子育てイラストレーターOKAERIさんが語る「キャリアの葛藤と育児で見つけた自己肯定感 」【体験談インタビュー】

妊娠・出産
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OKAERI

イラストレーターであり1児の母。出産を機にInstagramで子育て漫画やイラストの投稿を開始。子どもの成長記録として始めた初投稿が1万いいねを超える。フォロワーは5,000人超。リアルな子育ての瞬間を温かいタッチで描き続けている。(2026年8月現在)

SNSで人気の子育てイラストレーター・OKAERIさん。可愛らしいイラストの裏側には、仕事に生きてきたからこその強い葛藤や、思い通りにならない現実との戦いがありました。今回は、インスタグラムでは語られなかったキャリアに対する思いと、子育てを通じてご自身が手に入れた「自己成長」についてお話を伺いました。

娘への愛情と成長記録から始まったインスタグラムでの発信

――OKAERIさんがイラストを描き始めたきっかけを教えてください

「娘の成長記録を、自分にしかできない形で残したい」という思いから描き始めました。

もともと絵を描くことが大好きで、美大への進学を希望していたほどです。親の意向もあってその夢は叶いませんでしたが、大学卒業後は仕事としてずっと絵に関わってきました。
個人事業主として仕事に打ち込んできたため、まとまった休みをとることはありませんでしたが、子どもが生まれたことで初めて長期の休みができ、急に自分の時間ができたのです。

ちょうどその頃、SNSでエッセイ漫画が話題になっているのを目にし、「自分も描いてみよう」と思い立ちました。もともとは個人の楽しみとして始めたもので、将来、娘が大きくなった時に、写真だけでなく、描いた絵も1冊の本にまとめてプレゼントしたいという思いもありました。

そのため、描き始めた当初は誰かに見せることは考えず、自分だけで大切に保管していました。ところが、友人から「インスタグラムに出した方がいいよ」と背中を押されたことをきっかけに、少しずつ発信を始めるようになりました。

OKAERIさんインスタグラム(@kawaiipanty)より引用

仕事のチャンスが見え始めた中での妊娠。向き合ったキャリアと人生設計

――イラストレーターとしてのキャリアが軌道に乗り始めた矢先の妊娠だったそうですが、当時の率直なお気持ちをお聞かせください

そうですね。妊娠が分かったのは、大きな仕事のチャンスが見え始め、これから本格的にキャリアを築いていこうと考えていた時期でした。だからこそ、これまで思い描いていた人生設計について、あらためて考える大きなきっかけになりました。

わたしは昔から、納得できる答えが見つかるまで深く考えたり、調べたりするタイプです。仕事においても、自分なりに努力を重ね、ミスなく一つひとつ着実に積み上げていくことで、信頼や評価につながっていくことに大きなやりがいを感じていました。仕事は、自分にとって自信や誇りにつながる大切な存在でもありました。

周囲にもキャリアを大切にしている友人が多く、それぞれが第一線で活躍していました。そんな姿を身近に見ていたからこそ、妊娠をきっかけに、これから自分はどのように仕事と向き合い、キャリアを築いていくのかを強く意識するようになりました。これまでと同じようには進めないかもしれないという戸惑いもあり、仕事とこれからの生活とのバランスについて、さまざまなことを考えていた時期だったと思います。

思い通りにならない経験がもたらした「自分育て」

―― 妊娠や出産の過程も、OKAERIさんにとっては想定外なことが続いたそうですね

本当に予想外の出来事の連続でした。妊娠期間中、つわりが安定していたのはほんの1ヶ月ほどしかなく、ほぼ9ヶ月間ずっと重いつわりが続きました。また、個人事業主であるため産休や育休などの制度も適用がなかったため、産後1ヶ月で仕事を再開し、育児と授乳を並行しながらなんとか仕事をこなしていました。

出産も、決して順調とはいえない経験でした。破水から始まり、陣痛促進剤や無痛分娩を経て、最終的には緊急帝王切開となり、入院から出産までは丸3日半ほどかかりました。子どもを初めて抱くことができたのは、出産から2日後のことでした。

