体外受精のホルモン剤、妻にリスクはある? 自己注射や採卵…将来の健康が心配で僕は決断を前に怖くなっています【看護師監修:お悩み相談室】

妊活・不妊
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不妊治療のステップアップとして体外受精を提案され、ホルモン剤を使用することで奥様の身体的負担や将来の長期的な健康リスクに強い不安を感じている30代男性からのご相談です。

研究データ(米国生殖医学会等)を基に、卵巣がんや乳がん等の長期リスクに明確な証拠はないという現状を提示。
治療中に注意すべき副作用や、パートナーの負担を減らす家事の代行といった治療中の過ごし方についても、不妊カウンセラーの資格を持つ看護師がお伝えします。

不妊治療を始めて1年半。人工授精で結果が出ず、医師から体外受精を提案されました。
子供は欲しいですが、何より妻の負担が心配です。「自己注射」や、麻酔をして行う「採卵」など、これまでの治療より遥かに過酷な内容に戸惑っています。

妻は「やるしかない」と気丈ですが、強いホルモン剤を使い続けることで、将来の体への影響や病気のリスクはないのでしょうか
子供ができるかできないかわからない賭けの状態で、妻の将来の健康も損なうのではないかと、決断を前に怖くなっています。

夫としてどう寄り添い、サポートするのが正解ですか?医学的な長期リスクについても正しく知りたいです。

(30代、男性、ハンドルネーム:そらQ、職種:土木・建設)


最初に

そらQさん、ご相談ありがとうございます。

不妊治療を始めて1年半、頑張ってこられましたね。

体外受精の提案を受け、ご自身でも治療について調べていく中で、自己注射や麻酔を使用することにとても驚かれたのですね。
戸惑いを感じられたお気持ちが伝わってきました。

人工授精に比べると、体外受精では女性側のお身体への負担が大きくなる場面もあります。

そのため、パートナーの方のお身体を第一に考え、将来の体への影響まで心配になるのは、とても自然なことだと思います。

今回は「体外受精において、強いホルモン剤を使い続けることで将来の体や病気のリスクはあるのか」というご相談ですね。

ホルモン剤の「将来的な健康リスク」について

そらQさんがご心配なさっているように、体外受精で使用するホルモン剤が「将来の体や病気に影響を与えるものかどうか」は、現在も研究が続いているテーマです。

しかし現時点では、不妊治療で使用するホルモン剤が将来的な健康を阻害するという明確な証拠はありません(※1)。

続けて、体外受精で使用するホルモン剤と、女性ホルモンが関係すると考えられている病気との関連について、現在わかっていることをお伝えしていきますね。

また、今回お伝えする内容は、主に体外受精で使用される排卵誘発剤などの不妊治療薬について報告されている研究をもとにしています。

卵巣がんについて

まずは、卵巣がんについてです。

卵巣がんについては、不妊治療との関連を調べた研究が数多く行われています。

一部の研究では、卵巣がんや境界悪性卵巣腫瘍のリスクがわずかに高くなる可能性が報告されています。

しかし、仮にリスクが高くなる場合でも、その絶対的な増加は小さいと考えられています。

また、このリスクに関しては少し慎重に考えなければならない点もあります。

子宮内膜症や女性側の不妊、未経産などは、もともと卵巣がんのリスクに関わることが知られているからです。

そのため、リスクの上昇が排卵誘発剤によるものなのか、

それともこれらの背景によるものなのかを区別することは難しいとされています(※1)。

乳がんについて

乳がんについても多くの研究が行われています。

しかし、現在のところ、不妊治療で使用するホルモン剤によって乳がんのリスクが高くなるという明確な証拠はありません(※1)。

子宮内膜がんについて

子宮内膜がんについても、不妊治療によってリスクが高くなるという明確な証拠はありません

一方で、排卵障害や肥満など、不妊の原因となる背景そのものが子宮内膜がんのリスクと関連することが知られています。

そのため子宮内膜がんについても、薬剤だけの影響を評価することは難しいと考えられています(※1)。

不安がある場合はかかりつけ医にも相談

体外受精で使用するホルモン剤については、現在も世界中で研究が続けられています。

現時点では、将来的な健康への重大な影響を示す明確な証拠はありません(※1)。

不妊治療では、治療による利益とリスクの両方を考えながら、お一人おひとりに合わせて治療を進めていきます

将来の体への影響が心配になるのは、とても自然なことです。

不安なことがある場合は、一人で抱え込まず、主治医や医療スタッフへ相談してみてくださいね

治療中に注意したい副作用と過ごし方

ここまで、体外受精を行うにあたって、長期的な健康リスクについてお話してきました。

一方で、治療中には注意しておきたい副作用もありますので、最後にご紹介します。

体外受精では、採卵の際により多くの卵子を採取できるよう、排卵誘発剤を使用して複数の卵胞を育てることがあります

複数の卵胞が育つことで卵巣が大きくなり、人によっては腹部の張りや痛みなどを感じる方もいます

また、まれではありますが、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)という副作用が起こることもあります(※2)。

体外受精の治療中は、体調によっては家事や買い物などが負担になることもあります。

無理をさせず、できることを代わったり、

「今日はゆっくり休んでね」と声をかけたりすることも、大きな支えになると思います。

また、体外受精はお二人で取り組む治療です。

採卵当日には、そらQさんにも精液を採取していただくことになりますので、

ご自身も十分な睡眠やバランスのよい食事など、体調を整えて治療に臨んでいただけるとよいですね

最後に

そらQさんが今回このようなご相談をしてくださったことからも、

パートナーの方のお身体を大切に思われているお気持ちが伝わってきました。

そのお気持ちは、きっと治療を進めていく中でも大きな支えになると思います。

お二人で支え合いながら、一歩ずつ治療を進めていけるといいですね。

<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています

ASRM(アメリカ生殖医学会)
▶Fertility drugs and cancer: a guideline:https://www.asrm.org/practice-guidance/practice-committee-documents/fertility-drugs-and-cancer-a-guideline-2024/※1

公益社団法人 日本産婦人科医会
▶生殖補助医療:https://www.jaog.or.jp/note/(3)生殖補助医療/※2

この記事の回答者

小澤彩加

看護師/不妊カウンセラー

所属:株式会社ファミワン

神奈川県の不妊治療専門クリニックに勤務。妊活や不妊治療、女性特有の身体のお悩みなど、分かりやすく伝えることを大切にしています。現在不妊治療に励んでいる人だけでなく、子供を持たない選択をした人も迷っている人も、これから向き合っていく人も応援していきたいと思っています。ぜひお気軽にご相談くださいね。


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