体外受精3回連続の陰性で落ち込む妻。どう声をかければいい?「2人でも幸せ」と伝えたのですが、余計に傷つけてしまいました【公認心理師監修:お悩み相談室】

妊活・不妊
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今回は、結婚4年目、原因不明不妊で3回目の体外受精が陰性となり深く落ち込んでいる奥様への接し方に悩む20代男性からのご相談です。
妻を思いやって伝えた「2人でも幸せだよ」という言葉が、逆に「頑張りが無駄に思えてしまう」と傷つけてしまい、夫としてどう言葉をかければいいのか戸惑っていらっしゃいます。

ヨーロッパ生殖医学会でも重視される心理社会的ケアの視点を提示。「大丈夫」と励ます前に「一緒にがっかりし、悲しみを分かち合う」ための具体的な対話フレーズや、話したくなる環境を作る選択肢の渡し方について、公認心理師がお答えします。

結婚して4年目で、不妊治療を始めて2年になります。
私も妻も一通り検査をしましたが、これといった原因は不明で、先日3回目の体外受精が、残念な結果となりました。
年齢的にも可能性は高いと言われて始めた体外受精にもかかわらず、連続3回陰性で、妻はとても落ち込んでいます

俺は子どもができなくても大丈夫だよ。2人でも幸せだよ」と残念な結果が出る度に伝えていますが、先日ボソッと「嬉しいけど、そういうことじゃない。それを言われると私の頑張りが全部無駄に思えてしまう」と言われてしまいました

何と言葉をかけるのが良かったのでしょうか。夫の私にできることが知りたいです。

(20代、男性、ハンドルネーム:むらさき、職種:金融・不動産)


最初に

むらさきさん、3回目の体外受精が残念な結果となり、パートナーさんが深く落ち込んでおられるのですね。
その姿をそばで見て、「何とか支えたい」「でも何を言っても違う気がする」と戸惑っておられるのだと思います
「子どもができなくても大丈夫。2人でも幸せだよ」という言葉は、むらさきさんなりの愛情であり、「あなたを責めていないよ」というメッセージだったのでしょう

ただ、体外受精の不成功は、単に「今回はだめだった」という出来事ではありません。
採卵、通院、注射、期待、不安、判定日までの緊張。
その全部を積み上げたのに、目の前でがらがらと崩されるような体験です。
しかも原因不明で、年齢的にも可能性が高いと言われていたなら、「なぜ?」という問いが生まれるのに、答えが出ません。
当事者の皆さんはよく、「真っ暗な、出口のないトンネルの中を歩いているような気持ち」と表現されます

パートナーさんは今、自分の身体への信頼や、ここまでの頑張りまで揺らいでいるのかもしれません

妻を思って伝えた「2人でも幸せ」がすれ違う理由

むらさきさんの言葉が悪かった、というより、タイミングと言葉の焦点が少しずれたのかもしれません

「2人でも幸せ」は、関係を守る言葉としては大切です。
でも、判定直後には「このつらさを早く片づけようとしている」「子どもを望んできた私の努力がなかったことになる」と響いてしまうことがあります

女性が求めている「寄り添い方」とは 

この時期に女性が求める寄り添い方は、

励ましや「今回はダメだったのだから悲しんでも仕方ない」という感情の切り離しよりも、
まず一緒にがっかりすること、一緒に悲しむこと、である場合があります

「大丈夫」より先に、「つらいよね」「悔しいよね」「ここまで本当によく頑張ってくれたね」と、結果の痛みを一緒に分かち合う感じです。

ポジティブ変換は便利ですが、悲しみの最中に出されると、心の中で「今はそういうことじゃない」と感じ、受け入れがたくなったりします。

「一緒に悲しむ」という伝え方

たとえば、

子どもができてもできなくても、あなたを大切に思う気持ちは変わらない。
でも今は、それとは別に、今回の結果が本当に悔しい。一緒に悲しませてほしい

と伝えてみるのも、分かち合い方のひとつです。

むらさきさん自身の落胆、残念さ、悲しみを、正直に伝えても良いのではないでしょうか

不妊治療中の「メンタルケア」の大切さ 

不妊治療、とくに体外受精の反復不成功は、心に強いストレスや喪失感をもたらすことが知られています(※1)。
また、ヨーロッパ生殖医学会のガイドラインでは、治療の各段階で感情面・夫婦関係・仕事や生活への影響を含めた心理社会的ケアが重要だとされています(※2)。

パートナーが話したい時に話せる環境を作る

むらさきさんにできることは、正解の言葉を一発で当てることではありません
まずは「次どうする?」を急がず、パートナーさんが話したいときに話せる環境を作ることです。
「今日は治療の話をしたい?それとも何も考えない日にする?」と選択肢を渡すのも良いでしょう。
パートナーさんが気持ちを打ち明けてくれたとき、遮らず、じっくりと話を聴くだけでも良いのです。

最後に

パートナーさんは、むらさきさんに解決してほしいのではなく、「この痛みをひとりにしないでほしい」のかもしれません

判定日の帰り道に黙って隣を歩くこと、温かい飲み物を買うこと、ただ傍にいること。
その小さな積み重ねが、夫婦で治療を続ける力になります。

<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています

NCBI(米国国立生物工学情報センター)
▶The experience of infertility: a review of recent literature:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20003036/※1
▶ESHRE guideline: routine psychosocial care in infertility and medically assisted reproduction-a guide for fertility staff:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26345684/※2

この記事の回答者

戸田さやか

公認心理師/臨床心理士/生殖心理カウンセラー/がん・生殖医療専門心理士/ブリーフセラピストシニア

所属:株式会社ファミワン

「妊活や性の悩み、子育てや働き方のことまで、「誰に相談していいかわからない」テーマも歓迎しています。どんな内容でも大丈夫。安心してご相談ください。臨床心理学の確かな知識と技術を活かし、原因探しや悪者探しではなく、あなたにとってのゴールを発見するお手伝いをさせてください。」


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