産後も、髄液漏れの影響で1〜2ヶ月ほど視界の歪みや頭痛、吐き気が続き、体調がなかなか戻らない時期がありました。妊娠から出産までを振り返ると、自分ではコントロールできないことの連続で、思い通りにならないことも多い経験だったと感じています。

-そうした「思い通りにならない」妊娠・出産を経て始まった子育ては、実際いかがでしたか

振り返ってみると、自分の中にある受け入れにくかった部分とも少しずつ向き合うようになり、わたしにとってはまさに「自分育て」の期間だったように思います。

仕事であれば、嫌なことがあってもある程度はプライベートと切り離して考えることができます。一方で、家族との生活は日々続いていくものなので、そう簡単に気持ちを切り替えられないこともありました。

例えば、一生懸命作った離乳食を子どもが床にこぼしてしまい、思わず声を荒げそうになったこともあります。今でこそ笑って話せますが、当時は心にも体にも余裕がなく、目の前のことで精一杯でした。

そんな中で、自分がイライラしていることに気づき、周囲に助けを求めることの難しさも知りました。また、いくら原因を考えても、必ずしも答えが見つかるわけではないということも学びました。
「子どもがイライラして叫ぶと、わたしもイライラしてしまう。では、どうしたらイライラしなくなるのだろう」と考えて、最初は育児本などをたくさん読み、解決方法を探していました。でも次第に、「イライラする」という感情そのものをなくそうとしなくてもいいのかもしれない、と考えるようになりました。

そこで、感情を無理に抑え込むのではなく、一度その場から距離を取ってみたり、夫に「最近少ししんどいから、週に1回でも早く帰ってきてほしい」と素直に伝えたりするようになりました。自分ひとりで何とかしようとするのではなく、周りに頼ることも少しずつ覚えていきました。

自分では思い通りにできないことにも一つひとつ向き合いながら、自分の感情とうまく付き合う方法を知っていったことが、結果としてわたし自身の大きな変化につながったのだと思います。

子育てを通して築き直した、パートナーとの「真ん中を見つける」関係性

――出産を通じて、夫婦の関係性に変化はありましたか

「結婚がスタートライン」とよく聞きますが、わたしは「出産もまた、一つのスタートライン」なのではないかと感じています。

同棲や結婚を始めた友人から、「なぜ夫は洗濯物をやってくれないんだろう」といった話を聞くと、わたし自身にも同じように悩んだ時期があったので、その気持ちはよく分かります。
そして子どもが生まれると、夫婦で向き合うことはさらに増えていきました。それまで気づかなかった相手の一面だけでなく、自分自身の余裕のなさや苦手な部分が見えてくることもあります。
1時間かけて寝かしつけても子どもがなかなか寝てくれない横で、夫が3秒くらいで寝ていると、「どうしてそんなに早く寝られるの?」と驚くこともありました(笑)。

わたし自身、出産や子育てを通して、夫とは何度も話し合いを重ねてきました。大人同士であれば、ある程度お互いの領域を尊重しながら過ごすこともできますが、子育てとなると、そうはいかない場面もあります。お互いにできることや苦手なことを知りながら、一緒にやり方を探していく必要があるのだと思います。

子どもが生まれて、「わたし自身も、もっと楽をすることを覚えなければ」と思うようになったことも、大きな変化でした。そこから夫婦で、それぞれがあまり得意ではないことも含めて、少しずつ分担するようになりました。

例えば、それまでわたしが10、夫が0だったことを、7対3にしていく。そのためには、夫に変わってもらうだけではなく、わたし自身も任せたり、お願いしたりすることを覚える必要がありました。これは、子育てをしていなければ気づかなかったことの一つだと思います。

今では、「洗ってくれてありがとう」と素直に感謝を伝えられるようになりました。お互いにとって心地よいバランスを見つけていくのは簡単なことではありませんが、その過程を通して、相手のことも、自分自身のことも以前より理解できるようになったと感じています。
夫婦にとっても、一緒に成長していく時間になりました。

そうした経験を重ねる中で、自分自身への見方も大きく変わりました。以前よりも自分を肯定できるようになり、これまで知らなかった自分の一面に出会えたことは、わたしにとって人生の大きな財産です。
自分自身も少しずつ「育ってきた」からこそ、今では何か予想外のことが起きても、「きっとなんとかなる」と、以前より落ち着いて受け止められるようになりました。

