方は将来的に「子宮内膜症」へと進行するリスクを抱えています。内膜症は放置すると悪化し、将来の不妊や動脈硬化のリスクにもつながります。生理痛の治療は、単に今の痛みを取るだけでなく、「将来の体を守ること」でもあるのです。

――経血の量や、おりものの異常についても教えてください

以下のようなサインがあれば、一度診察を受けてください。

  • 経血量:ナプキンが3時間で溢れてしまう場合は、多すぎると判断します。気づかないうちに深刻な貧血が進んでいることもあります。
  • おりもの・不正出血:茶色っぽいおりものは、出血が混じっているサインです。10代なら排卵周期がまだしっかりできていないことによる出血が大半かと思いますが、20代なら子宮筋腫や子宮内膜症などの可能性を考慮します。20歳以上で性交渉の経験がある場合は、子宮頸がんなどを確認した上で、超音波検査で子宮筋腫や子宮内膜症などの原因がないかを探ります。

不安なことがあれば、問診票に「スマホで調べてこれが心配になった」と正直に書いていただいて構いません。それによって必要な検査をスムーズに進めることができます。

毎年がん検査や健診を受けている場合は、出血を過度に心配しすぎる必要はありませんが、「一度検査を受けなさい」という身体からのサインと捉えて、受診、ご相談いただくことをおすすめします。

気になることがあればすぐに受診を。モヤモヤを抱えたまま過ごさないで

――読者へのメッセージをお願いします

「この程度で受診していいのかな」と悩む必要はまったくありません。診察の結果、「大丈夫でしたね」と安心してお帰りいただくことも大切な医療の役割です。

モヤモヤした不安を抱え続けるのは、心身によくありません。「白黒はっきりさせてスッキリしよう」という軽い気持ちでいらしてください。今は以前よりも産婦人科のハードルは下がっています。私たちは皆さんが「来てよかった」と思えるよう、丁寧に対応いたします。

娘のサッカー観戦で心身をリフレッシュ

――代田先生ご自身のリフレッシュ方法を教えてください。

今は、中学3年生の末娘のサッカー応援に行くことが唯一の楽しみです。クラブチームで頑張っているのですが、高校では別の道に進むそうなので、応援できるのもあと1年。できる限り試合を見に行きたいと思っています。

私には4人の子どもがいますが、それぞれが一生懸命に打ち込む姿を見るのが、私にとって何よりの活力であり、リフレッシュになっていますね。

(取材:2026年3月)


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