OKAERIさんインスタグラム(@kawaiipanty)より引用

出産やキャリアに迷うときに。子育ては、自分自身も育っていく機会と捉えて

――出産やキャリアについて悩み、踏みとどまっている方へ、メッセージをお願いします

わたしのように物事を論理的に考えるタイプの人は、どうしてもリスクやマイナスな選択肢に目が向き、不安を感じることも多いと思います。

わたし自身も、妊娠のタイミングで大きな仕事のチャンスを掴めなかったことを、当時はとても残念に感じていました。
でも、子育てを通じてさまざまな経験を重ねた今は、

「まだチャンスはある」
「今いただけるお仕事に感謝しよう」と、

キャリアについても以前より前向きに考えられるようになりました。

子育てには、絶対的な「正解」があるわけではありません。思い通りにならないことにぶつかることもありますが、そのたびに自分なりに試行錯誤し、乗り越えられた時の達成感はとても大きなものです。自分の感情と向き合う機会も増え、わたしにとっては、人として大きく成長できる経験になったと感じています。

もちろん、不安になることはたくさんあると思います。それでも、もし少しでも「産みたい」という気持ちがあるのなら、出産や子育てを「自分自身も一緒に育っていく機会」として捉えてみるのも、一つの考え方ではないかと思います。

―― 最後に、OKAERIさんのリフレッシュ方法を教えてください

人と会って話すよりも、自分の中で自己完結できることの方がリフレッシュに繋がります。
母に少し子どもを見てもらっている間に、ゆっくりお風呂に入ったり、本を読んだりする一人の時間がとても好きです。また、子どもを園に送った後、1時間ほど近所をブラブラとお散歩するのも良い気分転換になっています。

取材を終えて

SNSで人気を集める可愛らしいイラストの背景に、キャリアへの葛藤や、思い通りにはいかない育児の日々があったことを、飾らずに話してくださったOKAERIさん。さまざまな経験を経ながら、自分自身と向き合ってきた等身大の姿がとても印象的でした。

この記事を読んでいる方の中にも、
「仕事と育児を両立しながら、この先のキャリアはどうなるのだろう」
「きちんとやりたいのに、なかなか思い通りにいかない」
と、不安や戸惑いを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

論理的に物事を考え、仕事にも真摯に向き合ってきたOKAERIさんも、同じような思いを抱えていたといいます。努力を積み重ねることで結果につなげてきた仕事とは異なり、妊娠や出産、育児には、自分の力だけでは思い通りにできないこともたくさんあります。

第一線で活躍する友人の姿を見て焦りを感じたり、
なかなか寝てくれない我が子の横で、夫があっという間に寝てしまう姿に驚いたり。
そんな日々の中で、仕事や家族、自分自身との向き合い方を少しずつ模索してきました。

そしてたどり着いたのが、「すべてを完璧にこなそうとしなくてもいい」という考え方でした。自分の中にある受け入れにくかった部分とも向き合い、夫婦で何度も話し合いながら、お互いにとって心地よい「真ん中」を探していく。そうした積み重ねが、OKAERIさん自身の「自分育て」にもつながっていったのだと思います。

キャリアへの不安や、夫婦間のすれ違いに苦しさを感じたとき、すべてをひとりで抱え込もうとしなくてもいいのかもしれません。少し肩の力を抜いて、「育児は、子どもだけでなく自分自身も一緒に育っていく時間なのかもしれない」と、今の自分を受け止めてみる。OKAERIさんのお話は、そんな見方もあることを教えてくれました。

「知ってハレばれ」には、キャリアと育児の両立へのモヤモヤや、パートナーとの関係など、日々の生活の中で生まれるさまざまな悩みに寄り添う「お悩み相談」が掲載されています。それぞれの悩みに対して、専門家が丁寧に回答しています。
ひとりで考えていると答えが見つからないときも、専門家の客観的で温かな言葉に触れることで、少し違った見方ができるかもしれません。
明日の自分や家族と向き合う気持ちが、少しでも軽やかになるきっかけになれば幸いです。

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#キャリアの悩み
#夫婦のコミュニケーション

(取材:2026年8月)


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